書きそびれていた
読後雑感、備忘録です。








三体Ⅲ 死神永世

この夏、
読みおわりました。





昨年からの全5冊、
エキサイティングでした〜爆笑



もともとは
私が面白くて薦めたら
息子のほうが夢中になって


さほど読書好きではなくても

理科好きな彼にとって
刺激的な読書体験だったようです。



5月の完結編発売を前に

『三体』そして『三体Ⅱ 黒暗森林』を
読み直して

『三体Ⅲ 死神永世』の発売日に臨み、
一気に読んでいました。


仮想未来や物理の法則など
厨二病には
たまらないのではないでしょうね。



ハードSFというジャンルらしいものの

科学的に難解なところも
理解しやすく書かれているので

私達母子のような
素人でもたっぷり楽しめました。









5月発売時には、
三体フェアを開催した書店もあったようです。

私の生活圏では
新刊の端で
『三体Ⅲ』だけそっと置かれていて


この興奮は
現実世界では万人に
共通のものではないと
少しさみしくなりました。





いいんです。







インターネット上では
読破した方達の
興奮と喜びが続々と寄せられてました。


連日息子から読めと催促されつつも

読みたいような
読んだら、
終わってしまうのが惜しいような。





ところが



SF作家宝樹さんによる続編
公式二次小説『三体X』の出版が決まり
そのレビューも出始めて


我慢できなくなりました。











あっという間に読みました。






読後、ふとしたときに


白昼夢をみます。



あのシーンのあれは
この世界がどうなるってこと?


みたいに。


まぁ親子で盛り上がりましたよ。
息子よ、待たせてごめんね。













三体は、

タイトルからして

そういう意味か〜!!


と、読みながら驚ける方が
断然面白い!
なので

前情報はない方がいい
と思います。

できることなら

あらすじすら
知らないほうがいい。






劉慈欣さんは
もともとエンジニアの方で
趣味でSFを書き始められたそうです。


JAXAや、NASAの人達も
ハマっていた方たちがいるので、


科学的な考証自体もかなりリアルで



アイデアの斬新さに
いろんな専門家が
驚いてもいらしたので、


展開は
たいていの予想の 
かなり斜め上をいくと思います。


その意外性が
爽快です。






世界的なベストセラーとなっていますが

そもそもは中国国内向けの作品だったとか。


『三体』と『三体Ⅱ 黒暗森林』は
SFがよくわからない読者も
楽しめるような内容を心がけ、


『三体Ⅲ 死神永世』は 
作者自身へのお楽しみで
コテコテのSFを書くことにしたそう。


登場人物も、
わかりやすい人物設定を
それぞれに配置したそうです。

テクニカルですね。



しぶとくて
ふてぶてしい
生命力にあふれた

ひと癖ある
キャラクターの意外な行動や発想に
驚かされることが多々あったので、

海外の書評には
全く違う読み方や
面白さが書かれていそうで
気になります。












息子は『三体Ⅱ 黒暗森林』が
一番面白かったようです。

確かに、
エンタメ性が高いですし
実写化されたら
一番盛り上がりやすいでしょうね。







SF的な面白さが
全編に貫かれていることは前提として、


映画での場面展開を彷彿させるような
テンポのよさで

謎めいた出来事に遭遇する

登場人物の戸惑いや恐怖に
ひきこまれます。





逃れられない運命を前に

死を

利益を、名誉を、
逃避を

運命を変えることを

選ぶ、命がけの知恵比べ。







昨年来の世界情勢自体が
ある種のSF世界
仮想現実を生きているような
非現実感に襲われることがあったので


作中の
ありえない荒唐無稽な未来も
エピソードの積み重ねで
説得力が増して
ありえることなのかも、とも思えます。





自分だったら
激動すぎて
なすすべもなく
荒波にもみくちゃにされそう。

だからこそ
想定外なことへの
イメージ力を鍛える上では
なかなか面白い読書体験なのかもしれません。













Netflixでの実写化の企画も進行中です。

そもそもは中国内で2006年の連載。

今から15年前の作品で

いまだに多くの読者の
度肝を抜く発想であり続けるとは
凄いことです。






ここまで世界的に注目されると
作者の政治的な立ち位置も
様々な方面から期待されていて

何かを発言するにも
プレッシャーが

空想の翼を羽ばたかせるにも
制約がついてまわるのかな

と想像します。


(Netflix実写化も作者の発言で一時は反対運動が起こった)








