願いが叶う『ディザイアーアプリケーション』4 | Let's easily go!気楽に☆行こう!

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映画、写真、B級グルメ、格闘技、そして少しばかり日常を語る雑記帳です。

俺は掲示板を深くは読まずに閉じて、アプリを起動した。

この時に、ちゃんと掲示板を深く、

しっかりと読んでいればあんなことにはならなかった。






アプリを起動し、入力欄に

『アイドルのミカコと付き合う』

と入力。判定はLevel 21。

俺は掲示板の情報にもあった通り、ペットを飼っていないと失う物はない。

という情報を胸に『願いを叶えますか?』の下にあるYesボタンをタップした。

すると赤文字で文字が出てきた。


『<エラー!既にこの願いを実行中の人がいます>』


なるほど。ミカコと付き合うと入力した奴が俺の他にいたってことか。

まあミカコは人気だし仕方ないか。

こういう願いは多数には適応されないらしい。上手くできてるなホント。



んじゃ、これでどうだ!

『アイドルのレイコと付き合う』






と入力した。判定は同じくLevel 21。

『願いを叶えますか?』の下のYesをタップ。


……。お!!

今度はエラーがない!!!


『願いを受け付けました。反映まで1~5分かかります。

Level 21相当の何かが失われました』



1~5分ってはえーな!

店員の時と一緒じゃねーかwww

俺は少し気分があがっていた。

Level 21とはいえ俺にはペットは居ない。

つまり失う物はない。つまり、何も起きない!!



俺はLevel 21~30をこれからやっていこうと思った。

この美味しい情報をトオルに言おうと思ったがヤめた。

俺が手にした情報だ。いつの時代も情弱は損をするんだ。

そう自分に言い聞かせた。


3分ぐらい経った頃だろう。

電話が一通きた。知らない番号だった。

「…はい」

「あ、すいません。私、レイコと言えばわかりますか?」

「えーと、アイドルの?」

「はい!急にお電話すいません。ちょっと今から時間ありますか?」

「ええ、まあ」

「A駅の前で待ってます!」

「え!?」

「ガチャ、ツーツー」



え!?

え!?!?

マジか!本当に叶っちゃったよ!おい!

つか無理やりすぎんだろこれ!

いきなり電話かかってくるって何!?え!?


俺は動揺してるのと同時に服を着替え、

顔を洗い、髪をセットしA駅に向かった。


A駅は俺の最寄駅のためすぐついた。

Desire App、すごく都合がいいな本当に。

さすがはLevel 21ってところか。



駅につくと、改札の前に美少女がマスクをつけて立っていた。

遠目からみてもわかる、完全なる美少女。オーラが違う。

「えっと、電話もらった者だけど、レイコちゃん?」

「あ!初めまして!いきなりすみません。本当に来てくれたんですね」

「まあ、一応俺ファンだしね」

「そうなんですか!ありがとうございます!」

「ってか敬語やめようよ。俺と同い年だよ」


そんなこんなで俺はその日レイコとデートした。

アイドルとデートをしている。

なんという夢物語。

俺は頭の中が花畑になっていた。



帰り道、案の定レイコから告白をされる。

俺は快くOKした。

人生がなんとなく明るくなっている気がした。



…あの光景を目にするまでは。



「じゃあね、レイコ」

「うん!またメールするね!」


俺はレイコを駅まで送り、自宅へ徒歩で帰宅していた。

今日のレイコとのデートの余韻がまだ残っていて

フワフワした気持ちで浮き足立ちながら自宅へ歩いた。



しかし、その途中の踏切で思いもしない光景を目の当たりにする。




「あれ…?踏切降りそうなのにまだ渡り切れてない人いるじゃん」

「っていうか!渡るのかあの人!?止まってるんだけど!!!」


ちょっと待て。


Desire Appのことが頭をよぎる。


Level 21からの失う物の対象は『生物』


もしかして、人間も生物に入るのかよ!



…となると、偶然ではないとしたらあの人物は…!!!




踏切に向かって猛ダッシュした。


近づくとその正体がわかった。

俺の爺ちゃんだった。


早く助けないと…!

このままじゃ…!

カンカンカンカン


待ってくれ!頼む!!!



