S・S・ヴァン・ダイン:ドラゴン殺人事件 | no mystery, no life

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本を気ままに紹介。

ドラゴン殺人事件

 

ヴァン・ダインによる作品。

 

マンハッタンにある広大な敷地インウッドでは、知人を集めたとあるパーティーが開かれています。

インウッド(スタム家)の当主であり著名な養魚家のスタムは、飲みすぎてつぶれています。

スタムの友人たちは、酔い覚ましに天然プールで泳ごうとしています。

率先して飛び込んだのが、モンタギュと呼ばれる青年です。

モンタギュは絶世の美男子であり、またスタムの妹バーニスの婚約者です。

元来目立ちたがりやなモンタギュが率先して、飛び込み台から飛び込みますが、そのまま行方不明になってしまいました。

死体も見つからず、かつ生きているとしても行方がわかりません。

 

そんな折、モンタギュの親友であるリーランドヒース部長に連絡をします。

インウッドを訪れたヒース部長は、何かしら言葉では説明できない不気味な雰囲気を感じ取り、マーカム及びファイロ・ヴァンスの助けを得ようとします。

現場に訪れたマーカムとヴァンス。

超現実主義者のマーカムは、単なる事故死かもしくは失踪者扱いにしようとしますが、ヴァンスはただならぬことが起きていると踏み、捜査に着手します。

 

モンタギュがいなくなったプール(通称ドラゴンプール)を捜査したヴァンスらは、不思議な光景を目にします。

それは、プールの底には

大きな蹄のあとらしいまごうかたない足跡

伝説の怪物の三つまたの爪あとともとれる無数のしるし

があったのです。

その発見は周りを戦慄させました。

なぜなら、ドラゴンプールにはドラゴン(竜)にまつわる伝説があったのです。

 

「あれ(ドラゴンプール)は、竜のすまいだからじゃースタム家のものの命と財産を守る、古い水竜なのじゃ。わたしの家族に、なにか危険がせまると、竜が怒って立ち上がるのじゃ」

 

ドラゴンの伝説をヴァンスたちに話した、スタムの母マチルダは、さらに不吉な予言をします。

 

「竜は死体を持って行ってかくしたのじゃよ」

(中略)

「死体を見つける?プールで、あれの死体を見つけるといわれるのかい。

見つからないよ。あそこにはない」

 

マチルダの謎めいた言葉を手がかりにヴァンスたちは死体の捜索にあたります。

 

そして予言どおりプールでは一切見つかりません。

しかし、ついに竜の隠し場所を見つけました。

モンタギュは、まるで竜に殺されたかのように、見るも無残な形です。

本当に伝説の竜がモンタギュを殺したのか?

それとも伝説を利用したずる賢い人間の仕業なのか?


no mystery, no life-ドラゴン

 

↑ う~ん。ひどい(笑)

 

ネタバレ感想

 

ドラゴンが前面に出すぎています。

 カーの雰囲気なら良い効果をもたらすのでしょうが、ヴァン・ダインの雰囲気にはそぐわないです。

 ドラゴンが非常に浮いてしまっているのです。

 

結果として、ヴァン・ダインが何をしたいのか分からない作品となってしまっています。

ドラゴンのような空想動物と、ヴァンスの心理的探偵手法がかみ合うはずもありません。

 (これは、カーの領域ですよ)

 

機能していないことが、ヴァンス自らある意味暴露してます。

「それに、今夜は暑すぎて、ぼくの精神的きまぐれの心理分析を試みる余裕がない」 ・・・。

よってヴァンスである必要ないです。

 

謎を解く秘密の鍵も 「簡単にいってしまうと、鍵についてのぼくの思いつきも、当てずっぽうだったんだ」 ・・・。

作品として機能していないどころか、探偵としても機能していない。

なんとも、残念な発言です。

 

犯人の意外性も皆目ないです。

主要人物の1人が、全くアリバイがない。 そして、犯人の怪しい動き。

加えて、犯人を庇おうとしている人物が庇いすぎで逆に不自然です。

庇って庇って創作するほど、その人物は犯人について何か知っていて、捜査をかく乱させようとしているんだなぁ・・・と読めてしまいます。

非常に残念な結果です。

 

総じて、ヴァンスらしい作品ではないです。

ヴァン・ダインの力が衰えているのか、そもそもつまらないのか。

一読で十分です。