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明日につなげる情報箱 【MZ Trade Office.jp】 投資情報ブログ

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新型コロナウィルスの脅威が未だ消え去らない中、東京の人材派遣会社で「職場クラスター」が発生したとのニュースがありました。緊急事態宣言や県をまたぐ移動の自粛要請が解除され、一見、通常の経済活動に戻ったかのように見えますが、未だ新型コロナの脅威が去ったわけではありません。その中で、「職場クラスター」が発生した場合の企業責任について多くの企業が気にされているところだと思いますので、検討しておきます。

 

まず、「職場クラスター」が発生した場合の企業責任としては

1 労災責任

2 安全配慮義務違反としての民事損害賠償責任

がありえるところですので、検討していきましょう。

 

1 労災責任について

通常、「風邪を引いた」、「インフルエンザに罹患した」などは労災認定されるケースはありません。これは、「どこで感染したか分からない」からです(法律的には業務起因性が認められないと言います)。

 その意味では、新型コロナも同じ話になるはずなのですが、今回は特例的に以下の通達が出ています。

 令和2年4月28日「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて(基補発 0428 第1号)」

 これは、新型コロナについて「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること。」として、感染経路の特定が無くても労災になり得ることを認める内容となっています。

 つまり、新型コロナは感染経路が明らかでないケースが多いため、業務起因性の判断においてはこの点を考慮して認定を行うことを意味しています。

 これを前提に、職種ごとに認定度合いが異なるため、それぞれ基準を次のように示しています。

(1)医療従事者等※について

 まず、感染源が業務外であることが明らかでない場合を除いて、医療従事者については原則として労災の対象になります。

 ※患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等

(2)医療従事者等以外の労働者(本稿では「通常の労働者」といいます)であって感染経路が特定されたもの

 医療従事者でなくとも、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合については、労災保険給付の対象とするとしています。

 ※例えば、コロナウィルス感染者が発生した際のオフィスの消毒を請け負う業務は、業務そのものに感染リスクが内在していると言えるため、消毒業務に従事する労働者などが考えられます。ドイツで発生しているとされる食肉処理場のクラスターなどもこれに該当し得る可能性があるでしょう。

(3)通常の労働者かつ、感染経路が特定されていない場合

  この場合でも、感染リスクが相対的に高いと考えられる以下の環境下で業務に従事した場合には「業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断する」とされている点に特徴があります。

(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務

 ※例えば多人数かつ三密の会議でクラスターが発生したようなケース

(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

 ※例えばスーパーマーケットやコンビニ店員、駅の改札業務など

 

 なお、この判断は「新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて」なされるものとされています。

 そのため、例えば会社の業務指示により対面式の会議が開催されたところ、当該会議においてクラスターが発生して、複数の参加者が新型コロナに罹患した場合、労災の対象となる可能性が高いものとなると考えられます。

 企業としては、テレワークの積極的活用等、従業員が業務に際して新型コロナに罹患しないよう、より一層の労働環境の整備や配慮、そして何より、「なぜ対面で行う必要があるか」※の説明を行うことが求められているといえるでしょう。

※すべての対面会議に意味がないと言っているのではなく、なぜ対面でなければならないのか、という点が重要という意味です。

 以上より、対面での職場会議などによりクラスターが発生した場合には、労災認定される可能性が高く、冒頭のケースでも認められる余地があるでしょう。なお、既に医療従事者以外での新型コロナウィルス感染による労災認定は認められている事例があります。

 

2 安全配慮義務違反の企業責任について

  次に、クラスター発生により労災認定がされたとして、企業独自の責任(損害賠償責任など)はどう考えるべきでしょうか。

  まず、注意すべきは、労災認定がされることと、企業が安全配慮義務を尽くしていないとして損害賠償を負うことは別物だということです。労災は正に「保険」として業務に内在する危険が現実化した場合に企業の過失によらずに認められるものです。一方で、安全配慮義務違反の損害賠償については、企業の過失を前提としますから、どれほど企業が対策していたとしても、無自覚陽性者からの感染など、一定程度避けられない感染があり、その場合には、「労災認定されたが、安全配慮義務違反はない」という場合もあります。

 安全配慮義務は結果責任ではなく、過失責任なのです。

 では、どういった場合に、企業の「過失」が認められ、企業の安全配慮義務違反が問われるでしょうか。

 もちろん、まだ判例はありませんが、今回のコロナ問題で言えば、接客においてマスク着用を認めない、顧客を含め「密」を回避する対策を全く講じていない、換気措置を行うことが容易であるにもかかわらずこれを一切認めない、ビニールカーテンやアクリル板の設置を検討すらしない、消毒対策を全く講じないなど、企業側の過失と評価される特別の事情が必要であり、これらが個別具体的に認められる場合には安全配慮義務違反があるとされる場合もあるでしょう。

 しかし、繰り返しですが、労災認定=安全配慮義務違反ではありません。

 リスクを一切排除する、という前提に立ってしまうと、一切の接触を禁ずるべきであるという話になり、それでは経済活動が一切行えないことになります。

 そのため、企業としては、経済活動と両立する範囲で「できる限りの」感染防止対策を、その職場・職種ごとに検討していくことが重要になります。

 政府としては、今後はこの点を明確にするためにも、オフィス活動におけるガイドラインなどを示して安全配慮義務違反の線引きを明確化することが求められるでしょう。

 

