詳細結果

プロトコル

 

しかし、大惨事といっていい大会になりました。ジャンプミスがなかったのは2位の璃士くんだけです。鍵山くん、壺井くんともにステップアウトと、軽微とはいえミスがあります。あとは転倒の嵐...ここまで転倒だらけの全日本ってあったのだろうか?と首をひねっています。

 

1 鍵山 優真 オリエンタルバイオ/中京大学 24 205.68 (111.70 93.98)

 

4F 4S 4T3T 3A1Eu3S /4Tso 3A 3F2Aso

 

おっと、先日まで苦労していたのがうそのように冒頭の4Fが美しく決まりました。5つけるのはさすがにどうかと思いますけど、GOE3~4の価値は十分にありそう。後半になってステップアウトが混じったジャンプがでてますが、ジャンプミスはそれぐらいでしっかりまとめました。後半つかれたのか、CCoSpはレベル3だったとはいえ、他のスピンはレベル4をしっかりとりました。また身体が柔軟なので見応えあるんだ。だけど、今回の演技で一番よかったのはステップシーケンスでしょう。GOEで5がずらりとならんでいます。異存ありません。3:27ぐらいでしょうか。たしかな足下、音をきちっととらえるのはもちろん、指先、腕、身体や頭の角度まで緻密に動かされていて、非常に見応えのあるものになってます。

 

また、振付師の聡明さをかんじずにはいられません。ローリー、さすがです。

 

「フラメンコ」プロって、むずかしいです。フラメンコって独特のリズムのとらえかたがあって、それを守って音にのらないとフラメンコの踊りじゃないんですよ。リズムのお約束ごとにのることで、音楽の演奏者(歌い手がトップで、通常、ギタリストがつきます)、パルマ(手拍子。パーカッションの役割をしていると思ってもらうといいです)、踊り手が一体化してパフォーマンスをみせます。日本だと踊り手が一番上のように思われがちですが、実は一番えらいのは歌い手。それからギター、パルマ、そして最後に踊り手という順位じゃないかと。で、曲種(ワルツとか、マーチとかいうようなのと同じと思ってください)というやつがあって、それさえ合意されていれば、具体的な曲はやるたびに変わってしまうことが多いし、曲の長さはそのたびそのたびに変わります。本来ならね。合図を送り合って変更していくんです。そこに自由さがあるし、生の面白さと協力関係の醍醐味がでてきます。

 

もちろん、フィギュアだと曲も振り付けも変わりません。とはいえ音の乗りかた、っていうのはフラメンコ独特のものであることが多いし、それをあえて無視すると何か違うだろ、っていう気分にもなってしまう。ですから、ナハロというフラメンコアーティスト以外が振り付けたものってなにかちがうぞ、とフラメンコマニアは思うわけです。

 

その点、今年のフラメンコプロは優秀です。璃士くんのSPが違和感なかったのであれ?と思ってたら、なんとナハロに監修をお願いしたというものでした。振り付けはミーシャ・ジー。チェックを依頼したということは、ナハロのフラメンコプロとそれ以外の振付師のものとのちがいに気がついていたわけですね。ミーシャに拍手喝采したいです。

 

で、このローリーのプロなんですけど、違和感ない音の乗りになっています。ポイントは、次の2点じゃないかと。

 

1.フラメンコでしかありえない音の乗り方ではないけれど違和感はかんじない振り付けになっている 

2.フラメンコプロではあるけど、これはあくまでフィギュアスケートのプロだということをしっかり意識した振り付けになっている

 

手拍子だとかたしかにフラメンコ独特の動きははいってます。だけどほんの一部で、後はフラメンコではありえない動きのオンパレードです。だけどしっかり音楽にあわせた振りとなってまして、音の盛り上がりとともに振り付けも盛り上がるというもの。

 

とはいえこの振り付け、GPSではここまでよいと思いませんでした。今回はパフォーマンスそのものがよかったというのがなんと言っても大きいです。音にのった勢いのあるすばらしいパフォーマンスでした。

 

それにしても毎年、良くも悪くも器用な選手だなあとつくづく思ってしまいます。何をやってもとりあえず納得できるパフォーマンスができるんですねえ。

 

とはいえ、点数的には不満をもっています。PCSが3点制になって、5点制にくらべて、鍵山くん、坂本さんと妙に高い選手がでていると思ってます。

 

2021年全日本の羽生くんとくらべてもらうといいです。

 

2021年の羽生くん

SS 9.61   TR 9.61 PE 9.68    CO 9.79   IN 9.71

 

今回のFS、鍵山くんは CO 9.36 PR 9.36 SS 9.50

坂本さんのSPは CO 9.29   PR 9.36 SS 9.36  (大きなミスがないかぎり、FSでは上がるはずです)

 

何せ項目が減っているので単純にはくらべられないです。PEとINがPR担ったと考えたらいいんですかね。TRはSSなのかCOなのかどちらかなあ??? 

