安倍総理は「アベノミクスは失敗していない」と強弁しているが失敗は明らか。なぜ失敗したかを検証してみたい。

 一言でいえば国民の消費行動が根本的に変わっていることを認識せず、誤った政策をとったからだ。1960年代、テレビや洗濯機といった三種の神器が飛ぶように売れ、高度成長時代には車やクーラーなどが売れた。お金があれば買いたい「物」はたくさんあった時代だ。しかし今日の時代はどうだろうか。富裕層は欲しい物はすでに手に入れており、お金を持っている安心感のほうが幸せを感じる時代だ。だから、富裕層に手厚い経済政策を打っても資産拡大に振り向けるだけで、個人消費は全く増えなかった。これがアベノミクス失敗の最大の原因だ。

 それならどういう経済政策が望ましいのか。所得の低い層の所得が増える政策だ。所得の低い層では育児や介護、住宅などお金があれば買いたい「サービス」や「物」はたくさんある。社会保障と税の一体改革を民主党政権時代に進めたのはこうした経済理論に基づくものである。

 増税はだれもが喜ばない。しかし、景気にとって増税はマイナスで、減税がプラスという短絡的な考えは間違っている。例えば減税をするとそのお金は納税者に戻り、個人消費に振り向けられるがその代わり税収が減るので保育や介護で働く人の給与の財源が減り、その分野の消費が減少する。増税の場合、納税者の可処分所得は減るが、その税収で保育士や介護の人件費を引き上げて個人消費を増やすことにつながる。

 このように、減税も増税もお金の使い方が変わるだけでお金そのものがなくなるわけでも増えるわけでもない。どういう使い方が人々にとってより大きな幸せを提供できるかという政策選択の問題だ。

 アベノミクスの第二の失敗は経済格差の拡大だ。安倍内閣の顔触れを見ると、多くは経済的に恵まれた家庭に生まれ育った人で、奨学金の返済に苦労したような人はほとんど見当たらない。経済学者のピケテイ氏はだれもが十分な教育が受けられない社会は経済成長にマイナスだ、と言っている。新しい技術などを使う能力が経済成長に必要だからだ。アベノミクスは若者の貧困を拡大し、日本の将来を危うくしている。

 教育を受けることを望むすべての若者が、十分な教育を受けられる社会にすることは日本の将来にとって不可欠だ。