今週金曜日の5月13日、東京外国語大学で私の原発についての講演と、伊勢崎賢治教授と安全保障についての対談を行う。伊勢崎教授は国連PKO活動を経験してきた研究者で、昨年の安保法制の審議にも積極的にかかわってこられた。



  安倍政権の行き詰りがはっきりしてきた中で、それに代わる政策を野党からもきちんと提示する必要がある。まず、安倍政権が目玉として進めてきた経済政策「アベノミクス」は、目標としたデフレ脱却にも経済成長にも失敗した。その最大の原因は個人消費が伸びなかったことにある。



  つまり、保育や介護のような比較的低賃金の仕事に携わっている人の実質賃金は安倍政権下では上がるどころか低下し続けた。低賃金の上、実質賃金が低下して個人消費が上向くはずがない。他方、安倍政権下では株価が上昇し、2012年から2015年で株価総額はほぼ倍に上昇した。しかし株価の上昇は個人消費の上昇に全く結びつかなかった。つまり、比較的低賃金の人の賃金が上がれば消費拡大につながるが、株式など豊かな資産を保有する人は株が上がったからといって消費に回さず、さらなる資産拡大に回すからだ。



  ここに、安倍政権の「トリクルダウン政策=アベノミクス経済政策」の最大の間違いがある。つまり高資産、高所得者を豊かにすれば、低所得者にも利益が及ぶとしたトリクルダウン効果は全く現れなかった。



  逆に今必要な経済政策は、低所得者の所得を引き上げ、資産の少ない家庭の子供の教育費を社会が肩代わりする政策だ。そうすれば,低所得者層の個人消費が伸び、経済が底辺から持ち上がってくるはずだ。



  民主党政権時代に進めた政策は子供手当の充実など基本的のそうして政策であった。党のまとまりが悪くて国民の信頼を失ったことについて深く反省しているが、政策自体が間違っていたわけではない。格差を是正する政策こそが個人消費を伸ばすことにつながる、今必要な経済政策だ。