東電福島第一原発事故をめぐる業務上過失致死罪の公判で、東電旧経営陣3人の被告人質問が山場を迎えています。昨日、今日と被告人質問を受けたのは原子力専門家である武藤栄副社長(事故当時)です。武藤副社長は原子力の専門家で、事故当時原子力技術部門の最高責任者でした。明日以降勝俣元会長、武黒元副社長が検事役の弁護士から質問を受けることになっています。

 

東電元社員等複数の関係者の供述によると、2008年2月16日の「御前会議」で津波が7.7メートル以上となる可能性が報告され、同年6月10日には武藤元副社長に津波が最大15.7メートルとなる可能性が伝えられたという点が質問のポイントになっています。しかし武藤元副社長は報道によればそうした元社員等の証言を否定したそうです。

 

3人の被告とは事故発生後私も何度か会い、話をしました。原発事故発生直後に内閣が設置した原子力災害対策本部に東電から説明要員として送られてきたのが武黒元副社長、そして事故発生の翌朝ベントの遅れを武黒氏が「理由は分からない」というので、直接現地の責任者に会うために私が福島第一原発を訪れた時に、吉田所長に加えて、地元説明のために現地に来ていて会ったのが武藤元副社長でした。なお勝俣会長と清水社長は出張中で、翌日の午後まで東京には不在でした。

 

余談ですが安倍総理が流した、「事故発生の翌日に海水注入を止めたのは菅総理」というフェイク(虚偽)情報について、武藤副社長は注入を止めろと指示したのは当時の本店の指示であり、実際には吉田所長の判断で注入は継続していたことを認めています。当時安倍総理のフェイク情報をそのまま報道した産経新聞も、今日の紙面(10月17日朝刊26面)では「中断していなかったことが判明」と誤りを認めています。

 

東電裁判はこれからの原子力政策にも大きな影響があります。今回の裁判では避難の過程で命を落とされた方々についても、東電の業務上過失致死罪に当たるかどうかが争われているからです。