「Nのために」第2話②放火事件の謎…許されない罪の共有 | Warehouse of memory

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主にドラマや映画の記録

音楽を聴くだけで映像が蘇ったり
似た景色を見ると台詞が浮かんできたり

No drama, No my life.


―― 2014年 現在 ――
  「安藤 望さんにお目にかかりたいんですが。
   ほうです。2004年度に入社した、安藤さんです。
   そうですか、ありがとうございました。」


   悲劇が起こるとき、必ず二人がそこに居合わせる
   前兆はあったのに 誰も先を見抜けなかった
・・・



―― 2000年 ――

  こんなことしたって、何にもならんやろ。
  「あんな家、無くなればええんよ。
   あの家が無くなれば、お母さんもあたしも楽になる。
   成瀬くんにこの気持ちがわかる?!

  「わかる。
   ・・・燃やしてしまえば、誰にも取られんもんな。
   大事な場所、自分だけのものにできるもんな。
」  
  「わかるんなら返して。・・・返して!
   もう戻れんなら、こんなに辛いなら・・・。全部燃やして無くしたい。

  「・・・なら俺がやる。
   杉下に、犯罪者になってほしくない。
   俺がやる。


  「待って!・・・成瀬くん
  「苦しいんなら、助けるけん。どうしてほしい?
   俺に、なんができる?!

  「・・・何も要らん。何にも要らん・・・何も要らん・・・
  「卒業したら、島出よう?


杉下宅


――翌朝
▽杉下宅
  「行ってらっしゃい」
  「ははは」
  「ああ!」
  「大丈夫?!」
  「何ぞこれ?・・・ああ痛。」
  「大丈夫?痛くない?」



▽希美宅
  「悪いね、休みの日に。」
  「何ですか。
  「今、ええやろうか。」
  「・・・ええですけど。
  「ええって。
   ・・・民生委員の、池園さん。地域で困っとる人がおらんか、話を聞いて回りよるんよ。」

  「お困りのことがあったら、何でも話してください。誰にも言いませんし、力になります。」
  「はい。」

  「もっと早うこうすればよかったなぁ。頼りない駐在でごめんな。」
首を振る希美。

  「・・・一つ、ええか? 昨日、あっちの家、行ったか?」
  「行ってません。
  「・・・ほうか。あぁ、慎司も心配しとった。」



▽さざなみ
  「あんたも、あたしと一緒に来ん?」
  父さん落ち込んどるし、放っとけん。
  「ごめんね、受験を控えた大事な時期に迷惑かけて。
   でも、父さんとは、これ以上やっていけんのよ。母さんやって、努力したんやけど
  わかっとるよ。
  「あんたとは離れたくないんよ、ほんとに。」
  俺・・・俺、大学受かったら一人暮らしするつもりやし。
  「それまでの間でええけん、一緒にいようや。」
首を振る成瀬。
  「・・・料理人と一緒になるんやなかった。」
  父さんも・・・頑張ったと思うよ。
  「島のことだけ考えっとっても駄目なのよ。
   あんたもそう思ったけん、島を出ようと思ったんやろ?」
  ・・・。

(アナウンス) まもなく、高松行きフェリーが出向いたします。

  「おあいそお願いいたします。」
  「はい、ありがとうございまーす。」
  「これからも、しっかりね。」
  ・・・。




▽東屋
  何とかなるかも・・・。


   この奨学金をもらって、絶対に島を出る・・・!


▽さざなみ
  父さん、明日引っ越しのトラックが来るのは何時?」 
  「すまんのぅ、こんなことになって。」
  俺、店継ごうと思っとったのに。
  「ほうやないかと思っとったよ。母さんとこ行ったってええぞ?」
  そんなこと考えてないよ。
  「ったく。ちょっと買ってくるわ。」
  うん。

  ―「全部燃やして無くしたい・・・。
  ―「誰にも、取られたくないなぁ・・・。」 


▽駐在所
電話が鳴る。
  「はいはい。 はい、もしもし。ああ。え、今、留守なんよ。ちょっとバイクの事故があって。
   ・・・火事?!」 

▽事故現場
  「今救急車来るけん。大丈夫?」


   PSから各局出火、現場は青景郡青景村栄58-3、青景駐在所管内 


▽さざなみ
  「中に誰かおるん?!」
  「おじさんと成瀬くんが・・・!」
  「消防団にはもう連絡した?」
  「したけどまだなんよ!」
  「・・・夏恵さん!」

