今の日本は三つの危機を抱えている。一つは北朝鮮をめぐる危機。二つ目は格差拡大を止められない経済・社会政策上の危機。そして三つめは福島原発事故を経験しながら今なお原発の運転を継続しようとしている危機だ。

 
 特に北朝鮮のミサイル発射に対して警戒警報を出して住民に避難指示を出しながら、飛行経路に当たる可能性のある原発の運転を継続していることは全く矛盾している。運転中の原子炉にミサイルが着弾すれば、想像を絶する事態になることは専門家でなくても分かるはずだ。
 
 経済政策の柱となるエネルギー政策も、自民党は原発再稼働推進と海外での原発建設支援という考えられない政策をいまだの強行しようとしている。原発を再稼働すれば安全保障上の危険性だけでなく、子や孫の世代に残す核廃棄物を増大させる。海外での原発建設は東芝の大失敗を見ても明らかなように、コスト高で採算が合わない。
 
 民進党の前原執行部が厳しい船出となったことは残念だ。前原新代表は井手英策氏の「ALL for ALL」の経済社会政策を重視しようとしており、この点は私の「最小不幸社会」の考え方とも共通しており、期待している。それに加えてメリハリのついた原発ゼロ政策を展開できるかを見守っている。
 
 原発ゼロ政策は従来の保守対革新といった思想的な区分には当てはまらない政策だ。一般的には保守的とされる宗教団体でも原発ゼロを強く主張しているところは多い。現在の生長の家もその一つだ。逆に一般的には革新的とされる労働組合でも原子力ムラにかかわるところは原発ゼロ政策に実質反対だ。
 
 来年末までに必ず実施される総選挙では原発ゼロを争点とすべきだ。ドイツだけでなく、台湾も韓国も選挙で選ばれた新大統領が原発ゼロにかじを切った。民進党が勝っても原発ゼロが実現できないのであれば、それを望む国民は民進党には投票しない。原発ゼロを望む国民が投票したいと思う政党に民進党がなれるかどうか。曖昧な姿勢ではだめだ。時間は迫っている。