札幌弁護士会の高田英明弁護士に聞く

 契約期間が限られる有期労働契約で働く人は、全労働者の3割ほどと言われています。臨時や季節的な仕事で、契約期間が終われば仕事がなくなるようなケースもありますが、契約が何度も更新されて、正社員と同じような仕事をしていたのに突然契約を打ち切られる「雇い止め」も少なくありません。違法な雇い止めに遭った時、どうすればいいのでしょうか。労働法に詳しい札幌弁護士会の高田英明弁護士に聞きました。(聞き手 杉本和弘)

 

雇い止め、解雇、派遣切りとは

――まず、雇い止めの定義について教えてください。

 法律的に雇い止めとは、有期労働契約の期間満了に際して、使用者が労働者との契約の更新をしないことをいいます。本来的な有期契約の場合、その期間だけで労働契約も終わるのが原則ですので、これ自体はおかしなことではありません。契約期間中であるのに使用者が労働契約を一方的に解消する解雇とは違います。

 「派遣切り」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、これは労働者の派遣先が派遣元との契約を打ち切ることをいいます。派遣労働者が雇用契約を結んでいるのは派遣元の方ですので、使用者が契約更新しない「雇い止め」とは異なります。派遣労働者の場合は、派遣元と派遣先との3者の契約状況を把握する必要があります。

 

1年以上勤めていたら、解雇予告は30日前まで

 また、厚労省は有期契約労働者に不利益とならないように、契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準を設けています。主なポイントは

<1>契約締結時において、期間満了後の更新の有無を明示する
<2>更新3回以上や1年を超す継続勤務をしている有期労働者の契約を更新しない(雇い止めする)場合は、満了日の30日前までに予告しなければならない
<3>雇い止めの理由を明示する(更新しない理由について労働者が使用者に請求できる)

などです。

雇い止めが問題になるケースは

――どういう場合に、雇い止めが問題となるのでしょうか。

 先ほどお話ししましたが、基本的に有期労働契約は期間満了によって、終了するのが原則です。ですが、有期労働契約が何回も更新されるなど長期にわたって契約が継続されているケースなどなら、話は違います。

<1>実質的に期間の定めのない無期契約と同様であると評価される場合
<2>使用者の言動などから、労働者が有期契約の更新について客観的かつ合理的な期待を抱くような場合

などは、期間満了での契約終了は労働者にとって大きな不利益となります。そこで、労働契約法(19条)で雇い止め制限の規定が設けられているのです。

 

契約の更新回数、通算期間がポイント

――雇い止めされそうになった時、考えなければならないことは何でしょうか。

 雇い止めが無効になるか否かのポイントは

<1>契約更新の回数
<2>業務の内容が恒常的か臨時的か
<3>雇用の通算期間
<4>更新手続きの厳格さ
<5>使用者の更新を期待させる言動などの有無

などで、これらを考慮して判断されることになります。

 具体的にはケースごとの判断になりますので一概には言えません。

 ただ、この中で比較的重要な要素となるのは<1>の更新回数と<3>の雇用の通算期間です。こうした点を踏まえて、使用者と話してみることが重要です。

 

会社に戻るか、賃金請求か

――実際に雇い止めされてしまったら、何か手だてはありますか。

 違法な雇い止めであれば、会社に戻るか、賃金を請求できます。そのためには

<1>雇用契約書
<2>雇い止めの理由
<3>勤続年数
<4>更新回数の分かる書類などを用意して、使用者と交渉することが必要です。

 ただ、無効か否かは、さまざまな事情を総合判断することが重要ですので、労働法に詳しい弁護士に相談するのもいいと思います。

 

無期契約になれば、雇い止めの不安はなくなるが…

――有期契約労働者が勤め先に申し込みをすることで、期間の定めのない労働契約 (無期労働契約)に転換されるルールがあります。申し込みをするにはどうすればいいですか。

 労働契約法では原則、同一の使用者との間で2回以上の有期労働契約の更新があり、通算期間が5年を超えれば、次の契約から期間の定めのない無期労働契約の申し込みができるとしています。

 ただ、気を付けなければならない点があります。

 同一労働同一賃金の問題ですが、無期に転換する場合、そのまま有期の労働契約が引き継がれてしまう可能性があります。有期契約労働者と無期契約労働者との間の不合理な待遇差は法的に禁止されていますが、無期契約労働者同士の待遇差を明示した条文はありません。

 待遇差を改善する前に無期転換してしまうと、それがそのまま残ってしまういわゆる「ただ無期」になってしまう可能性がありますので注意してください。

 

(北海道新聞記事 参照)

働き方改革関連法により昨年4月に上限規制が始まった時間外労働(残業)について、主要企業110社のうち45%に当たる49社が、前年に比べ残業時間が変わらなかったり増えたりしたことが21日、共同通信社の調査で判明した。業務削減や効率化に取り組むものの、長時間労働など働き方の見直しが進まない実態が浮かんだ。

 今年4月に始まる同一労働同一賃金については、72%に相当する79社が非正規労働者の待遇改善が進むと回答。昨年施行した年5日の年次有給休暇の取得義務化では、63%に当たる69社が「休日取得が増えた」とした。

 調査は1~2月に実施した。

 

(共同通信社記事 参照)