おそらく初読は高校生時代ではないかと思われる、古代史にはまるひとつのきっかけとなった本です。


1 永井路子『美貌の女帝』
http://mediamarker.net/u/n-kujoh/?asin=4167200171


主人公「美貌の女帝」とは、奈良朝の元正天皇(氷高内親王)を指す。
くじょう みやび日録-sogajokei

この小説の基本構図は以下の通り。


「蘇我氏女系」とその周辺


 <女帝たち>持統天皇
       →元明天皇
       →元正天皇
 
 吉備内親王長屋王


     


「藤原氏」


 不比等
 →その息子四兄弟
 →孫の仲麻呂



蘇我氏は滅亡したといわれるが、系図からもわかるように、女系を辿ってみると女帝や天皇の母として、朝廷の中枢部に血脈を伝えている。そのことに着目して生まれた小説である。


そして、蘇我氏にとっての真の敵は、本宗家を滅ぼされた中大兄皇子(天智天皇)時代から藤原(中臣)鎌足であった。女帝たちの前に立ちはだかるのは、鎌足の遺児・藤原不比等である。


従来、持統天皇以下の女帝と不比等ら藤原氏一族が、文武天皇の即位から聖武天皇の即位にいたるまで代々協力体制にあったといわれてきたことに、異論を唱える。首(=聖武天皇。文武天皇と不比等の娘藤原宮子の間の皇子である)の即位は女帝たちの念願ではなく、敗北であったのだ……。


また、次の杉本さんの小説も、『美貌の女帝』と同じく蘇我女系vs藤原氏の図式で描かれている。

2 杉本苑子『穢土荘厳』
http://mediamarker.net/u/n-kujoh/?asin=4167224100