先週の日曜日に見に行った展覧会は
国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア
しかし、実物は小さい絵にもかかわらず、この看板よりも
存在感があり、見る人を惹きつけてやまない絵だった。
イワン・クラムスコイ 「忘れえぬ女」
19世紀ロシア絵画で最も人気のある絵。
女性の一心な眼差しに戸惑いながらも、目をそむけることができない。
内面から出る強い意志が瞳を一層強く輝かせている。
この絵のモデルは今もなお謎のままであることも、この絵の
魅惑の一因かもしれない。
ロシアの19世紀後半社会的背景を重ねると、女性の社会における
地位が確立しつつあったこの時代に描かれた絵のモデルは
ロシアに住む女性すべてかもしれない。
一人の人間として、プライドを持ち、生きていくことを願った
画家の思いが私には伝わってきた。
そして、もう一人クラムスコイが描いた女性がいる。
クラムスコイはこの絵を展覧会には出品せずに、アトリエに置き
一般に公開されたのはクラムスコイ回顧展の時だったそうだ。
心ここにあらず、どこか遠くを彷徨っている少女の目は無防備で
何か心の悩みにうち沈んでいるように見える。
「忘れえぬ女」とは全く違う表情に、クラムスコイの奥深い観察力に
偉大な画家とは心理学者のようだと感心したのであった。
眠る子どもたち
粗末な小屋の床にムシロを敷き、その上には黒ずみ擦り切れた布一枚だけ。
貧しい生活の中の、短い安らぎの時間、差し込む月の光が
せめて楽しい夢をと励ましているかのようだ。
美術館でこうした子どもたちの絵を見るたび、心がせつなくなる。
国会評議員
レービンは「ロシアのレンブラント」と呼ばれるほど肖像画で
すばらしい絵を残している。
人物の内面までもを描ききった巨匠なのである。
どの絵も写実絵画ではあるけれど、その絵を見ていると
このモデルはどんな人生を歩んだのだろうと興味がわいてくるほど
心の奥深く描いているのがわかる。
レービンはパリに留学生として滞在したことがある。
フランス印象派を思わせる絵は、家族にたいする愛情があふれている。
この時期のレーピンはとても幸せだったのだろうなぁ。
そんな優しい思いが伝わってくる一枚だった。
「修道院の宿舎にて」
あまり触れることがなかったロシア絵画。
今回の展覧会で、ロシア人の生活の絵に
自然とともに、今を受け入れながら、懸命に生きる姿が印象深く
心に沁みた。