小森敦司著の「日本でなぜ脱原発できないのか」(平凡社新書)という本を読んでいる。サブタイトルは「『原子力村』という利権」。


  第1章の「村」に切り込むでは、「菅首相と経産省の確執」の項を設け、次のように書かれている。


〝東電の福島原発の事故を受け、当時の菅直人首相は、それまで経済産業省が担ってきたエネルギー政策の決定権を奪おうとする。「原子力村」の主要な村人である経産省は、様々な手を使ってこれを阻もうとする。”


  2011年5月6日、海江田経産大臣の提案を受けて私が浜岡原発の停止要請を行った頃から経産省の画策が激しくなった。


  経産省は福島原発事故以降定期点検などで停止している原発を急いで再稼働させるため、一つのシナリオを描いていたようだ。つまり再稼働に慎重な世論の反発を和らげるため、東海地震の予想震源地の上に立つ浜岡原発は停止させるが、他の原発は安全だから順次再稼働させるというシナリオだ。当時は3・11前の法律で、再稼働は経産省に属する原子力安全・保安院が単独で許可できる仕組みであったからだ。



  浜岡原発が止まった後、経産省は玄海原発を再稼働させるために大臣を現地に送った。しかしこの経産省の目論見は失敗した。私が再稼働に当たってはストレステストや地元同意、また総理を含む関係閣僚の同意が必要なように暫定的な基準を設けたからだ。この時期から原子力村の私に対する攻撃は激しくなった。当時の原子力村の動きについてこの本はわかりやすく説明している。



  原子力村の力は福島原発事故で一時期低下したが、最近では復活してきている。経産省や自民党の原発復帰政策は原子力村の意向をくんだ内容だ。しかしそれでも国民の脱原発を求める世論との間でせめぎあっている。特に電力小売り自由化により消費者である国民が原発電力の不買を始めれば、原発復帰を目指す電力会社はドイツと同様衰退するだろう。