日立は英国での原発建設計画を断念したようです。私は3年ほど前に、原発建設反対の運動グループに招かれて現地英国のアングルシー島に出かけました。日立は2012年、イギリスの「ホライズン」という電力会社を買収し、ホライズンの古い原発のリプレースとして新原発を建設する予定でした。

 

日立がホライズンを買収したのは福島原発事故が起きた後の2012年です。実はホライズンはそれまでドイツの企業が所有していました。福島原発事故後、ドイツのメルケル政権がドイツ国内について2022年原発ゼロを決定したことを受けて、ドイツ企業がホライズンを売りに出したのを、日立が買収したのです。日立は日本国内での原発建設がむつかしくなったので、原発を所有していたホライズンを買収し、リプレースのための新しい原発建設を進めようとしたのです。私が現地に行った時にはすでに新原発建設用の広大な敷地を買い増していました。

 

福島第一原発は1号機はGMが単独で建設しましたが、2号機以降は東芝と日立が建設に参加しました。その福島第一原発で事故が起き、その十分な事故原因の検証も終わっていない2012年に日立が英国での原発建設計画を進めたということはどう考えればいいのでしょう。福島原発事故のために日本国内での原発建設がむつかしくなったから、海外の原発建設に乗り出すという発想は理解できません。

 

結局今回の英国での日立の原発建設が断念に追い込まれたのは採算に合わないからです。福島原発事故以降、安全性を高めるため新原発の建設費が大幅に高くなりました。他方太陽光や風力発電の建設コストは大幅に下がってきました。建設に10年、稼動期間を40年と考えて、50年後の原発は再エネに比べて割高であることははっきりしてきたのが断念の最大の理由です。

 

国内の原発について原子力規制委員会はいくつかの原発については「新規制基準に合格」という判断をし、既に再稼働された原発もあります。しかし東海第二原発などは再稼働する条件である安全性を高めるための投資が3000億円程度必要とされ、それをだれが負担するのか決まっていません。

 

安倍総理はいまだに原子力ムラにべったりです。しかし、経済的に成り立たないことがはっきりし、核廃棄物を生み出し続けている日本の原発について、原発ゼロを決断すべきです。来年の参院選は原発ゼロに賛成か反対かが最大の争点になります。