愛媛県にある伊方原発の運転差し止めの仮処分申請について、広島高裁は運転差し止めを決めました。伊方原発は中央構造線断層帯の上にあり、しかも佐田岬の付け根に位置し、事故が発生すればその先の住民は避難することが極めて困難です。私は全国各地の原発反対運動にはできるだけ参加するようにしており、伊方原発の一昨年の再稼働の時も原発前での反対集会にも参加しました。それだけに今回の広島高裁の決定は本当にうれしいです。

 

今回の決定にはこれまでにない大きな意味がいくつかあります。一つは広島地裁の決定を覆して広島高裁が差し止めを決めたことです。地裁の差し止め決定を高裁が覆した例は多くありますが、その逆は初めてです。加えて、伊方原発が立地する愛媛県の裁判所ではなく、原発から250キロ圏にある広島の住民の訴えに対する広島高裁の決定だという点です。伊方原発についてはこの他にも、原発から250キロ圏に含まれる地域の大分地裁や山口地裁でも審理が続いています。仮処分はどの裁判所の決定であっても効果がすぐに発生します。極めて効果的な裁判戦術の成果です。

 

原発ゼロ実現に向かって司法の場、つまり裁判の場面では大きな成果が出てきています。いよいよ政治の場で原発ゼロを実現する時です。それには国政選挙で原発ゼロを大きな争点にし、大半の国民が原発ゼロを求めていることをはっきり選挙で示すことです。ドイツや台湾、韓国で政府が原発ゼロにかじを切ったのも選挙の結果を受けてです。

 

1年半後には参院選があります。この選挙で原発ゼロ実現を最大の争点とすることで、決着をつけようではありませんか。現在自民党を除く主要政党は強弱はありますが一応「原発ゼロ」を公約に掲げています。しかしこれまで原子力ムラに応援されて国会議員に当選している議員は自民党にだけでなく民進党にも他の野党にもいます。次の参院選では逆に、原発ゼロ運動を進めているグループから候補者を推薦し、当選させようではありませんか。

 

これまでの原発ゼロの市民運動は集会やデモなどキャンペーン活動としては大きな成果を上げています。しかし、固い組織ではないため一票一票固める選挙ではあまり成果をあげられていません。そこでまず、全国の脱原発訴訟の関係者、例えば原発訴訟にかかわっている弁護士の方を一人統一候補として、立憲民主党から比例で立候補願うというのはどうでしょうか。比例区では100万票で一人当選しますが、政党名投票が7割程度ありますので個人名投票が20万票あればほぼ当選確実です。人口10万人当たり200票です。全国の町々、村々で人口10万人当たり200人に統一候補の個人名を書いてもらう運動を繰り広げることです。業界代表や労働組合代表はこうした運動によって当選できているのです。原発ゼロ派も負けてはいられません。年賀状を交換していると全国の友達、知人に投票をお願いするといった地道な活動が必要です。もちろん選挙区選挙でも原発ゼロ派の候補への投票を呼び掛けることが重要です。

 

大きな組織でも比例区の選挙準備は2年程度かけて進めています。原発ゼロ候補の場合、キャンペーン型の市民運動とは運動パターンが異なるのでむつかしい面もあります。しかし1年半の準備期間があれば十分可能性はあります。アメリカの大統領選挙では多くのボランティアが選挙活動を繰り広げます。原発ゼロ候補でもそうしたことが実現できれば、草の根からの政治の実現にとっても大きな前進だと思います。1人で200票集められるか、それぞれ自分で思考実験をしてみてください。1000人の人が200票づつ集めることができれば当選させられるからです。