薬をもらいに、いつもの病院へ行く。
この日、主治医は不在。
代わりに「おじいちゃんセンセ」が診察してくれる。
おじいちゃんセンセの家は、私の家から徒歩10秒。
私の祖父の主治医でもあった。
そして、息子がおちびの時もおじいちゃんセンセに診てもらった。
何年か前に身体を悪くして、病院を閉めてしまったのだ。
今はこの病院で毎週水曜日の午後診察を受け持っている。
主治医は自分の診察日に、なるべく来るようにと私に言うので
最近は、おじいちゃんセンセの姿を見かけることがなかった。
診察室に入ると、背中を丸めたおじいちゃんセンセが座っていた。
私 「あれぇーお元気そうですね。具合いかがですか?」
センセ 「わしね、今ぜんぜん薬飲んでないよ。元気でしょ。
どう思う? 」
私 「すごく顔色いいですよ。お元気になられてよかった」
センセ 「ありがと」
はて 私は患者のはず。
なんか変ずらね、この会話。
看護師さんが、私がいつも処方してもらっている薬を紙に書いて
おじいちゃんセンセに、これをカルテに書いてくださいと
指示をしている。
センセ 「こうのとりさん、この薬、効く?」
私 「ええ、効きますよ。センセもいかがです?」
センセ 「わし・・・・・大丈夫」
診察室を出る時、「センセ、お身体お大事になさってくださいね」
おじいちゃんセンセは嬉しそうに頷いてくださった。
主治医の言うことを聞かずに、これからも水曜日に病院に
来ようかと、秘かに思ったのだった。