「ヒューマンジー」という触れ込みで話題となった生物が来日した。
その生物の名前は、オリバー君(生年不詳-2012年6月2日)と言った。

オリバーは1960年にアフリカのコンゴ湾上流で捕獲され、アメリカでサーカスの
調教師夫妻に飼われていたところを、弁護士のマイケル・ミラーが購入したと言われる。
購入額は8000ドルで当時オリバーは推定年齢16歳だった。
来日時には身長140センチ、体重56キロ。
オリバーが謎の類人猿とされた根拠は「直立二足歩行をすること」「頭髪が薄い外見」
「人間の女性に発情すること」「ビールを飲み、煙草を吸うこと」などである。
特に染色体の数が人間が46本、チンパンジーが48本なのに対して、オリバーは
47本であることが強調された。
また、オリバーが捕獲された地域では原住民とチンパンジーが共生する風習が
あるとも説明された。
しかし!
後に日本の放射線総合医学研究所における検査でオリバーの染色体は48本で
チンパンジーと同一だったこと、腰椎のレントゲン検査により腰椎の数も
チンパンジーと同じ4個、血清蛋白のパターンもチンパンジーと一致したことが判明している。
( ̄□ ̄;)
1976年7月のオリバーの来日は、興行師の康芳夫の仕掛けである。
康はアメリカで話題になっていたオリバーに目をつけ、所有権を持つマイケル・ミラーと
契約をして日本での興業権を得た。日本中を巡回してまわり、どの会場も満員だったという。
特別チャーター機で羽田に到着したオリバーをタラップから降りさせ、
来日歓迎ディナーショーには正装で出席し、宿泊するのはダイヤモンドホテルの
スイートルームにするなど、オリバーを人間扱いした巧妙な演出は、マスコミの興味を惹き、
連日の報道はオリバーを一躍ブームにした。しかしながら実際には多くのホテルで宿泊を断られ、
檻に入れる条件でやっと客室を確保できた。
このときホテルでオリバーの世話をしていたのがIVSテレビのアシスタントディレクターだった
テリー伊藤である。テリーは糞尿を垂れ流すオリバーに腹を立て、暴力を振るった結果、
オリバーはテリーに恐れをなし、二度と視線を合わせようとしなくなったとのことである。
特に日本テレビでは出演料500万円を払い、1976年7月22日に「木曜スペシャル
謎の怪奇人間オリバー!」と題して、学者らが鑑定分析する模様を放送して
24.1%の高視聴率をあげた。
ちなみにこれを担当したのが日本テレビの社員ディレクターだった矢追純一であった。
ホテルの客室は最上級のスイートルームで、VIP並の扱いをすることにより
話題を盛り上げようとしたが、高視聴率に気を良くした日本テレビはさらに
オリバーの「花嫁」を募集。「オリバーの子供を出産したら1,000万円の報酬が支払われる」
という報奨金まで設定されたため、これに対して数十人の日本人女性が応募する反響があった。
最終的に、無名の19歳のタレント(現在は占い師を営んでいる)を康が個人的に選び、
記者会見まで行われた。しかし、この前代未聞の企画は実現するには至らなかった。
アメリカに帰国したオリバーを待ち受けていたのは、マイケル・ミラーから売却され、
所有者の間を転々として、サーカスや見世物小屋で見世物として扱われる生活だった。
そして、見世物として飽きられてしまった1980年代末になると、今度は化粧品会社の
実験所の1.5メートル四方の小さな檻で7年間を過ごした。
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