日本において貧困層が拡大している。大学生の半分近くが卒業時に奨学金の返済という借金を背負っている。多くの年金受給者も生活不安を抱えている。労働者の40%にも達している非正規労働者は低賃金で将来に大きな不安を抱えている。

 貧困層が拡大してきた原因はどこにあるのか。多くの政治家や学者は経済成長が止まったことが原因だという。しかし本当だろうか。逆ではないのか。つまり貧困層が拡大するような政策がとられたことによって経済成長が止まったのではないか。

  今日のアベノミクスという「異次元の景気対策」がとられているが、景気回復に最も重要な個人消費は伸びるどころか減少している。つまりお金があれば個人消費を拡大する貧困層にはお金は回っておらず、株価の上昇などで資産を多く持っている富裕層にお金が回り、富裕層は今以上消費するものはないので個人消費は伸びず、更なる資産形成にお金を回すという悪循環が今の日本に起きているのだ。

 最近の政治運動の特徴は富裕層と貧困層対立ではなく、中流層や貧困層内部での対立をあおることで人気を得るところにある。典型的なのがおおさか維新の元代表橋下氏であり、アメリカではトランプ氏だ。橋下氏は自治体職員の待遇が民間企業に比べて良いことや、生活保護水準が一部の低所得者より良い事などを取り上げ、その間の対立をあおってきた。

  このため、富裕層の税負担を高くして、貧困層の負担を低くする政策は進んでいない。給付型奨学金の充実や保育士・介護士の待遇改善など、貧困層の拡大を防ぐ政策に力を入れる必要あある。