映画館で映画を観ると、

非日常の空間に
やっぱり映画っていいなぁ、
とまた観たくなります。


立て続けに息子と観ました。

上映期間が終わるまえに、
紹介させてください。



『カラミティ』










輪郭のない色彩で

表現されたアメリカの自然が美しい。


この絵が、アニメーションで動くんですラブ


公式サイトからお借りしました


草原の色、朝焼け、夕焼け、夜空の色。
やわらかい色彩でカラフルに描かれていて

走る馬の背に仰向けになって
降るような星空を眺めるシーンは
うっとりします。



自然を見分ける色彩感覚が
観賞後、
少し変わった気がするほど。



舞台は『レヴェナント』よりも後で
ちょうど『大草原の小さな家』くらいの時代



画像はお借りしました


「カラミティ」とは「疫病神」

実在した

女性の凄腕ガンマンの11、2歳の頃のお話。

カラミティジェーンは
昔から映画化されてるんですね。

本人も経歴に嘘をついていて
伝説も沢山あるから
史実が明らかではないらしく

その人生でも
あまり語られていない

幼い頃の辛かった旅路について

もしもカラミティジェーンなら
どんなふうに苦難に立ち向かったかを
創作して描かれています。


レヴェナントのような
粗野な世界なら

若い娘が対等に渡り合うために
はったりかまして
自分を強く見せていた気持ちが
わかる気もします。






ジェーンの家族は
(母親は亡くなっている)
安住の地を求めて旅団に加わり
馬車と徒歩で
地図なしで慣れない土地を
旅します。

まるで
毎日、山歩きしているよう。
歩き続けくたくた
そこからさらに
火起こしからの料理
雨の日も馬車の下で
野宿。

今と違って
温泉もシャワーもないし
トイレだってない

女性の格好は長いドレスに
おしとやかな振る舞い

みるからに不便で動きにくそう



父親が大怪我をして寝込み
家長の代わりとして
作業しやすいように
父親のズボンを履いたら

白い目で見られます。
大人や女性から冷ややかに注意される

それでも止めない。

ジェーンは寝静まって
乗馬や投げ縄の練習をする


公式サイトからお借りしました
負けん気で髪も切る。




ここまでは序の口で

思いもよらぬアクシデントに巻き込まれ
正義感から
あれよあれよと事態が思わぬ方向へ
転がっていきます。



アメリカが舞台なのに
字幕上映は会話がフランス語で
慣れるのに少々時間がかかりました

日本語だと外国作品と思わないかも。


ピクサーでもディズニーでも
ジブリでもないから
ますます
展開が読めない気持ちに。

死なない以外に予測できない。



登場する全ての人が
山師のような
開拓時代のアメリカの
空気感を感じます。



人生って

予測のつくことばかりではなくて

出たとこ勝負で腹をくくるしかない。


四つん這いで闇に進むジェーン姿を見て、ふと思いました。




自分はこの生き方で生きて行く、と
徐々に決めていくさま

さだめた生き方に力を漲らせる姿が
強く心に残りました。



↑冒頭10分を観ることができます。






映画館を出たあと、

「スゲー面白かった!!」

と歓声をあげ興奮して語りはじめる
若い男性二人組がいました。


ずんずん前に進む二人の
会話は聞こえません。
盛り上がった様子の二人の背中を見て

こんな感想を聞けたら、
制作冥利につきるだろうね、
と息子も嬉しそうでした。









『くじらびと』





予告動画の鯨漁を観て
度肝を抜かれました。

これは観るしかないでしょう。




フリーカメラマンの石川梵さんが


足かけ30年

インドネシアのレンバダ島に通って

江戸時代のような手法で
銛で突く
ラマレラ村の人々の
鯨漁を追った迫力ある作品です。


公式サイトからお借りしました

巨体の鯨に、銛と身一つで
対峙する

これが、
現代も続く漁の姿。


ただ

時代の波で
まもなく失くなるのではとも言われている
貴重な記録でもあります。





鯨と闘うために造られる
口伝の
伝統的な技で組まれた
木の船に乗り

日本の沈没船の鉄を再利用して

自分たちでふいごを吹き
鉄を叩き、できた刃を
長い柄に取りつけた銛


灼熱の暑さのなか
何時間も何日も
鯨を待ち構え

現れたら

怯まず

タイミングをねらって
全体重をかけ
銛ごと飛びかかる


どこでもいいわけではないから
熟練した経験と
度胸と運がものをいう


年4ヶ月の漁期に
10頭の鯨が捕れたら
一年間島は潤うというけれど
3ヶ月捕れないこともある。



捕れたら、全身余すところなく
利用する

必要な量だけ、慎ましく、畏敬の念をもって
命を戴く人々の姿は


鯨の保護、捕鯨反対の声が
些少なことにすら
一瞬思えてしまいます。





映画の前半は
生活用水を海水と、原始的な井戸でまかない
塩も海水から作り
電気も最近通ったような生活。

山の民と物々交換する
素朴な集落の日常。

島の民が和を重んじ
助け合い生きていけるような
習わしが数多く描かれます。


効率重視の現代からは
他の方法も思いつくけれど
相互扶助の社会は
ある種の調和で満たされていました。


後半、
様々な思いを胸にしたラマファが
船に乗り

マンタやジンベイザメや
鯨を
身を投げ出すようにして
銛で突く

その鬼気迫る漁の様子は
空撮、水中撮影もあり
肉薄した映像の迫力が凄まじく
息をのみます。


島の人々に対しても
海の生きとし生けるものに対しても

全ての映像が
畏敬の念をもって映し出されていて

これは
日常にはめ込まれた
テレビ画面で観るより


断然、大画面がお薦めです。





なぜ観る必要があるのか?