と同情的なことを思いつつ

後出しジャンケンのような
感想で申し訳なくもあるけれど










(以下本筋ではないもののストーリーに関わります)










『三体』での葉文潔(イェ・ウェンジェ)が底知れない闇をのぞかせて、いいしれぬ迫力があったのに

『黒暗森林』はまあ、ある女性が工作員的なポジションと妄想できなくもないとして、

 







『死神永世』の女性のキャラクター描写が

今一つだったのですよ・・・







(息子は人物造形の深みを求めてないから、と意に介さず。むしろ科学的な展開に色々と思うところがあるらしい。)



そういうことにも読む楽しみを得ていた者にとっては、今ひとつ盛り下がる配役でした。









文化圏と時代の要請があったとしても


未来を描いていますから


SF設定に負けないくらい
チャレンジしてほしかったかな。





この感想は
ほんとに
後出しジャンケンです。


アナと雪の女王のキャラクター設定だって
2013年ですもん。



逆に
そこまで期待値を上げさせた
筆力と
作品世界がすごいです。






そのうちどこかのオンライン読書会に参加して、ネタバレな感想を語りたいなぁ。











参考までに。

『折りたたみ北京』




こちらに『三体』の一部が『円』という短編で掲載されています。

ただしこの本、他の箇所でⅢ部の結末にさらりと触れているので要注意です。


タイトルの『折りたたみ北京』も映像化の企画があるみたいです。こちらも面白かったです。




『文藝 2020春』



『三体』をめぐる動向について等のエッセイが載っていました。

○『三体』以前と以後 中華圏SFとその周辺
○ルポ『三体』が変えた中国
○監視社会を生きる人々



『三体』は架空の国際情勢を描いてもいるので
現実世界に重ねてみたり
比喩にしてとらえてみたり
想像しつつ、
やっぱりエンタメとして楽しむ二度美味しい読み方もできました。







こちらは劉慈欣さんの英訳短編
魅力的な女性主人公のお話だそう。
訳者さんが紹介されていました。
未読ですが記録しておきます。








『三体』を中国語から英訳されたのが
人気SF作家のケン・リュウさん。

『三体』の売り込みも粘り強くされたようですね。私の好きな作家さんの一人です。



翻訳の際、海外で受け入れられやすいように
構成や言葉遣いにも手を入れられたそうです。

以前にも書きましたが
日本語訳はケン・リュウさんの英訳が元になっています。


中国版、日本版両方に目を通した知人は
作品の印象が変わるものだと驚いていました。



『紙の動物園』









SFの数々の賞を受賞し
ケン・リュウさんを
一躍有名にした
SFらしからぬ短編。



写真花嫁のようにして
アメリカに来た
中国人の母と

アメリカ人として育つ息子の愛の物語


胸をかきむしりたくなる
とても切ないお話です。


切なすぎて
おすすめです。











『三体』と『紙の動物園』
作者も設定も異なるけれど、
息子と共に読んだ物語のせいか
私にはひとまとまりの世界でもあります。





他の短編作品も
情感が豊かで
読後の余韻が長く感じられて
味わい深くて


もったいなくて
一作品ずつ、
少しずつ読んでいます。







秋の澄んだ気配に似合う作家さんです。
 




















秋は、


緋色と濃紅色のとき、

ルビー色とガーネット色のとき、

朱色と深紅色のときだった。




宇宙はそうした

赤い色味の恒星に照らされていた。  


  
       ケン・リュウ『宇宙の春』より