列車がものすごいスピードで踏切に近づいてくる。

「じいちゃん!!!」

俺は走りながら叫んだ。

じいちゃんは俺と目があった。


その顔は、とても哀しそうな、気力がない顔だった。




列車が踏切を通過した。

そこには爺ちゃんの姿は無かった。

四方にとんだ爺ちゃんの肉片を確認した。

1cm~5cmってところだった。


爺ちゃんはもういない。俺が殺してしまったんだ。



だが俺は、不思議と、悲しくは無かった。


殺した、という事実を淡泊に受け止めてる自分がいた。


俺は家に徒歩でそのまま帰宅した。


なんという感覚だろう。爺ちゃんが死んだというのに

俺には悲しみはなかった。

自分でも不思議だった。

警察の捜査の結果、爺ちゃんは自殺ということになった。

俺は何故かホッとした。

少し、嬉しかったのかもしれない。


そこから俺の何かが狂い始めた。

俺はレイコと毎晩のように会い、そして毎晩のようにエッチした。

自分の欲望のために生きている。そんな実感がした。

人間らしいといえば人間らしいのかもしれない。



俺はいつの間にかアプリの虜になっていた。


この前見た掲示板を深く読んでみると

Level21~というのは自分の周りの生物、

つまり家族や親戚も含まれるということだった。


俺はどんどん願いを入力していた。

時にはエラーになることもあるがそんなことなど気にしてもいなかった。

『レイコと結婚する』

Level 27。

エラーにはならなかった。

そりゃそうだ、俺は今レイコと付き合っている。

つまりこのままいけば結婚という路線もあるはず。

つまりエラーにはならない。

俺はDesire Appのコツをつかんでいた。


ちなみにこの『レイコと結婚する』という願いで

失った物は、婆ちゃんだった。

警察から電話があり、崖から転落したらしい。

事故死となった。俺が殺したのに。

何故か笑えた。

そして数分後、俺はレイコからプロポーズを受けた。

人生がもっと明るくなった気がした。


そしてまた俺は願いを入力した。

『豪邸を建てる』

Levelは29だった。

その数分後、一級建築士数名から電話がかかって

俺は10億相当の豪邸を建ててもらった。

俺は父親を失った。

業者が朝7時頃自宅に訪ねてきて

「毎度ありがとうございます。Desire Appの者です」

とまあ、いつも通りの挨拶のあと、俺の父親に向かって

ピストルを発砲。

頭をブチ抜き父親は死んだ。

俺は何とも思わなかった。業者に軽く挨拶をして、

俺はその家を出ていき、レイコと豪邸に住んだ。


俺の人生は確実に華やかだった。




だがそんな俺も壁にぶち当たった。

レイコの不妊症が発覚した。

真っ先にDesire Appに願いを入力

『レイコの不妊症が治る』

LevelはMAXの31

どうせ家族の残りの母親が死ぬぐらいだろうと思っていた。


現実は違った。


数分後、俺の豪邸に業者が訪ねてくる。


「毎度ありがとうございます。Desire Appの者です」




何故、俺の家に?

俺は疑問で仕方が無かった。

俺の母親はまだ生きてる。母親が死ぬんだろ!

順序的にそれで間違いないはず!



「今回の願いを当方、承りました。

失われるものは、あなた自身です」



俺は意味がわからなかった。

俺が失われるってなんだよ。

おい、どういうことだよ。


俺は業者の胸倉をつかんだ。

「聞いてねえぞそんなこと」

「ええ、言っておりません。

ですが規約には書いてあります」

「…あ?」


業者は規約の印刷した紙を出した。



『<利用規約>

(1)…金銭に関する願いは一回につき、1万円とします。
(2)…金銭に関する願いは一回使用すると一週間は使用できません。
(3)…過去に関する願いは効力がありません。
(例)「昔に戻りたい!」「死んだ母親を生き返らせたい!」等
(4)…Desire Appを使用により発生したトラブルには当方はいかなる理由でも関与しません。
(5)…Desire Appを使用した人は当方の方針に同意したということと判断します。

<利用規約> 終』





「どこに使用者本人が対象になるなんて書いてあるんだよ!!」

「(5)です。当方の方針、というのはLevel31の願いを入力された場合、

使用者本人を施設に移動させある実験の被験者と

なってもらうということなんですよー」


「そんなの卑怯だろ!!!おい!!」

俺は業者が許せなかった。

Desire Appをすぐ起動し、

『目の前の業者が死ぬ』

と入力した。

俺は笑いが止まらなかった。

「お前はバカだから死ぬハメになるんだよ!!おい!!」

俺は笑いながら続けていった。

が、そううまくはいかなかった。

<エラー!!その願いは実行できません!>


「残念でしたね。けどこの女性の不妊症は完治しますよー」


「ふざけるな!!!クソが!!おい!!!お……」


業者は俺に麻酔を打った。


俺は深い眠りについた。




「………い!」


「……おい!」


「………………起きろ!!!!」

「え!?!?!?!?」

目を覚ますと俺はファミレスに居た。

「どういう…?」

「どういうってこっちのセリフだわ!

お前何時間寝てると思ってんだよ!

ぜんっぜん起きねえし!!深夜料金かかってんだよ!」

「え…っと…」

「えっとじゃねーよ!今日お前のおごりだからな絶対!」

ようやく状況がわかった。

とはいえ、トオルが俺に怒鳴りつけている、

という情報のみが判断できる。

「仕方ねーやつだなあ、ホラ、課題やんぞ」

「ああ、すまん。マジで、マジごめん」

何だ、夢だったのか。

きっと夢でよかった。いや絶対に良かったんだ。

俺は狂っていた。欲望に踊らされて、

家族の死さえも笑えていた人間だ。


今考えただけで夢とはいえ恐ろしい。


「この問題わかる?」

「え、ああ、それは、xが…」



俺はきっとこんな平凡な毎日で良かったんだ。

それが一番、俺にとって、

良い毎日っていうやつなんだと心から実感した。

「トオルー」

「ん?何?今更おごりはやめてーとか泣き寝入りなしだぞ」

「いや、そうじゃなくてさ、なんか、良いよなこの平凡感」

「は?なんだよいきなり」

「いや、安心感って重要だと思うんだよね」

「意味わかんねwww」


俺たち凡人は、日々凡庸に過ごしていることに不満を覚えるかもしれない。


けど、それはそれで悪くないのかもしれない。


ましてや、Desire Appなんてもの、無い方が良いんだ。

「リアルな夢だったな…」

「はいはい分かったから課題やれ」

「わりいわりい」


するとトオルが顔を上げて、

唐突に問いかけてきた。





「そういえばお前、スマホじゃん」



嘘…だろ…?





「Desire Appって知ってるか?」







―完






BAD DESIRE F.C.F.