私にとって今回の総選挙は16回目の国政選挙でした。最初の3回の国政選挙では落選し、その後12回当選を重ね、今回は私自身「最終戦」と位置付けて戦いました。土屋氏との戦いは2005年、2009年、2012年、2014年に続いて5回目の「土菅戦争」でした。最初の2回は私が小選挙区で勝利し、総理を退任した後の2回は小選挙区で土屋氏に敗れ、比例で議席を維持しました。そして今回の5回目になる「土菅戦争」で、私が96713票、土屋氏が95667票、わずか1046票、率にして0.45%の僅差で私が小選挙区で勝利し、土屋氏は73歳以上は重複立候補できないという自民党のルールのために、惜敗率は99%でありながら議席を失う結果となりました。

 

私と土屋氏の共通点は二人とも世襲候補ではなく、私は市民運動を経験し、土屋氏は市議、市長を経験し、いわばたたき上げの候補であるという点です。ライバルではありますが、どこかで相手を認め合っていたように思います。

 

さてこれからです。立憲民主党の誕生は私の夢に大きな可能性を与えてくれました。それは小選挙区の候補者を政党の地域組織が決める、市民参加型の政党を生み出すことです。

 

何年か前、英国のブレア首相が誕生するまでのプロセスを書いた本を読みました。ブレア氏は最初の選挙では労働党の弱い地域から立候補し、善戦しながら落選しました。次の総選挙の時に、別の選挙区で労働党の長老議員が引退することを聞きつけたブレア氏はその選挙区に出かけ、労働党に地域組織のメンバーに自分を候補者にしてくれるように説得しました。見ず知らずの若いブレア氏の熱のこもった話を聞いた労働党の地域組織のメンバーが相談し、ブレア氏に将来性を感じてその選挙区からの立候補を認め、当選させたという話です。そしてブレア氏は若くして労働党内で頭角を現し、長く続いていた保守党政権を倒し、43才の時に首相になりました。

 

議会制民主主義では議員の質が極めて重要です。そして議員になる候補者をだれが決めるかが重要です。自民党は若くして国会議員になる人はほとんど世襲政治家です。現在総理候補に名前が挙がっている自民党政治家は全員世襲政治家です。つまり、民主主義と言いながら候補者については半ば封建制が続いているのです。

 

最近の新党では公募などで候補者を決める例も多くなっています。これは大きな進歩ですが、決めるのは党の代表など一部の人に任されています。政党の地域組織が候補者を面接して決める例はあまり聞きません。私は政党がしっかりした地域組織を持ち、立候補希望者を集めて面接などで立候補者を決め、そのうえで当選のために全力を挙げるのが一つの理想だと思います。

 

例えば私の東京18区で、次の候補者を立憲民主党の地域組織で面接などを通して決めることが私の夢です。候補者選定から関与できることになれば、立憲民主党に党員として参加してみようという人も多くなるはずです。そして自分たちが参加して決めた候補者の当選に全力を挙げることになるでしょう。こうした市民参加型の政党、それが私の夢です。