父さんの携帯に入っていた家族の連絡先。

そのどれに掛けたのかはわかりませんが
しまの携帯は鳴りませんでした。

後から聞いた話ですが
母さんの携帯には知らない番号から
着信が入っていたそうです。

兄の携帯に着信はありませんでした。
自宅の電話も鳴っていません。

その為父さんの弟夫婦へ連絡が行き
身元の確認を頼まれ、
わざわざ他県から来てくれました。

父さんの仕事用携帯へ電話をかけた後
その話を聞かされて、

やっぱり現実か、と。

ちゃんと事実を受け入れないとと思いました。

その後PET検査を終えた母さんから着信がありました。

落ち着いて聞いてな、

そう前置きをして事実を伝えました。
母さんは泣きながらどうしようと呟きました。

一度帰宅するように伝え電話を切りました。

母さんが帰ってきてから一通り事情を伝え
3人で父さんを警察署に迎えに行きました。

警察署では父さんの弟夫婦がいました。

叔父さんは父さんに似ていて
少し泣きそうになりました。

担当の刑事さんに呼ばれて
事実確認と状況説明を受けました。

行ってきますと出て行った父さんは
自宅の数百メートル先で倒れたそうです。

幸い倒れた時に周りに人がいて
その方々が蘇生の処置(心臓マッサージ)をしたり
救急車の手配をしてくれたそうです。
心臓マッサージは
救急車が来るまで続けたくださったそうです。

それでも父さんは助かりませんでした。

話を聞き終え、やっと父さんと面会しました。

まだ少し温かかったような、
もう冷たかったような。

顔は本当に寝ている時と同じでした。
眼鏡をかけていなかったので少し違和感がありましたが
それでもやっぱり見慣れた父さんでした。

母さんは泣き崩れました。

行ってきますって言ったじゃない、
帰ろう。起きて帰ろう。
何でこんな所で寝てるの?

ドラマで聞いたことのある言葉ばかりでした。

強がっていたわけではないのですが、
涙が出ませんでした。兄も泣いていませんでした。

兄は多分自分がしっかりしなければ、とか
この後のことを考えていたんだと思います。

しまは泣き崩れる母さんを一歩後ろから見ていました。

本当は自宅に連れて帰ってあげたかったのですが
路上で倒れたため司法解剖をすることになり、
大学病院へ搬送され叶いませんでした。

父さんと別れて翌日の予定を決めてから
帰宅しました。父さんの弟夫婦も一緒に。

帰宅すると祖母と母さんの方の親戚が
来てくれました。葬儀の話をしていました。

その後警察の方々来て
父さんの寝ていた場所を観て行かれました。

親戚は葬儀のことを話していて
勝手に事が進んでいる感覚だけがありました。
その後親戚は帰宅して、家には
家族3人と父さんの弟夫婦だけになりました。

叔父さんが父さんの席に座っているのを見て

そこ父さんの席なのにな…と思っていました。

父さんは煙草を吸う人で叔父さんもそうでした。
仕草や顔も似ていてああ、何で父さんじゃないだ
そう思いながら夕飯を食べました。

一度自宅に帰りまた来てくれると
叔父さん達は帰っていきました。

眠る時、父さんの布団で寝ました。
寝付ける筈はなく携帯でずっと、
蘇生する方法ばかり検索していました。

もしかしたら明日は起き上がるかもしれない、と。

司法解剖される前に目を覚まさないと死んじまうぞ!
と念を送りながら寝落ちしました。

朝起きた時病院から蘇生しました、
という連絡が入っていると期待していましたが
ありませんでした。