再び田母神さんの考え方を見てみよう。
彼の作文に見られるのは田母神さんが「国」というものについて考えたことがない、ということである。「国」には「Land、 Country、 Nation、 State」の4種類がある(江口圭一『日本人の侵略と日本人の戦争観』岩波ブックレット)。
大日本帝国というStateによる醜い「侵略と殖民地支配」の過去を直視し、批判、反省をすることは、日本国というStateのNationとして、「日本という自分の生まれた故郷や自分の生まれた国を自然に愛するものである。』ならば、全く「普通の思想」なのであって「特別の思想」などではない。
田母神さん(に代表される「つくる会」・日本会議などの右翼勢力)は、「侵略と植民地支配」国家=大日本帝国というStateと、「戦争放棄・基本的人権、平和主義」国家=日本国というStateは、「Land、 Country、 Nation」は同じでも、全く別のStateである、ということに対する認識能力が欠落しているのである。下世話な表現をするなら田母神さんは「味噌も○も一緒にする」!? (「味噌」は日本国、○は大日本帝国)ということをしているのである。
日本人が真に「自分の生まれた故郷や自分の生まれた国を自然に愛するものである。』ものなら、この愛する「自分の生まれた故郷や自分の生まれた国を」血塗られた「侵略と植民地支配」国家に貶め、他国の爆撃を招いて310万人もの国民を惨殺させることを許した大日本帝国を憎むのが「自然」なのである。
「日本は古い歴史と優れた伝統を持つ素晴らしい国」だったのに、その「古い歴史」の中の1875年~1945年の70年間「侵略と植民地支配により他国を踏みにじった」という醜い「国」だった大日本帝国という「国」への批判、反省ができないということは、その反省の上に成立した日本国憲法を持つ日本国という「国」を、田母神さん(に代表される「つくる会」・日本会議などの右翼勢力)は愛していない!? ということを意味する。
『日本の場合は歴史的事実を丹念に見ていくだけでこの国が実施してきたことが素晴らしいことであることがわかる。嘘やねつ造は全く必要がない。』
「日本の場合は歴史的事実を丹念に見ていくだけで」この大日本帝「国が実施してきたことが素晴らしいことであること」とは絶対に言えないことが「わかる。」のである。
しかし、「大日本帝国によるアジア諸国に対する侵略と植民地支配」を無かったことにしようとする「歴史偽造」の田母神作文のためには「嘘やねつ造は全く必要が」あるのであって、この1~46までの無知・無恥な「嘘やねつ造」が発明されることになる。JAPNデビューに対して、NHKを盛んに攻撃している連中も同じである。
『個別事象に目を向ければ悪行と言われるものもあるだろう。それは現在の先進国の中でも暴行や殺人が起こるのと同じことである。』
◎「大日本帝国という国State」による「悪行」を、田母神さんは「性格の悪い何人かの日本人の悪行」という「個人」による「個別事象に」過ぎないものに「嘘やねつ造」する。
大日本帝国Stateの侵略と植民地支配の戦争の中で借り出された日本Nationによる「暴行や殺人」が「現在の先進国の中でも暴行や殺人が起こるのと同じことである。」のか!?
大日本帝国という国Stateをあげた侵略と植民地支配の戦争の中での「暴行や殺人が起こる」のと、性格の悪い何人かの日本人による「暴行や殺人が起こるのと同じ」と、いと簡単に断言できる田母神さんは、ここでも「味噌も○も一緒にする」ことをしているといえる。つまり、田母神さんは「味噌と○」の区別がつかないのであり、物事を事実に基づき的確に判断するという普通の判断力が欠落した人物である、ということである。
こんな人物が現・日本軍航空幕僚長として、現・日本空軍を指揮していた!?
『私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない。歴史を抹殺された国家は衰退の一途を辿るのみである。』
◎「輝かしい日本の歴史を」汚した「侵略と植民地支配帝国だった大日本帝国の歴史」を直視し、きちんと自己批判し反省してこそ、『私たちは輝かしい日本の歴史を取り戻』すことができるである。
「本当の意味での鋭い歴史意識、誇りにすべき歴史意識というのは、自己批判以外にありません。自己批判が冷静で、客観的で、勇気に満ちているということは、その個人、その社会の精神的、知的能力の高さです。それ以外にないといっていいほどの証拠です。だから、自己批判の力こそが、誇りの根拠なのです。
自分のしたことについて、悪いことと認めなかったり、いつも弁解したりごまかそうとしているのは、個人であれ、社会であれ、決して尊敬されないし、誇りももてないでしょう。この(扶桑社)教科書は、誇りを持つための方向を明らかに間違えていると思います」(加藤周一『歴史教科書 何が問題か』岩波書店)
田母神さんは「輝かしい日本の歴史を取り戻さなければならない」「ための方向を明らかに間違えている」!
中学生でさえ、この田母神作文のような「嘘やねつ造」による歴史偽造の「輝かしい日本の歴史」作りについて、こう書いている。
「今の僕たちが生まれる前の話だけど、朝鮮の人々が起こした三・一運動の原因を作ったのは我が日本人だった。自国の人間ではない他国の日本人が、自己の利益のみの目的で勝手に他国を侵略してしまったことを、すごく残念に思う。とても悲しいわが国の歴史の一つである。さらに悲しいことは、日本人が何年十年たった今でも、過去の過ちを認めず、『本当の謝罪』をしていないこと。これは一番いさぎ悪く、とても失礼なことだと思う。」
中学生でさえ、日本の知性の最高峰といわれた故加藤周一さんの言われているのと同じことを言っているのである。「日本人が何年十年たった今でも、過去の過ちを認めず、『本当の謝罪』をしていないこと」が、侵略の過去よりも「さらに悲しいこと」だと・・・「一番いさぎ悪く、とても失礼なことだと思う。」と・・・
現・日本軍幹部、現・日本空軍の最高指揮官だった人物が、知的にも精神的にも中学生にさえ劣るレベルだったとは・・・反日左翼だとか、売国奴とか、朝鮮人とか、支那とか書き込む連中にしても、中身は同じなのだ。
この妄言満載集の田母神作文の中で唯一賛成できる文言が、結論の『歴史を抹殺された国家は衰退の一途を辿るのみである。』!!!!! しかり! 侵略と植民地支配の悪行を国を挙げて行った大日本帝国の国家犯罪を無かったことにしようと「歴史を偽造」し、『歴史を抹殺』する『国家は衰退の一途を辿るのみである。』・・・そんな厚顔無恥なことは平和主義・基本的人権尊重の日本国憲法を持つ日本「国」を愛しているならできるはずはない。
歴史ときちんと向き合おうとしない、検証番組の隅をつついて捏造だというのはそっくり批判してきた連中のことばは、そのままお返しすると言いたい。