前回書いた
I. バレエやっているけど、所作が美しいとも、表現力があるとも思えないスケーターがいるというのはどういうことなのか
について書いてみます。
いますでしょ?こういうスケーター。
よくわかるのがロシアの男子。どう考えてもバレエやらされているだろ、という環境で育てられたはずです。だけど、いったい何をならったのだ、というスケーターはけっこういませんか?ロシア選手権レベルの女子のほぼ全員がバレエの基本を身につけています、というのがちょっとみるだけでもわかるというのに、男子は全体をみると、なに、これ、みたいなかんじではないですか。
姿勢はまあいいです。肩があがるとか、お尻がつきでるとか、そういう気になるクセはないように思います。いや、そもそも姿勢が悪いと、伝統的なフィギュア強国で国内最高峰の選手権にでられるほどの滑りの能力は到底みにつかないか。
音楽無視ともいいません。よくきいていて音楽を表現しようとしているとは思えなくても、ジャンプにむかうとき以外はおおむねリズムはあってます。
でもロシアのペアだとかアイスダンスの選手って、男子も所作はきれいです。ペア技もしっかりバレエで身につけているのじゃないかしら。国際大会にでないような選手でも、安心してみることできますもん。
つまりバレエをやってるはずなのにできていないのは、シングルの選手、ということになります。
この現象はずばり、
・そもそものバレエの習得レベルが低い
というものじゃないでしょうか。同じように練習したって習得レベルは、練習をするかどうか、もともとの体格・体質、観察眼をふくむセンスで大いにちがってきますでしょ?
これはダンスのレッスンをやったことがある人ならすぐにわかる現象じゃないでしょうか。同じレッスンを受けていても、明らかにうまいん人といまいちな人と別れるでしょ?それと同じことです。
ロシア男子はかなりバレエレッスンを受けさせられるはずですから、やってない人にくらべると、地力は身についているはずです。おそらくバレエのレッスンのときに注意しまくられたらそこそこの所作でできるのでしょう。だけど、なんとか身につけた技術を氷上にもっていくことができていない人がかなりいる、ということです。
こうなってしまうのは、おそらく、シングルはジャンプができるかどうかで選別するからじゃないでしょうか。おそらく2Aができるかどうかで線引きされるのでは。それから特に男子の場合、将来4回転をとべそうかどうかもポイントでしょう。
ロシア女子の場合は、ジャンプで選抜したとしても、バレエの習得レベルは一定以上といっていい。競争が激しいせいでしょう。それと、ロシアであってもバレエ好きはそもそも女子のほうが多く、熱心に練習するのかもしれません。
ロシア男子の場合は、シングル希望者はジャンプは好きでもバレエは好きでない、というのが多いのかもしれないです。滑るのも踊るのも好きだけどジャンプは苦手というタイプはおそらく容赦なくアイスダンスにまわされるのでしょう。そこそこ飛べるけれど将来4回転とべるとは思えない、というタイプは、体格の問題がないかぎりペア、ということかな。
おかげで、ジャンプをとぶのに必死になって、せっかく覚えたバレエのテクニックをいかすことができない状態ができあがるのじゃないでしょうか。
あとですね、当然ながら、すぐれたバレエの技術があればフィギュアスケートができるってものじゃないですよね?そもそも、床と氷は体重のかけかたやバランスのとりかたがまるでちがいます。手の動きにしたって、バレエではまずありえないぎゅっと絞る動作がフィギュアのジャンプでは必要ですよね?
大切なのは、スケート技術を向上させた上で、バレエの技術をうまくとりいれる、というか、スケートと融合させることです。それができるかどうかも、大切な要素のはず。アイスダンス、ペアはリフトの関係か、バレエ要素がみられる選手が多いですが、シングルはこれが難しいのじゃないでしょうか。
もっともシングルのスケーターでも、バレエの習得レベルがすばらしく高いと、それをあっさりとやってのけています。バレエの所作が呼吸をするかのようにでてくるし、バレエバレエしない動きに変更させて曲表現することも可能。
フィギュアスケーターの中には、そういうレベルの人がいます。
経歴をみるだけでもわかるのが二人。
ロイヤル・バレエ学校の卒業生で、ロイヤルバレエ団に入団を請われていたロビン・カズンズ(レイク・プラシッド・オリンピックの金メダリスト)と、カナダ国立バレエ学校から入学許可をもらっていたジェフリー・バトル。
二人とも、バレエ的な動きのみならず、どんな音楽でも自在にあやつり表現する能力をもってます。バトルはいまや売れっ子の振付師です。
カズンズも振り付けをやったはず。自分の振り付けをすべってたのじゃないか、と思えるのを少なくともエキシでやってました。マイケル・ジャクソンのオフザウォールが発売された年に、エキシで滑ったんですよ!
詳しいバレエ歴は知りませんが、どうみても熱心に練習していたにちがいない、と思えるのがランビエール。改めて検索をかけてみると、「以前なぜクラシックバレエの方向に進まなかったのかと少し後悔したことがありました。」という発言してます。やはりねえ。バレエダンサーでも成功できたはずです。先日のFOI、ソロもシゼロンとのコラボ(うう、感想を書き損ねてしまいました)も最高でした。どれも、バレエのテクニックを土台に、アーティストの感性をみせつけてくれるものでした。
一方で、「ポエタ」みたいなフラメンコ作品も捨てがたい。というか、現役時代の演技で一番好きかも。フラメンコを使ったフィギュア作品はけっこうありますが、ホントにいいフラメンコ作品をやったのはアニシナ/ペーゼレ、ハビとランビだけじゃないかな。みな、,元フラメンコダンサーでスペイン国立バレエ団芸術監督だったナハロの振り付けというのが暗示的です。結局、振付師がフラメンコを理解してないということなんでしょう。
現役時代もすばらしいアーティストでしたが、芸術度、という点でみれば年々あがっているのかもしれません。あと何年、すべってるのをみることができるやら。それだけが気がかりです。
また書き足すかもしれませんが、いったんアップしますね。