はちくりかぁか 再び 旅に出る!

はちくりかぁか 再び 旅に出る!

2020年、ベトナムを離れてから4年。
日本で再確認した「やっぱり海外で教えたい」という想い。
コツコツ続けた中国語を手に、新天地・台湾での生活が始まります。
還暦すぎの「かぁか」の新たな挑戦記録。

嘘みたいな本当の話なんだけど、

つい先日、学校でとんでもない大事件に巻き込まれた。

 

4時間目が始まってすぐ。

時計は4時ちょっと前。

 1年生のクラスでいつものように授業をしていたら、

一人の学生が「先生!」と手を挙げた。

 

 4月に来日したばかりで、日本語はまだ片言。

隣を見ると、隣の席の女子学生が顔を真っ赤にしてうつむいている。

 あれ?泣いてるのかな?と思って「どうしましたか?」と覗き込んだら……

 

顔を上げようとした瞬間、首がガクンと後ろにのけぞった。

……え? 意識がない?!

 

ドラマならここでCMが入る緊迫感。

 私は一瞬でパニックになりながらも、ダッシュで職員室に応援を呼びに走った。

 

駆けつけてくれたネパール人の先生が、彼女の母国語で必死に名前を呼びかける。

でも、ピクリともしない。

 

「救急車!」と頭をよぎったけれど、

新米の自分が独断で呼んでいいのか一瞬躊躇して、

再び職員室へ全力疾走。

私のただならぬ様子を察した教務主任が

「私が救急車を呼びます!」と男前に引き受けてくれた。

 

その間にも、パニックに陥ったクラスメイト数人が、

意識のない彼女を抱きかかえて階段を降りてきた。

ネパール人の先生の迅速な指示で、ひとまず会議室の机の上に彼女を横たえる。

 

周りの学生が「先生、冷たい……」と泣きそうになりながら彼女の腕をさすっている。 

その時、ネパール人の先生がボソッと言った。

 

「……息してない」

 

はあ??? ちょっと待って???

私の脳内コンピューターがフル稼働。 

【息をしていない = 人工呼吸 = 今すぐ私がやる!】

 

「人工呼吸します!」と宣言すると、

背後にいた校長も「お願いします!」と緊迫のゴーサイン。

 私は迷わず会議室の机の上に飛び乗った。

心臓マッサージ。1、2、3、4……8回強く胸を押して

鼻をつまみ、口から息を吹き込む。

これ、彼女のファーストキスだったら、相手がこんなババアでかわいそう・・

なんて不謹慎なことを考える余裕はもちろんない。

 

何回か繰り返したその時。

「ゲホッ……!」

彼女が激しく咳き込んで、顔をゆがめた。息が、戻った……!

 

実は私、高校時代にボランティア活動をしていて、

人形を使って人工呼吸や心臓マッサージの訓練を何度も受けていた。

当時は「こんなの使う日来るのかなぁ」なんて思っていたけれど、

まさか人生の伏線回収がこんな形で訪れるとは。

あの時の自分、Good Job!!

 

息が戻って一安心した校長先生が「お水、飲ませて!」と慌てていたけれど、

意識が朦朧としている人に水を飲ませるのはちょっと難易度高め。

 

とりあえず最悪の事態は脱したということで、ここで教務主任が本領を発揮した。 

「は~い、みなさん教室に戻って~。

先生も戻って授業を続けてください。

もうすぐ救急車が来ますから大丈夫!」

 

……いや、メンタル強すぎない?

 さっきまで机の上で必死に心臓マッサージしてた私の心臓は、

まだバックバクなのに。

この落ち着き、余裕というか、もはやプロの領域。

 

とはいえ、教室に戻ったところで私も学生も授業に集中できるわけがない。

急遽予定を変更して、実用的な「命の授業」を開講。

 日本で救急車を呼ぶときは「119番」にかけること。

 電話口で何を聞かれ、どう答えるべきか。 

これ以上ないリアルな教材(さっきの事件)をもとに、

必死に教えてその日の授業を終えた。

 

幸いなことに、その女子学生はその後大したことなかったみたいで

本当に一安心。

 

いやはや、日本語教師って日本語を教えるだけじゃなく、

時には文字通り「命を救う」こともあるエキサイティングな職業らしい。

私の教師人生で忘れられない一日になった話でした。