東電は昨日、福島第一原発2号機がベントに失敗していた可能性が高いと発表。ベントは格納容器の圧力上昇による破壊を防ぐ最後の手段であり、それに失敗していたということは何を意味するのか。



   事故発生から4日後の3月15日の午前6時ごろ、私が東電本店にいた時に2号機の格納容器の下部で衝撃音がし、格納容器の圧力が外気圧と同じレベルに下がったという報告があった。格納容器内部の圧力が下がったことによって冷却のための注水が可能になった。



  当時、ベントが成功して圧力が下がったのか、それとも格納容器が損傷して下がったのか東電ははっきりした判断は示さなかった。私はベントではなく格納容器のどこかが損傷し、穴が開いて圧力が下がったのであろうと推測した(著書福島原発事故総理大臣として考えたこと118頁)。


  



  福島原発事故のように、格納容器内の圧力がどんどん上がった時、どういう風に格納容器が壊れるか世界中で誰も実験をしたことはない。 メルトスルーし、溶けた核燃料がたまっている格納容器全体が大破していたら、一瞬にして原発周辺は人が数分で死亡に至る極めて高い放射線量となり、誰も原発に近づくことができなくなる。そうなれば福島第一原発のすべての原発と使用済み燃料プールは制御不能となり、250キロ圏からの住民避難という最悪のシナリオが現実のものとなっていた。まさに東日本壊滅の瀬戸際であったことを意味している。



  そうならなかったのはまさに「神のご加護」があったからだ。それを忘れて、原発再稼働を進めている人の気持ちが理解できない。