2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴って発生した福島第一原発事故を受けて、当時総理大臣であった私はそれまでの日本の原発拡大政策を転換させ、原発ゼロを目指すべきだと考えました。まず原発比率を50%まで引き上げるとしていたエネルギー基本計画を白紙に戻し、海外への原発輸出についてもいったん立ち止まることにしました。

 

しかし安倍総理が政権に戻ると、日本で起きた福島原発事故原因調査がまだ確定しないうちから総理側近の経産官僚が中心となって原発輸出政策を積極的に推進し始めました。東芝が米国の原発メーカー、ウエスチングハウスを買収し、また日立が英国の電力会社ホライズンを買収した背景に安倍政権のこうした政策があります。今回明らかになった海外での原発建設がすべて失敗に終わったことについては、安倍政権に大きな失敗の責任があります。

 

これに対してドイツは3・11の福島原発事故から間を置かず原発政策の見直しを始めました。メルケル保守党政権はもともと原発維持政策をとっていましたが、原発に関する倫理委員会の検討を踏まえ、2022年までにドイツの原発をゼロにするという方針を数か月後には決定しました。そして再生可能エネルギーへの転換をいっそう急ぎ始めました。ドイツが原発からの撤退を決めてドイツ資本の会社である英国の電力会社ホライズンを日立が買収したのは福島原発事故の後の2012年です。安倍政権がイギリスでの原発建設の支援を約束したからです。本来原発事故を起こした日本こそが原発政策の見直しを始めなければならない時期に、海外での原発建設にかじを切ったのは安倍政権の大きな間違いです。

 

再生可能エネルギーに対する安倍政権の妨害政策も大問題です。私が総理としての最後の仕事として導入した固定価格買い取り制度により福島原発事故後7年間で太陽光発電を中心に再エネ発電が全電力の6%分増え、水力と合わせて再エネ比率が16%程度に上昇しています。この勢いで行けば2030年までには再エネ比率30%も実現可能です。しかし安倍政権は送電網の利用を制限する電力会社に味方し、太陽光や風力発電の拡大を妨害しています。

 

安倍政権は原子力ムラの支援を受けて成立したために、原発から再エネへの転換という世界の流れに大きく後れてしまいました。エネルギー政策の転換のためにも安倍政権を早期に退陣させる必要があります。