訪米中の飛行機の中で「原発ホワイトアウト」(講談社)を読んだ。原発再稼働に反対する知事を陥れる工作など原子力ムラの実態が赤裸々に書かれている。過去に福島県知事に対して現実にあったことだ。私が総理の時の「海水注入を中止した」という嘘のキャンペーンも、原発ゼロを言い出した総理をやめさせる狙いで原子力ムラが仕組んだもの。知事に対する謀略と同じだ。

また「電力連盟広報部」と本の中で名付けられた部署がマスコミを監視し、圧力をかける姿も生々しく書かれている。事実、原発事故が発生した3・11の時点で勝俣東電会長がマスコミ関係者を中国で接待旅行に連れて行っていたこととも符合する。ネット上で電力業界を擁護し、また反対者には組織的に罵詈雑言を浴びせるための組織も紹介されている。私の知ることと共通する点が多い。

著者は現役官僚とある。確かに官邸や経産省、原子力規制委員会の内情に詳しい。事実だとすれば原子力ムラに詳しい官僚の内部告発とも受け取れる。

アメリカでも原子力産業の力は強い。しかし、ヤツコ前NRC委員長の様な良質な原発政策批判が広がっている。ニューヨーク州にあるインデイアン・ポイント原発の50マイル圏内には世界の金融センターの中心があり、2000万人が住んでいる。建設から40年近くたった古い原発。ニューヨークでも稼働延長を認めることに対する反対が強まっている。