たとえばの話。
「当会場は、ディズニーキャラクターの仮装でご参加ください。」という
ドレスコードのあるパーティーに、急遽参加することになったとしよう。
そして、目の前にはジャファーとミニーのかぶりものしかなかったとする。
もちろん男である僕は、ジャファーに扮するのが筋というものなのだろうが
ジャファーがどうにも好きではなく、あまりしっくり来る仮装にもならなかったために
まぁ、すっぽりかぶる形式だから、ばれないか!と思い、ミニーに扮したとしよう。
いざ会場についてみると「あぁっ、ミニーだ!!!ミニーがいる!!!」という歓声。
こんなに僕を見てはしゃいでいる子の前で
ウンコずわりしつつ「中身変なオッサンだけどね^^」と言い出したら
どんなに人を傷つけることになるだろうか…!
ミニーの格好をしているのだから、ミニーらしく振舞うのが流儀ではないか、と思い
仕方なく手を振ったり、投げキスをしたりして、ミニーらしく振舞う。
ここまでは何もおかしくないはずだ。
これも運命だ。この会場ではミニーとして、演じきろう。
僕にだってエンターテイナーとしてのプライドがある! と
変な発破をかけ、ミニーを最後まで演じきったその時…
まさにその時…
何らかのアクシデントで、急にパーティー会場から誰も出入りできなくなってしまい
「救助がいつ来るかわからないが、食料なら十分ある。」という事態に巻き込まれたら
あなたならどうするだろうか。
続々と仮装を解除する参加者たち。
「ふぅ、暑かったよ。アースラの被り物は。」 次々と中の人があらわになっていく。
まだアースラやジーニーならいい。まだいい。
よりにもよって、ミニーを選んでしまった事を心から後悔するが、もう遅い。
「食料あるし、救助も来るなら、まぁ、いいかーw」と安堵する参加者たち。
「ミニーといっしょだもんね~♪」と明るい笑みを浮かべ、僕の脚にすがりつく女の子。
こんなとき…あなたならどうするだろうか…!
ここもカミングアウトのタイミングではあったように思うが
またしても優柔不断な性格が災いし、ミニーを演じ続けざるを得ない流れになる…。
「僕…いや、私は、みんなの夢を守らなければならないのだ…!」
こうして一人のネカマが、いびつな産声をあげた…。
彼は
男を手玉にとるためではなく
女をたぶらかすわけでもなく
人々の夢を、希望に満ちた世界を
秩序ある暮らしを、安寧なる日常を守るべく
いつわりの、そして、かりそめの肉体を維持せざるをえなくなった…!!
これは、そんな不器用で悲惨な男が
夢を守るためにピエロを演じ続けた
滑稽で希望に満ちた、無謀な記録である。
