官僚告発本「東京ブラックアウト」を読み終えた。現在進行している原発再稼働への動きは私の実感と全く同じだ。問題は誰がどういう理由でそうした動きを進めているかだ。


  筆者は、巨額の資金を生み出し、権力維持に使っている「電力モンスター・システム」が、システム存続を自己目的として原発推進を進めていると見ている。つまり、原発が必要だというのはエネルギー政策上の合理的判断ではなく、「電力モンスター・システム」維持を自己目的化している電力関係者が、矛盾を承知で進めているとの見解だ。


  確かにこの見方であれば、原発という金のなる木を失いたくないという理由が全ての動機であり、原発の危険性やコストに関係なく進められている理由が説明できる。またそう見なくては今の経産省などの、明らかに国民の安全を軽視した動きは説明できない。


  電力モンスター・システムとの戦いでは、佐藤栄佐久元福島県知事のように明らかな策謀で政治的に葬り去られた例もある。国会議員の多くはこの本でも紹介されているように、真綿で首を絞められるように原発ゼロという主張を封じられる。


 この本では電力モンスター・システムは年間2000億円の自由になる金を使って政治工作をしていると指摘している。まさに電力モンスター・システムとの戦いは、巨額の資金によってエネルギー政策が捻じ曲げられるのかどうかという民主主義の力量が問われる戦いだ。