『人間五十年』・・・正しくは、これです。
『人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。
一度生を得て滅せぬ者のあるべきか』
幸若舞『敦盛』の一詞章で、これは源平合戦・一の谷の戦いでの熊谷直実が若き平敦盛を討取らなければならず、のちに出家し、世の無常をはかなむ一節です。
本能寺の変の折、信長が炎に包まれながら謡い舞うシーンばかりが取り上げられて誤解されているかもしれませんが、元々は桶狭間の戦いに出陣する際に謡い舞ったと『信長公記』にあります。
辞世の舞いではなく、出陣に際し自ずから鼓舞する舞いだったようです。
『人間五十年』
現在の感覚でいえば七十年くらいでしょうか。
とはいえ、その差に意味はなく。
人間界の五十年の歳月は、下天の一日にしかあたらないといいます。
下天とは、仏教の教えにある六道の最上位にあたる天上界のうち、人間界に近い六欲天(天上界でありながら欲が残る世界)のいちばん下、つまりは天上界の最下層世界のことで、その世界の住人の定命は500歳とされます。
それほどわずかな人間界での一生です。
あくせくせずに、楽しくまいりましょう。
