歌誌「冬雷」2019年 7月号私の心に残った歌 その5(最終) | 北山の歌雑記

北山の歌雑記

短歌初心者の戯言
「うたは下手でもよい自分のうたを詠め」
目指す旅路の道中記

前回に引き続き歌誌「冬雷」7月号の中で、私なりに特に心に残った 

歌を抜粋してみました。鑑賞・評などと大それたものでは無く

私なりに選ばせていただいた理由を少々記させていただきます。  

(☆新仮名遣い希望者)

 

宍道湖の水面の反す街の灯に映るあかりと映らぬとあり

東京 稲 田 正 康

 

島根県松江市と出雲市にまたがる宍道湖。

シジミの産地としても有名だ。

その湖の水面に映し出される街の夜のともし火。

作者はその色調と明るさによって映るあかりと映らぬ

あかりを発見した。

下句「映るあかりと映らぬとあり」には、その発見への感動。

そしてその発見まで、永く湖面の景と対峙した様子が窺える。

 

藤蔓に枝を貸したる櫨の木のけふ藤色となりて揺れをり

熊本 古 嶋 せい子 

 

藤蔓が巻き付いた櫨の木。

そしてその藤蔓にようやく花が咲き、風に揺れていた。

巻き付いた藤蔓を「藤蔓に枝を貸したる」との洒脱な表現と

藤の開花を示す「藤色となりての」軽妙な描写。

それに結句「揺れをり」で、一首の中に動きまで感じさせ

作者の力量を思わせる内容歌に思われた。

 

散りて咲きまた散り敷ける雪やなぎ足の運びに気遣ふ出入り

兵庫 正法地 清 美

 

散っては咲き、また散っては咲く雪やなぎの花。

その細かな花の散り敷かれた玄関先の出入りに

作者は足を滑らせない様に気遣い歩くという。

まるで冬の降雪の後のような足元の気遣い。

しかしながら、その旺盛な雪やなぎの花の咲きように

作者の嬉しさもあるように思われた。

 

夫かぶりし冬のソフトにブラシかけ壁に掛け替ふパナマ帽子

兵庫 大 塚 照 美

 

冬にかぶるソフト帽にブラシをかけてしまい込み、替わって

夏のパナマ帽を壁に掛けた作者。

初句「夫かぶりし」は、過去の回想。

もはやその帽子の持ち主は、この世に居られない。

その亡き夫の帽子を今でも生前さながらに、季節に合わせて

掛け替える作者。

そこには季節ごとに帽子を替えて身を飾る生前の夫を、作者は

ことさらに好ましく思っていた様子が察せられる。

 

停電の経験ははやいつのことあるにはあるのよ捜す蝋燭

千葉 内 垣 米 子

 

突然の停電に戸惑う作者。

覚束ない様子で闇の中を必死に蝋燭を探した。

不測の事態に対して「停電の経験ははやいつのこと」などと思い

ながら右往左往するのは、作者ならずも人の常だ。

下句の「あるにはあるのよ」には、作者の心の焦りがよく投影

されていて臨場感がある一首だと感じられた。

 

県議会議員候補の応援のわれのマイクに友の窓あく

千葉 吉 村 昌 子

 

県議会議員選挙の応援演説に立った作者。

その街頭演説場所は友人宅の目の前だ。 

候補者や他の応援弁士の演説に一向に姿を見せない友人。

作者の演説が始まって、ようやく窓から顔を覗かせた。

結句「友の窓あく」に、作者の快心の満足感が伝わってくる

内容歌だ。

ちなみに仙台は前々回の4月予定の選挙が東日本大震災の

影響で延期となり、それから4月が任期満了ではなくなった。

ちなみに仙台市議会議員選挙は8月25日投票。

そして宮城県議会選挙は10月27日投票だ。

宮城は選挙の夏、真っ盛りである。

 

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