興味本位なのか?






わかりません。





ただ、この地から見える
ひとつづきの海の向こうで
今もある人々の生き方が
問いかけるものを
自分に残しておきたい。





いつか、ふいに何かが繋がるときのために。

そんな気持ちにさせられます。








息子は夏に手にした『老人と海』に似てるねと言ってました。


確かに。




学校の夏休みの紹介本です。
息子に用意したのは
新潮文庫の新訳。

一番読みやすくて、臨場感ありそうなものを選んだつもりです。
同じ場面でも、翻訳によって迫力が違ってびっくり。


↓名訳といわれる新潮文庫の旧訳。私は好き。



↓光文社古典新訳文庫(図書館で借りました)



↓『羊たちの沈黙』を訳した高見浩さんの新訳





彼の読後の感想

「おじいさんが釣りをして、獲物をサメに食べられた話ね。大変だったね」



ゲロー





まぁ、仕方ないです。
共感、想像できる体験が
ほとんどないのだから。



そんな息子も、『老人と海』の知識は


インスタグラムからお借りしました
くじらびとを夢見る少年エーメンや


インスタグラムからお借りしました
伝説の銛打ち(ラマファ)、ハリ



彼らの生きざまを見て、その内面を、わずかながらも想像する助けになったようです(願望)。





映画『くじらびと』の制作費は
クラウドファンディングでもまかなわれていたそうです。

早い時期から
長きにわたって応援された方々がいてこその
奇跡の映像は
二重の感動を覚えます。
クラウドファンディングに参加された方々にも感謝の拍手を送りたいです。


長く応援されてこられた方に
お薦めの書籍を
教えていただきました。
ありがとうございます。

そのなかの二冊を
急ぎ図書館で借りました。


『くじらの子』

映画の豪華パンフレットのよう。

印象的な場面の
迫力ある写真絵本です。

鯨が大量の血を流す
生々しい場面がないから
手に取りやすいと思います。


とはいえ
映画館には

小学生兄弟を連れた一家や
我が家のような年齢の
親子連れが意外と多かったです。


『くじらびと』は
文科省特別選定映画
に選定されています。


コロナ対策が今よりも緩和されたら
PTAや学校企画で
校内上映される学校もあるかもしれません。
観てほしいな。






『鯨人』




10年前の著作です。


こんな濃密な実話が1000円足らずで
(図書館なら無料で)読めるなんて
この世は天国かと思いました。


石川梵さん

胸まで泥につかったり
喰人種のルーツを探すような
秘境取材で耳にした荒唐無稽な噂をたよりに

鯨漁の情報を探り当て、
取材を始める冒頭のくだりなんて、

彼自身が冒険家なんだと
今更ながら気づかされます。



ほんの少し浜から離れた間に
鯨漁を撮影しそこねることをおそれ

浜の近くでじっと待ち続けます。
期待する場面を撮影するために。


狂気じみた執念が随所に綴られていて
鳥肌がたちました。


撮れなくても、
何年も通い

ラマレラにいない時間に
ダイビングの免許をとり
鯨それぞれの生態を調べ
日本の鯨漁の歴史をひもとます。



そうするうちに
鯨漁の劇的な場面を撮影するだけでは
得られなかっただろう

ラマレラの人々が生きる
鯨文化の豊穣さに気づきます。

念願の場面を撮影したあとも
煮え切らない思いから

海の生き物たちの心の内
海の物語が撮りきれていないことにも気づきます。


『鯨人』は石川梵さんの
フリーランスの写真家としての
成長を描いてもいました。


映画で疑問に思った

漁師以外の生き方を望む場合や
海外の反応、支援についても説明があって
ラマレラの人々が現代を生きているからこそ
失いつつあるものごとや
漁にまつわることを記録する意味についても考えさせられます。




『くじらびと』には
失われつつ変わりつつある姿よりも
今も息づいているものを多く描いていて、
そこに記録として残そうとする石川さんの意志を感じます。




“ラマファ(銛打ち)は自分のためじゃない。
貧しい人、
夫を亡くした人のために鯨と闘うんだ”

これは先祖代々続いている教えなんだ。

船大工で、元ラマファの聞き取りから。






今回の映画化は
ここからさらに10年の歩みを重ねて
制作されたと思うと


やっぱりもう一度観ておきたいと思います。


映画館によっては
石川梵さんがこれから舞台挨拶されるところもあるようです。




















おまけ





10月4日からはじまる100分de名著、
ちょうど『老人と海』をとりあげます。

いつも観ているわけではないです
『3月のライオン』を買った
本屋さんのレジ近くで特集されていたんです。
すごい偶然。


解説の都甲幸治さん、早稲田の大学より大学院の講義の方が多い、おそらく学部生にはレアキャラでは。
著作多数、カルチャースクールでも人気のよう。お得な番組の予感です。

少なくとも
にわかヘミングウェイ学習者にとっては
こちらの冊子は
作品の読み方を指南してくれて
実にわかりやすく面白かったです。


多分、私も今『老人と海』を再読したら、
前よりもずっと楽しめると思います(願望)