「消えたカラヴァッジョ」
ジョナサン・ハー著
図書館の美術専門書の棚で見つけたこの本。
本の表紙カバー折り返し部分に
イタリア・バロックの天才画家、カラヴァッジョ。
1990年その真作『キリストの捕縛』がアイルランドの
教会で発見された。十七世紀はじめローマで描かれた絵が
いったいどうやって、パトロンの手から離れ、遠くかの地
に眠ることになったのか? それは本当に真作なのか?
権謀術数うずまく現代ヨーロッパ美術界を舞台に、”聖なる
人殺し画家”の数奇な生涯をたどりつつ、カラヴァッジョ絵
画最大のミステリーに迫ったノンフィクション。
カラヴァッジョの絵があるというだけで、その美術館の入場者数が
桁違いに多くなる。
どの美術館にとってもカラヴァッジョの絵は至宝なのだ。
1990年アイルランドの教会で発見された一枚の絵を
無名の修復士が信念に基づいて世界に発表する。
それに至るまでの真正性を証明する過程、そして同時期に
来歴調査をしていたローマの女子学生によるカラヴァッジョの絵に
関する古文書の発見・・・・
これら実在の人物による
実際の記録が物語風に生き生きと描かれている。
絵の来歴調査、なんと根気のいる作業だろうか。
来歴調査は財産目録、古帳簿などの山の中から、運が良ければ
たった数行に満たない記録を見つけ出せるという気の遠くなるような
仕事。
またこの仕事には「ひらめき」と「推理」も必要だという。
修復士の仕事もかなり根気と絵画に対する情熱がいる。
美術館に足を運んで、お気に入りの絵を楽しむ、
これには、たくさんの人の手がかかっているのだと
あらためて感じ入ったのである。
次回からは、このことを念頭において鑑賞するずら。