白百合さんをこんなところまで連れ出しといて、帰れないなんて
どうにかせねばとものすごーく焦る私。
門から一旦出て、まわりを見渡してもバスもタクシーも通っていない。
うっそうとした森の道を歩くと30分もかかって、おまけに小雨が降っている。
連日のハードスケジュールでお疲れの白百合さんをそんな危険な道へと
導くなんて、私にはできないずらー。
ふと道路を見ると、何台もの自家用車が通り過ぎていく。
私は思った。
ヒッチハイクをしようと。
生まれてこのかたヒッチハイクなんて経験ないもんだから、どの指をあげれば
いいのかわからない。
小指はへん? 中指もへん? 人差し指はもっとへん?
そうだ、親指にしよう。
こういうときは親指だーとちょうど通りかかった車に親指をたてて
見せてみた。
しかし、止まってくれない。
白百合さんに 「ねぇ、こんなときって親指でいいよねー」と振り返ると
白百合さんは困った顔をしている。
私、まずいことでもしたのかなぁー、どうしよう? とふと馬の博物館方面を見ると
なっなんとバスが来ているではないかっ。
きゃゃゃゃゃゃーバスよ、バス
。
私は思いっきり五十肩で上がらない腕を振った。
バスのドライバーは私達の後方を指差した。
ええっーどういうことと振り返ると、10メートル先にバスストップがあった。
はぁぁぁぁぁーもう涙がでそうよ。
私達は折り返してきたそのバスに乗り、無事にシャンティイ駅まで行くことができた。
そのバスは駅とシャンティイ城を巡回しているバスで無料。
地元の人も結構乗車していた。
そんなこんなで私は人生初のヒッチハイク未遂を体験したのだった。
後日、息子と車に乗って国道を走っていたら、「○○方面」と書いた大きい紙を
持った男性がヒッチハイクをしていた。なるほど、あんな風にすればよかったのかーと
思っていたら、息子が「あんなことしたくないな」と一言。
私は、シャンティイでのヒッチハイク未遂のことを生涯息子には言えないなと
思ったずら。