  「周平さん?
   周平さん、周平さん!しっかりし!起きて!」

  「周平さーん!夏恵さーん!」
  「ああ・・・、周平さんをお願い!」
  「夏恵さん、早く逃げぃ!」
  「いいから!行って! 慎司くーん!!!」

  「高野さん!?わかりますか?」

  「高野さん!」
  「なっちゃん!・・・なっちゃん!なっちゃん!しっかりしぃ、なっちゃん!」
  「高野さん、わかりますか?」
  「なっちゃん!しっかりしぃ!なっちゃん・・・!よろしく頼みますわ・・・お願いします」

  「高野さん!・・・慎司がおらん。どこにおるん?!」



▽さざなみから少し離れた場所
 成瀬が一人立っている。そこに希美がやってくる。

  成瀬くん・・・。
  
  ――「こんなに辛いなら、全部燃やして無くしたい・・・!」――
  ――「燃やしてしまえば、誰にも取られんもんな。大事な場所、自分だけのものに出来るもんな。
      ・・・なら俺がやる。
」――


火事



  「慎司・・・!」
  「おったぞー!おったぞー!」
  「おーーい!慎司ー!」
  「慎司!何しよんぞ?こんなとこで。
   燃えとるんは、お前の家やろが。何があったんぞ?
   なんがあった?」


  ・・・さっきまで、
   二人で一緒にいたんです。私が来てって頼んだんです。
   この上の東屋で、奨学金の申請書を、渡しました。
   締め切りが近かったけん、どうしても今日中に渡したくて。
   そしたら、火が上がってるのが見えて、二人で一緒に来たんです。
   ・・・ほうよね、成瀬くん。

