ケーキを買って、妹宅へ行く。
時間は午後3時30分
甥が今やっと起きたらしい。
いつもより背が高く感じる。
やはり寝る子は育つのだろうか。
でも、妹は「今、起きたばっかりだからよ」
う~む半日でも起きていたら、縮むのかなぁと
よくわからない妹の持論に疑問をもつ。
ケーキを食べながら、世間話をする。
妹は最近悩んでいるらしい。
いや、この悩みは周期的に何度か聞いている。
職場で皆とおしゃべりしているときに
気が利いたこともしゃべれないし、
お世辞も言えない。
私がいることで皆、息が詰まるんじゃないかと
心配しているのだ。
「そんなことないよー。ずっと前からそうだったじゃない。
まわりの人はそういう人って思っているよ。
そして、それが普通になっているから、何にも思ってないよ」
そもそも私達、双子は生まれた時から常に一緒だった。
姉である私は妹の分までしゃべってきたのだ。
妹はそのせいで、話すことを姉に任せ、ますます話すことが
苦手となったのだ。
妹の悩みの元凶は姉である私にある。
今更、過去に戻って、私が話す機会を妹に譲ることはできない。
私は精一杯、慰めの言葉を思いつくまま並べる。
「口は災いのもと」「物言えば唇寒し秋の風」
「沈黙はきん」
そこで妹から物言いがあった。
「お姉ちゃん、沈黙は禁でしょ、やっぱりだめじゃん」
へっなんですと
禁じゃなくて金だよー。
妹はずっと「禁」だと勘違いしていたらしい。
なんともトホホなオチに涙目の妹も
大笑いしたのであった。