 

たしかに今回は羽生くんよりは低い点数となってます。だけど二人のうちのどちらだったか、9.6ほどでてたのをみたおぼえがあります。

 

ちがうだろ、って思いません?

 

SSあるいはCOが9点台になるのはわかるのです。鍵山くんと坂本さんの二人、氷面の活用、という点では今の選手の中でずばぬけているのじゃないでしょうか。

 

だけど、

 

坂本さんのスケーティングは太ももがせまってくるようでいまだに身体がひくのがわかりますし、スピードと表現がむすびついておらず、単に(ジャンプのために)とばしているスピードスケートのようにみえるので、個人的にはパスですが、それでも9点程度の評価がくるのはわかります。カバー面積がずばぬけてます。だけど、スピード以外、フィギュアスケートとしての滑りそのものの質はいいのかなあ???繊細な図形を描くのがフィギュアでは。あと、PRが9点台はありえますまい。以前よりもあがったかもしれないけれど。なぜPCSの全項目が同じような点にならないといけないって思い込んでるんでしょうね?

 

女子はロシア勢がいなくなり、レベルそのものが落ちていますよね?ジャンプの難度はあきらかにそうですし、図形を描くというフィギュアスケートの性質を考えた上での滑りの質、曲解釈と表現などは大きく落ちてませんか。それから目をそらせるために、WCなどで勝ち続けている坂本さんのPCSを高くして女子のレベルは前と変わらないという印象をあたえようとしているのか?などとうたがっています。いわゆる伝統的な女性プログラム(要するに色気を感じさせるタイプのやつ)ならPRをここまであげるのか、なんて感想もってますし。もちろん、勝手にそう思っているだけの可能性は高いです。だけどあまりに点数に根拠がないのでは。

 

SPの結果をみて唖然としてます。麻央ちゃんはもちろん、百音ちゃん、若葉ちゃん、祐奈ちゃんと1点も差があるほどのものですか?たぶん、WCに向けたデモンストレーションでしょうねえ... 

 

坂本さんよりは鍵山くんの点数のほうが納得いくのですが、それにしても高いです。羽生くんに迫るほどのものか?というのが根拠なんですけど... 

 

鍵山くんの場合、実に柔らかい膝が滑りをプッシュしているところあると思うんです。思わず見てしまうところがあります。でもね、ジャンプの前の滑りみてください。単純なクロスが多いです。ジャンプの後も特に工夫はないことが多いです。カバー面積はすぐれていますけれど、これだけで、旧採点ならTRが低いのは容易に想像できますよね?2021年は8.93となってます。これでも高いような気がするけど... 

 

おそらく一番の問題は、PCSの採点にまともな基準がないということなのでしょう。ネイサンの点数以来、PCSって、実際の演技のレベルを反映しているのではなくて、順位の操作に使われてしまっているのじゃないかとずっと疑っています。

 

いっそのこと、PCSを機械判定したらどう、と思ってます。SSはできるのじゃないかしら。スピード(単に速度だけでなくて緩急もいれる)、カバー面積、エッジの切り替え、トランジションの数と難度あたり、機械ですぐだせるはず。PRは難しいかもしれないけど。

 

鍵山くんが今のフィギュア界でトップレベルなのは疑いようがありません。そしてどれが足らないという要素もない。表現も実に器用というか、どんな曲でもこなしているイメージがあります。その一方で、これは絶対に鍵山くんでみたい、という要素も少ないのじゃないかしら。サルコが好きな人なら4Sは楽しみにしているかもしれませんが、あいにくサルコは個人的にそんなに興味のあるジャンプではないのです。平均的になんでもできる優等生みたいに思ってて、誰がなんといおうと自分は鍵山くんでこれがみたいとかいうのがありません。また、こういう演目をやってほしいというものもありません。

 

とはいえ、今シーズンは解釈と表現に複雑味がくわわってきているように思えるので、楽しみにしていきたいです。文句なく、お気に入りのスケーターといえる日がきますように。