冬支度をしたい庭仕事も
雨だと諦めがつきますね。
晴耕雨読。
とはいえ寒い!
皆さまが健やかにお過ごしでありますように。
ブログ記事で惹かれた作品の数々
長いリストになってます。
読みきれず観きれないものが
宝の山のようで、幸せ
いつもご紹介ありがとうございます。
こちらもその一冊。
『ケイレブ ハーバードのネイティブ・アメリカン』
ジェラルディン・ブルックス作
柴田ひさ子訳
1665年に
創立まもないハーバードを卒業した
最初のインディアン
ワンパノアグ族の青年
ケイレブ・チェーシャトゥーモークを
モデルにした物語です。
感謝祭の由来ともなるエピソード
1620年
新大陸に到着したばかりの
メイフラワー号の人々を
冬の寒さと飢えから助けたのが
ワンパノアグ族の人々だそうです。
その後ハーバード大学が創設され
先住民のための学生寮が設けられ
ケイレブ達は卒業しました。
ケイレブ達が生きた
はじまりの舞台は
マーサズ・ヴィニヤード島
海も陸の実りも豊かな島。
今は有名な高級リゾート地
映画『ジョーズ』のロケ地でも有名です。
物語の主人公は少女べサイア
ワンパノアグ族に布教する
宣教師の娘。
聡明で自立心に富んでいるのに
女性であるために
学ぶことができない。
兄が学ぶ様子を盗み聞くようにして
ラテン語、聖書を独学します。
この二人が浜辺で偶然に出逢い
互いの言葉、風俗を学び合います。
そして、
それぞれの立場で、
大学へ・・・。
ピューリッツァー賞作家による
史実に基づいた
少年少女それぞれの暮らしの様子が
生き生きとしています。
17世紀の価値観は今からみると
窮屈で、莫迦らしくて、
そして意外や
今の日本のジェンダー意識や偏見差別と
たいして変わらないようにも思えます。
だからこそ余計に逆境のなか
自分たち一族の
生き残りをかけて学ぶケイレブや
学ぶに学べない
でもなんとかして学びたい
べサイアを応援しながら読みました。
べサイアがみつめる
ケイレブの真意は謎のままです。
そこにフィクションとして描いた作者の誠実さを感じました。
表紙絵は
ベイマックス、リメンバー・ミーを描いた
上杉忠弘さん。
彼のアニメーションでも観てみたい。
ボーボー・ステュアート主演での
映画化の話があるようです。
こちらは念願の復刊
『みんなが手話で話した島』も
マーサズ・ヴィニヤード島なのです。
17世紀
ケイレブとべサイアが育った当時
その後
こちらの本では
地名が変わり、
ワンパノアグ族の気配が
地名ではわからなくなっています。
グロース博士は
口承で伝えられた記録と、
基本台帳や裁判、売買等の詳細な記録から
17世紀から近年までの
マーサズ・ヴィニヤード島の
人々の暮らし、動きを再現します。
17世紀以前の研究調査は
ヘレンケラーの庇護者でもあった
発明家のベルが大々的に行ったものを
採用しています。
17世紀当時から
産業がかわり
人々の出入りが盛んになる19世紀後半まで
島の人々のコミュニティも暮らし方も
大きくかわらなかったため、
資料から蘇る島の人々の暮らしは
べサイア達の日常を読んでいるようでした。
ろう者の出生率が高かった
島の人々は
互いが聞こえる、聞こえないにかかわらず
口話、手話どちらも
第一言語として生活をしていました。
同時代、島の外では
ろう者は劣っているとみなされ
職業も結婚の機会も限られていました。
それは現代でも大きくはかわりません。
ではなぜ
マーサズ・ヴィニヤード島では
誰もがごく普通に手話で話し
聴こえないことなど
さして気にされずにいられたのか?
グロース博士は過去の人々の動きから
解き明かそうとします。
争いも諍いも貧富もあるなかで
健聴、ろうの差なく
結婚も離婚も経済的な成功もあった
ごく普通の社会。
聞き取りされた会話から
島民の日常を推測し
医学的、歴史的、文化人類学的見地から
考察します。
精力的な調査は謎解きのようで
ぐいぐいと読ませます。
ろう者がいまだ軽視される今の社会が
いかに理不尽なものか
積み重ねられた事実から
説得力をもって批判します。
40年近く前に調査し論じた主張ながら
今も全く古びていません。
旧訳が見直され新しい訳注がついた労作です。
解説は『コーダの世界』を書いた澁谷智子さん。
マーサ・ヴィニヤード島からろう学校に通った若者達のコミュニティは、他の地域よりも人数が多く、語彙も豊富で、現在使われるアメリカ手話の雛形とも考えられるそうです。
『アリストテレスとアメリカ・インディアン』
L.ハンケ著
佐々木昭夫訳
こちらも最近復刊しました。
1959年原著出版
1979年岩波初版
アリストテレスと
アメリカ・インディアンがどう結びつくのか?
疑問でしたが
大航海時代以降
原住民を奴隷化する
思想の根拠が
アリストテレスによる
「劣者は優者に支配される」
という論理によるもので
この本は16世紀スペインで
「先天的奴隷」という考えに対して
反論し、アメリカ・インディアンの側にたった人々の思想的闘いの記録でした。
実はアリストテレスは
『みんなが手話で話した島』でも
歴史的に見た聾の章で登場します。
アリストテレスによれば
「発語は思考と教育の主たる伝達手段で
耳が聞こえないと学習が不可能になり
いかなる指導も無駄になる」といいます。
聾者は教育不可能、
と断じたわけではないものの、
以降この説は中世以降も受け継がれていきます。
倫理学の基礎を築いたアリストテレスの思想が、彼の本意でなかったとしても、奴隷や差別、ある種の選民思想を裏付ける堂々とした根拠となり続けていたことに衝撃をうけました。
そして当時常識とされていた理屈に反論し
議論で粘り強く闘い、理論と立法の力で人間性を守ろうとしたことに希望を感じました。
『ケイレブ』の原題は
『Caleb's Crossing』
ケイレブが海を渡り、異文化を渡ったことを重ねて意味するそうです。
自分達を脅かす者達を
理解し、共存の道を探するために学ぶ。
その勇気ある行為は、
地味で気が遠くなるほど時間がかかることだけれど、今もかわらず必要とされる大事な一歩なのだと思います。
『ケイレブ』など、
読んでしばらくは思いがまとまらず
感想はお蔵入りしようかと思ったけれど
先輩方受験生が夢に目標に向かって
真摯に努力される姿は
ケイレブやべサイアに重なりました。
学びたい人が困窮や差別偏見に労することなく、等しくその機会を得られる世の中になることを願わずにはいられません。
おまけ
上杉忠弘さん同様、アメリカのアニメ界で活躍されている堤大介さんの短編アニメが新作『ONI』公開記念で限定配信されてます。アカデミー賞ノミネート作品。
私もこれから観ます!
長々とお付き合いいただき
ありがとうございました。












