1話完結で物語があって、そこに軸となる物語があるというようなよくある構成ではなく、


ひとつひとつの案件が繋がって、最終的な目的に辿り着いていく、枝分かれした線が集まってひとつの太い線になるような展開には見応えがあって、重厚さをすごく感じていました。



日曜劇場「アンチヒーロー」


先日、最終回を迎えましたね。


よく観よう、聞こう、理解しようと思えば、思う以上に神経を使って、正直、穏やかに観られるような作品ではなかったけれど、

未知の状態で第1話、第2話を観ていた頃をついこの間かのように新鮮に思い出せるくらい、その時感じた衝撃は印象深く残っていて、

話が展開されるたびに、
長谷川博己さん演じる明墨への印象も少しずつ変わっていったし、
利用されている側のようだった、北村匠海さん演じる赤峰や、堀田真由さん演じる紫ノ宮が、強く逞しくなっていくのを見ていると感慨というか、何だか嬉しくも感じましたね。


さて、明墨が逮捕されて、大島優子さん演じる白木が裏切って、ざわついた前回でしたが、
野村萬斎さん演じる伊達原を法廷に誘き出すための最後の大博打だったことを知って

やっぱり、こうでなくっちゃ!と思いました。



吹石一恵さん演じる桃瀬の意志を、明墨とともに継いで、緒形直人さん演じる志水の無罪を証明しようと動いていたのが、
木村佳乃さん演じる緑川だったことも明かされて、

緑川の裏側はずっと伏せられたままだったけれど、仲間だったら良いなと思いながら観ていたので

それは待ちわびた瞬間でしたね。



緑川が伊達原と事務所にやって来た時、ミルが伊達原にひどく吠えたのも印象的だったけれど、

その時に何となく、やはり緑川は明墨側ではないかと感じてから、もしかして桃瀬と繋がりがあるのかなと思えて、
それからは、明墨は外から、緑川は中から、伊達原の不正を暴き、志水の無罪を示す証拠を探しているのかもと、期待していたところがあったので、

伊達原の前で、にやりとして見せる緑川にすごくわくわくしました。


始めから怖い人ではあったけれど、
色々な手を回して明墨を潰そうとしたり、証拠の動画を隠滅する暴挙に出たり、悪行が目立ってくるたび、
伊達原には不快感を抱いていたので

まんまと術中にはまって、明墨の公判で追い詰められる伊達原を見ていると、本当に痛快でしたね。


明墨から「誰もが気付かないうちに自分の物差しで人を裁き、罰を与えている」「人は人を裁くことが快感」だと聞いて、

裁くというのは司法のなかだけではなくて、SNSなど情報化したこの社会においてにも言えることだということをこの言葉に示しているようにも感じましたし、

正義というものの基準は人それぞれで、見方や捉え方によって変わるもので、自分の物差しでそれを振りかざしてはいけないと改めて思いました。


無実の罪で罰せられることはあってはいけないことなのはもちろんだけど、
志水の場合、それで死刑判決を受けていて、

ずっとずっと重い無罪を抱え続けて、心に傷を負い、失った12年間は返って来ないということを思うと
そうさせた罪は何より重いなと感じますけど

色々なものを失っても、一筋の希望を持って、
ようやく再審が決まり釈放され、近藤華さん演じる紗耶と再会できたことにぐっときましたし、

藤木直人さん演じる倉田と紫ノ宮の親子の会話も、心がじんわりとする着地でしたね。

それに、逮捕前の明墨が、岩田剛典さん演じる緋山に言った言葉は自分にも言い聞かせていることのように感じましたし、「必ず生きてください」には重みを感じました。

ずっと志水が冤罪だとしてきた事件の真犯人が誰なのか、そもそも真犯人がいるのかどうかも分からないままで、結局どうなのか気になる部分が残りましたけど、


ラストには、今度は赤峰が明墨に、
明墨と同じ目をして「あなたを無罪にして差し上げます」と言っていて、
ぞくぞくとして、面白かったです。😎