  「・・・。
  「・・・親父さん、病院に運ばれた。」
  「買い物に行ったはず・・・。
  「連れてってやるけん!」


  「慎司!なんでこんなことになったんぞ?
   親父さん、人一倍、火の始末はちゃんとしよったろ?
   なんでこんなことになったんぞ?」
  「・・・。




  成瀬くん・・・!
   これ・・・。さっき話してた、奨学金の申請書。
   なるべくはよ、学校に出してね。
   締め切りが近いけん、絶対に出してね?
   ~~~~~~~~。


メッセージ

  「・・・。



▽病院
  「なっちゃん!
   なっちゃん・・・。目、覚ませよ。なっちゃん・・・。」



▽駐在所
  「放火かねぇ・・・?
   高野さん!なっちゃん、大丈夫なん?」
  「ついててやりや。県警から応援来とるんやけぇ。」
  「なんか、情報入った?」
  「さざなみの息子が、最近夜中に、自転車でうろうろしとったらしいよ。」
  「慎司が?」
  「まさか、自分ん家に火はつけんやろ。」
  「わからんぞ?その年頃は。」

▽警察署(?)
  「昨日、君が家を出たんは何時頃?」
  ・・・。

  成瀬くんとは、1時間くらい一緒にいたと思います。
  「奨学金の、申請書を渡したんやな?」
  はい。

  「クラスの子、杉下さんと会っとったんやけぇ?」
  はい。

  「慎司とは、仲良かったよな?」
  「特別仲がいいわけやありません。
   ときどき情報交換しとっただけです。東京の大学に行くって言いよるんは、成瀬くんと私だけ

  
  「杉下さんとは、どんな話しとったん?」



  ――「店が火事出すとかすれば、――


  「お互いの、家庭の事情については話したりするん?」
  「そうゆうことをお互いに話す仲やありません。
  「本当に、一緒におったんか?
   さざなみが火事になる前から、一緒におったんか?」
  「おりました。
   嘘やありません。



  杉下。
  「そばに来んで。
  「え?
  「見とる。

  「慎司。」
  「・・・。
  「・・・落ち着くまで、うちに居れ。」
  「・・・うん。




   今日の、どういうこと?今どこ?
  「成瀬くんは?
  「電話やなくて会って話したい。

  「来たらいかん!
   ・・・あたし、もう成瀬くんと・・・話さん!


別れ(希美)

  「どうして。
  「警察に、成瀬くんのこと、いろいろ聞かれたけん。
   あの人たち、また来るって言いよった。
   成瀬くん・・・
   今まで、ありがとう。

  「なんでそんなこと言うん。

別れ(成瀬)

  今まで一緒にいてくれて、ありがとう。
   いつも一緒にいてくれて、嬉しかったけん。


  「杉下。

 


   成瀬くん、助けてくれて



  杉下ーーーー!


   ありがとう



―― 2014年 現代 ――
▽空港

▽オフィス
  「おー帰ってきたか安藤。」
  おかげさまで無事で。
  「安藤!生きてたのかよー。」
  
生きてます。
   あー、お久しぶりです。寒いっすね。


安藤 帰国

  「誰ですかあの人。何か妙に騒がれていません?」
  「安藤望。」
  「海外赴任から戻ってきただけですよね?」
  「あいつ、10年前殺人事件に巻き込まれたんだよ。」
  「え?・・・誰が殺されたんです?」
  「あいつの直属の上司。それで、あいつが出世コースだよ。」


▽受付
  安藤です。
  「あちらです。」
  
高野さんですか?安藤です。
  「あぁ、どうも。初めまして。」

  「安藤・・・。」
  「のぞみです。
  「杉下さんと読みが一緒でしたね。」
  「そのことで昔よくからかわれました。
  「帰国早々すみません。」
  「いえ。

  「ずいぶん長く?海外には。」
  「イギリスを中心に、10年ほど行ったり来たりしていました。
   やっと日本に落ちつけそうですよ。


  「亡くなられた、野口ご夫妻にはお悔やみ申し上げます。
   安藤さん、お二人とは親しかったとか?」
  「ええ。
   野口さんにも、奥さんの奈央子さんにも、本当に世話になりました。
   でもあの時何が起こったのか、僕は何も知らないんです。
   約束の時間に遅れて、そのときにはもう・・・。


  「同じく、あの場に居合わせた成瀬慎司くんのことについて伺いたいんですが。」
  「・・・杉下の同級生ですよね?
   僕は彼とほとんど面識がありません。偶然居合わせたんです。

  「偶然、ですか。」


安藤&高野
  
  「高野さん、お仕事でこの事件に関わっていたわけじゃないんですよね?
  「いやぁ、私は単なる、田舎の、元駐在で。」
  「事件の、何を調べているんです?

  「あったあった。
   安藤さん、事件の後、西崎さんを支援しておりますよね?
   腕のいい弁護士を探したり、それから、裁判費用のカンパを募ったり。
   随分、西崎さんを助けとったでしょう?」
  「知らない仲じゃありませんから。
   大きな声では言えませんが、
   野口さんが亡くなったことで僕の社内でのポジションが変わって。

   入社二年目で、海外に赴任することになりました。

  「野口さんが亡くなったことで、立場が良くなった?」
  「・・・気まずいですよね。
   僕に何かできることはないかと思って。それで西崎さんを支援しました。


  「Nのために。
   その件で西崎さんと少し話をしました。
   すべては、Nのために。
   あなたたちがやったことはそうゆうことですよね?
   それについて少し、
  「なんですか?Nって
  「西崎さんは、被害者の、奈央子さんのNだと言っておりました。」
  「あー・・・。

   大切な誰かのために、ってことでしょうか。
   それなら、西崎さんにだけじゃなく、あの時あの場所に居た全員に、大切なNがいました。

  「安藤さんにも?」

  「僕にとってのNは、

   杉下希美でした。



▽高野宅
  夏恵が電話を取る。夫・茂からの電話だった。
  「今から帰るけん。新しい薬飲んだ?
   忘れたらいかんよー。治らんよー。あぁ、夕飯何か買ってこか?
   要らん?じゃあ、寄り道して帰るわ。
   調べたいことあるけん。なるべく、はよぅ帰るよ。うん。」 


▽オフィス
  あ、ねぇ、鈴木邸の水栓って別注だったよね?
   納入間に合うか今日中に確認しといてね。

  「はい。」



   2014年12月10日(水)
    安藤望
   日本に帰ってきた。
   西崎さんの出所まで待っ
   た。
   杉下に会いたい。

   安藤

  
  
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   高野っていう元警官が話
   を聞きに来た。
   事件のことを調べてい
   る。


  「・・・。


  「冗談でしょ?他の事務所からの引き抜き?」
  いえ。
  「簡単に辞めるなんて言わないでよ。
   希美と私と二人で、この事務所ここまで大きくしてきたんじゃない。」
  許してください。
  「せめて理由を教えて?」
  今は、言えません。



―― 2004年12月24日 事件当日 ――



――杉下!――

――
ごめん・・・成瀬くん。――




  あのときついた、たくさんの嘘を

  誰にも知られないまま、終わりたい


――「大丈夫。――


 
   終わらせなきゃいけない


  Nのために







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