NHKラジオ講座「漢詩をよむ」第13回です。


今回から、4回にわたって菅原道真を扱います。道真の初回テーマは<文人官僚として>。


若い時代――修学時代から少壮の文人官僚時代の詩です。いずれも『菅家文草』から。

「侍廊下吟詠送日」「博士難」と「絶句十首、賀諸進士及第」のうち其一と六でした。


これらの漢詩から伺えることは、道真の強烈な家門意識です。道真の祖父・清公は勅撰三集すべての撰者となるなど活躍し、菅原家の基礎を築きました。父・是善、そして自分へと受け継がれる学問の家としての血筋、その誇りと責任感です。


それから、性格的に、潔癖症というか神経質というか、細かいことも水に流せないタイプではないか……と感じます。確かに将来左遷の憂き目にあってからも、グチグチと恨みに思い、自らの命すら縮めているような節があります。若いころの漢詩にも、すでにあらわれていたのだと思うと、興味深いものがありました。


学生を教える立場になると、彼らからの不平不満、悪口などが耳に届くのです。それらの声に対して、道真は断固思います。「博士難」の詩に詠まれています。

 教授我無失 選挙我有平<私は教えるについて落ち度はないし、選考についても公平であった>


一方で、学生一人ひとりに対して詠んだ「絶句十首、賀諸進士及第」などをみますと、道真の愛情深さや、日ごろの観察眼なども垣間見え、教育者としてすぐれた面も感じさせます。