【妖怪胴面】妖怪始末人トラウマ【シリーズ中、屈指のシリアス系で悲しく残酷なお話】 | Let's easily go!気楽に☆行こう!

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魔夜峰央ってゆー漫画家、知ってます?

 

代表作の「パタリロ!」や「翔んで埼玉」でご存知の方も多いはずです

 

 

・・・が、漫画家デビューした際はオカルト・ホラーを主に執筆しますが、

 

後に「パタリロ!」をはじめギャグ路線に変更となります。

 

そのパタリロ以前のオカルト・ホラー時代の作品の一つが「妖怪始末人トラウマ」

 

 

「妖怪始末人トラウマ」の中でも屈指の、悲しく残酷なお話として知られる

 

『胴面(どうのつら)』編というのがあるのですよ、ぺんぺん!

 

 

 

主人公の「トラウマ」(←人名。通称トラウマまたはトラちゃん)は、妖怪始末人ギルドに

 

属する下級の妖怪始末人。

まだ小学生だが、親友で相棒の「貧乏神」と共にギルドの指令で悪い妖怪を退治している。

この世界では妖怪は人々から普通に認知されている存在で、

悪い妖怪や心霊の被害にあった人間はギルドに報酬を支払って妖怪退治を依頼する。



さてある日、子供ばかりを狙って食い殺す強力な妖怪「胴面(どうのつら)」が

日本に潜伏しているらしいという情報がギルド日本支部に入る。だが

胴面は人間ソックリに化けることができるためなかなか居所を掴むことができない。



一方、あるマンションの一室では一人の少年が悪夢にうなされていた。

夢の中で少年は幼い子供を追いかけ回し、最後には惨殺してしまうのだ。

今日も悪い寝覚めを迎えた彼はキッチンに下り、朝食になるものを探して

冷蔵庫を開けようとする。が、夢のせいかどうも食欲がわかず、1杯の水だけを飲みほした。



両親はそろって長期旅行に出かけているので、どうせそのことを咎める者もいない。

突然こんな不気味な夢を見るようになってしまったのか理由もわからず、

ひょっとしたら妖怪や心霊と関係があるのかもしれないと考えた少年はギルドに連絡した。



ギルド日本支部から派遣されたトラウマと相棒貧乏神の調査により、

少年の夢に登場したのはみんな胴面に殺された子供たちだったということがわかる。

胴面、あるいは子供の思念を少年がキャッチしているのであろうか、

いずれにせよ少年の夢が胴面を見つける手がかりになることは間違いない。

トラウマと貧乏神は少年の家に泊り込みで調査を続けることになった。



2、3日もすると、少年とトラウマたちも段々と打ち解けていく。

特に、始末人になるために幼くして家族と引き離されているトラウマは

少年を「お兄さん」と呼んで実の兄弟のように親しむようになった。

お兄さんは何だかいい匂いがするね、と少年になつくトラウマ。

一人っ子だった少年もトラウマを可愛がり、またトラウマたちが来てから

例の悪夢を見ていないので相変わらず食欲こそないものの気分の良い日が続いていた。


所変わってギルド日本支部。一人の上級始末人が中国支部から召還されていた。

胴面はもともと中国の妖怪で、その上級始末人は長年神出鬼没の胴面を追っている

いわば胴面の専門家なのである。彼のもたらす情報と助けがあれば胴面退治も

時間の問題と沸き立つ日本支部。



そして次の日。ギルドに呼び戻された貧乏神は、何やら大掛かりな装置を持って

再びトラウマと少年の元にやって来た。装置は件の上級始末人が開発したもので、

これを使えば胴面の居所を探し当てることができるのだという。

貧乏神は装置の操作をしながら、2人に上級始末人から聞いた胴面の特性について語った。


――胴面はただ単に姿を人間に変えることができるだけではない。

人間を殺し、その人間の体と記憶を乗っ取ることができるのだ。さらに巧妙なのは、

人間の姿をしている間は自分に暗示をかけて妖怪としての意識を眠らせ、

殺した人間の記憶を使って、ニセの、人間としての人格を作り上げてしまうことだ。

つまり人間の姿の間は妖怪としての自覚など無く、自分でも自分を人間だと信じて

疑わないのである。

ギルドでもなかなかシッポを掴むことができなかったのはそのためであった。

しかし、手がかりが無いわけではない。

第一に、胴面は子供の肉以外のものは一切食べず、ほかには水を飲むだけだということ。

第二に、子供ばかりを食べているので体からは甘い匂いがするということ――。

少年が見ていた「悪夢」とは、実際に真夜中に本性を表して子供を襲っていた胴面の意識が

人間としての人格にまで漏れ出していたものであり、悪い「夢」などではなかったのである。

そこまで告げられても呆気にとられただ驚くばかりの少年とトラウマ。

一体何のことだ、そんなはずはない、僕は確かに人間だと言う少年に貧乏神はさらに告げた。

――「長期旅行」に出かけているはずの両親の死体がキッチンの冷蔵庫に

詰め込まれていることを。


貧乏神がスイッチを押すと装置から強烈な光のようなものが照射され、

それを浴びた少年は悲鳴をあげながら叫んだ。


僕は本当に人間だ、信じてくれ。トラウマ君、

きみならわかってくれるだろう、僕は人間だ…。


そう呼びかけられてもトラウマは微動だにできなかった。

何故なら少年の顔は必死にそう訴えていたが、光を浴びた少年の腹からは既に

胴面のおぞましい顔が現れて貧乏神に襲い掛かろうとしていたからである。

装置は人間の体に潜り込んだ妖怪をあぶり出すためのものだったのだ。

正体を現した胴面のもとへ上級始末人が駆け付け、胴面を跡形も無く始末した。


ラストシーン。ひなびた露天風呂に浸かっているトラウマと貧乏神。

「お兄さんはね、とっても優しくてね。おにいさんはね、とってもいい匂いがしてね…」

つぶやくように語る彼の瞳には何も映っていない。

「うん。…うん……。」

貧乏神にできるのは、ただただ話を聞いて、頷くことだけだった。
                                          


(終)





※2012年8月11日の記事に加筆し、再掲載しました。

 

 

 

 

 

 

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