今日のエピソード

 

夫と二人暮らしを始めたばかりの、30代女性。

 

 

「先生、最近疲れがとれなくて・・・」

 

「あらそれは辛いですね、睡眠は取れてますか?」

 

「4時間ぐらいですかね〜」

 

「ついつい夜更かしをしてしまうんです。」

 

「寝る前はどう過ごしている?」

 

「漫画とかゲームとか・・・」

 

「・・・・。」(そりゃ疲れとれないだろ〜。)

 

 

 

こんな相談をされたとき、なんて答えるのが一番いいのだろうか。

 

明確な答えがあるわけではないんだけど・・・・

 

 

たぶん、少し前のぼくなら、

 

「睡眠は、脳のリセットさせる働きがあって、寝ているあいだに成長モルモンが・・・」

 

とか言って、正論を並べて、相手を納得させようとしていたかもしれない。

 

 

 

 

以前、ぼくが密かにめちゃくちゃ尊敬している、

 

家庭医の藤沼康樹先生のセミナーで

 

 

「相手の訴えは広角レンズで見てみよう」

 

 

と言われたことを思い出した。

 

 

 

広角レンズ。

 

すこし引いて、いろんな角度からみてみる。

 

 

例えば「膝が痛い」だったら

 

膝関節の炎症

痛みによる精神的不安やストレス

過労と睡眠不足

独居の母親の介護

介護保険未申請

経済的困窮

 

 

みたいな感じに、たとえ「膝が痛い」でも、広角レンズでみてみると、

 

問題の根源は、「独居の母親の介護と経済的困窮」なのかもしれない。

 

 

これをBio-Physical-Socialモデル(生物心理社会モデル)という。

 

 

相手の訴えには、必ず背景がある。

 

すぐに答えたくなる気持ちを抑えて、

 

もう何ターンか相手に話を振ってみる。

 

そうすると、全体像がみえてきて

 

本当の問題がわかる。

 

ということらしい。

 

 

 

ぼくは最近これをかなり意識している。

 

 

 

そこでこんな質問をしてみた。

 

「ついつい夜更かしちゃうのって、なんか理由があるのでしょうか?」

 

「んー実は、夫がずっと家にいることがとてもストレスで・・・・」

 

「なかなか、じぶんひとりの時間を作れないんです。」

 

「じゃあ、夜更かしは、唯一自分の時間だったりしますか?」

 

「そうかもしれないですね・・・。」

 

 

うーん、なるほど。

 

このひとが、夜更かしして、睡眠時間を削っているのは

 

夫との関係性や、価値観になにか問題がありそうだ。

 

4時間睡眠では、疲れがとれないのも無理はない。

 

 

もしこのかたに、「睡眠不足は疲労によくないから、6時間は睡眠時間を取りましょう」と説明しても、

 

効果が薄いことは明らかだ。

 

それよりも、「旦那さんとの関係性」について話を聴いたり、

 

「夜の時間の使いかた」について、一緒に考えたほうが

 

根本的な解決になるのではないだろうか。

 

 

 

でも、やっぱり鍼灸師だから、

 

「よし、疲労回復のツボに鍼をしましょう!」

 

と言いたくなるとこだが、

 

グッとこらえて。

 

相手の訴えを、ちょっと引いたことろで俯瞰的にみる。

 

広角レンズでみること、大切だな〜と感じた。