そもそもモズと知り合ったのは十五年近く前だ。
当時から有名なスケコマシで、上司や同僚達からも、よく注意する様にと言われていた。
アイツに関わるな。
アイツに近づくな。
アイツと話しただけで妊娠するから気をつけろ。
そんな事もあって、何かこう自然と私からは一線を引く感じで接していた。
だいたい
再会するなりオンナを紹介しろとか
その上
前の女は死んだなどと言ってきた男だ
私が嘘言うなと言えば
周囲に大きな声で
『なぁ?前の女、自殺して死んだよな?』
とか聞いている
コイツ、本当に最低のクソ男だなと思った。
デリカシーとか世間一般常識とかいう言葉では到底太刀打ち出来ない程の外道だと再認識した。
それは付き合っていく内にどんどんと化けの皮が剥げ落ち、ハッキリと正体を現した。
同僚の嫁、元嫁。
友人の嫁、元嫁、元彼。
そう、誰彼構わず、手当たり次第だ。
それを自慢気に私に話してくる。
話すだけならまだしも会わそうとする。
家に連れて行ったり、一緒にご飯を食べに行ったり、遊びに行ったり。
本当にコイツらの神経を疑った。
このオンナ達の旦那や彼氏は知っているのだろうか?
自分のオンナが同僚や友人と肉体関係にあった事を。
辛うじてその中に同時進行の相手はいない様だったが、それにしても、ドイツもコイツも、似たり寄ったりと言うか、同じ穴の狢とでも言おうか、親子丼やら兄弟丼的な事も了承済みなのか、私には理解不能だった。
始まりから何度オンナ問題で喧嘩になっただろうか。
だが、その度にモズは泣くのだ。
泣きながら謝り、優しく強く抱き締め、言い訳にもならない甘い言葉を呟き、その場凌ぎの愛の言葉を囁き、そしてまた泣くのだ。
そんな事を繰り返す内に、私も洗脳されてしまっていたのか、最終的には疑う余地なんて微塵も無い程に信じ切っていた。
100%信じていた。
私は愛されていると信じて疑わなかった。
互いに愛し愛されているという変な確信や自信もあった。
愚かにも、自分は世界で一番幸せ者だとか寝呆けた事を抜かし、この先の人生ずっとこの人と一緒に居たいとか、この人のいない人生などあり得ないとか、戯け事を口にしていた。