東京都の水力発電はどこに売られているか知っていますか。長年東電に売っていたが、2013年からは競争入札で新電力の一つ「エフ・パワー」に全量売っている。

 

ドイツでチェルノブイリ事故をきっかけに生まれたシェーナウ電力は再エネ電力だけを供給する電力会社として発展している。日本でも同様な、再エネだけの電力会社を実現したいと私は努力しているが、東京都の例から可能性が見えてきた。

 

再エネだけの電力会社を実現するうえで最大の障害はまだ日本では太陽光、風力などの再エネ電力の供給量が少ないこと。現状で再エネ電力で最大なのは水力発電。これを活用できれば再エネ100%の電力供給会社を生み出すことは可能だ。シェーナウ電力もノールウエイからの水力電力を買っている。

 

水力発電所の多くは東電など九電力自身が所有しているが、神奈川県や群馬県など多くの自治体は独自の水力発電所を所有している。従来は九電力以外に売り先はなかったが、電力の自由化で新電力に売ることが可能となった。

 

私が知る限りその1号が東京都だ。2013年に東京都が従来の東電との売買契約を解約し、公募による競争入札で、新電力であるエフ・パワーが落札し、現在東京都は全量をエフ・パワーに売却している。

 

この間東京都と東電の間で契約の解約をめぐって協議が続いたが、最終的には東電が東京地裁に調停を申し立て、東京都が東電に解決金13億8300万円を支払うことで決着した。この額は売却価格が東電の約8円/kWからエフ・パワーの14.5円/kWになったことで、数年分の利益増加分で支払い可能な額。裁判所が両者から話を聞いて提示したもの。

 

経産省も昨年3月に出した「卸売電力の活性化に向けた地方自治体の売電契約の解消協議に関するガイドライン」で、競争入札を推奨している。

 

全国の自治体も東京都と東電のこの経緯に注目しており、今後は競争入札が拡がるはずだ。自治体の水力発電を活用した再エネ100%の電力供給の展望が見えてきた。