2月10日に『インだよ (テスト版)』を
お届けしましたが、
今回はその「読んで聞かせるブログ」の
第2弾!になります。
今回のお話は都市伝説では有名な
「くねくね」です。
今日の記事が、どのような感じに仕上がったか、
この後の動画を再生し、
音声を聞きながら、
文章をお読みくださいますよう
お願いいたします。
なお、携帯からお読みいただいている方も
動画の音声が聞こえなくても
記事をお読みいただけるだけでも、
十分お楽しみいただけるよう
配慮してございます。
それではパソコンでご覧になっている方は
動画を再生し、この先をお進みください。
おばあちゃんの家に帰省した時の話しです。
年に一度のお盆にしか訪れる事のないおばちゃんの家に着いた僕は、
早速大はしゃぎでお兄ちゃんと外に遊びに行きました。
都会とは違い、空気が断然うまい。
僕は、爽やかな風を浴びながら、
お兄ちゃんと田んぼの周りを駆け回った。
そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、
ピタリと風が止んだ。と思ったら、
気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。僕は、
「ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!」と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放ちました。
いっぽうお兄ちゃんは、さっきから別な方向を見ています。
その方向には案山子(かかし)がありました。
『あの案山子がどうしたの?」とお兄ちゃんに聞くと、
お兄ちゃんは「いや、その向こうだ」と言って、
ますます目を凝らして見ています。
僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。
「何だ…あれは。」
遠くからだからよく分からないけど、
人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。
しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。
僕は一瞬奇妙に感じたが、
ひとまずこう解釈した。
「あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?
きっと!今まで動く案山子なんか無かったから、
農家の人か誰かが考えたんだ!
多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!」
お兄ちゃんは、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったけど、
その表情は一瞬で消えた。
風がピタリと止んだんです。
しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。
お兄ちゃんは
「おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?」
と驚いた口調で言い、気になってしょうがなかったのか、
お兄ちゃんは家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきました。
お兄ちゃんは、少々ワクワクした様子で、
「最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!」
と言い、双眼鏡を覗きました。
すると、急にお兄ちゃんの表情が変わりました。
みるみる真っ青になっていき、
冷や汗をかいて、ついには持ってる双眼鏡を落としました。
僕は、兄の変わりように恐れながらも、
お兄ちゃんに聞いてみた。
「何だったの?」
兄はゆっくり答えた。
「わカらナいホうガいイ……」
すでにお兄ちゃんの声では無かった。
お兄ちゃんはそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさまお兄ちゃんを真っ青にした
あの白い物体を見てやろうと、
落ちてる双眼鏡を取ろうとしたんだけど、
お兄ちゃんの言葉を聞いたせいか、見る勇気が無いです。
でも気になる。
遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。
でも、お兄ちゃんは…。
よーし、見るしかない。
どんな物がお兄ちゃんに恐怖を与えたのか、
自分の目で確かめてやる!
僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとしました。
その時、じいちゃんがすごいあせった様子でこっちに走ってきました。
僕が「どうしたの?」と尋ねる前に、
すごい勢いでじいちゃんが、
「あの白い物体を見てはならん!
見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!」
と迫ってきました。
僕は「いや…まだ…」
と少しキョドった感じで答えたら、
じいちゃんは「よかった…」と言い、
安心した様子でその場に泣き崩れました。
僕は、わけの分からないまま、家に戻されちゃいました。
帰ると、みんな泣いているんです。
僕の事で?
いや、違います。
よく見ると、お兄ちゃんだけ狂ったように笑いながら、
まるであの白い物体のように
くねくね、くねくねと
激しく踊っています。
僕は、そのお兄ちゃんの姿に、
あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えました。
そして家に帰る日、ばあちゃんがこう言いました。
「お兄ちゃんはここに置いといた方が暮らしやすいだろう。
あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら
数日も持たん…うちに置いといて、
何年か経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。」
僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫びました。
以前のお兄ちゃんの姿は、もう、無い。
また来年実家に行った時に会ったとしても、
それはもうお兄ちゃんじゃない。
何でこんな事に…ついこの前まで仲良く遊んでたのに、
何で…。
僕は、涙を拭い、
車に乗って、実家を離れました。
じいちゃんたちが手を振ってる中で、
変わり果てたお兄ちゃんが、
一瞬、僕に手を振ったように見えました。
僕は、遠ざかってゆく中、
お兄ちゃんの表情を見ようと、双眼鏡で覗いたら、
お兄ちゃんは、確かに泣いていました。
表情は笑っていたけど、
今までお兄ちゃんが一度も見せなかったような、
最初で最後の悲しい笑顔だった。
そして、すぐ曲がり角を曲がったときに
もうお兄ちゃんの姿は見えなくなりましたが、
僕は涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。
「いつか…元に戻るよね…」
そう思って、兄の元の姿を懐かしみながら、
緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。
そして、兄との思い出を回想しながら、
ただ双眼鏡を覗いていました。
…その時でした。
見てはいけないと分かっている物を、
僕は間近で見てしまったのです。
<【怪奇】くねくね 終わり>
話は、この次の記事につながります。(hiko)
.