結果 

1    Mao SHIMADA    JPN    218.36    
2    Jia SHIN    KOR    212.43    
3    Rena UEZONO    JPN    194.70    

SP詳細結果
SPプロトコル

FS詳細結果
FSプロトコル

今年のJWCは全体的には低調だったのではないでしょうか。

ジュニアからシニアに参入したとたん、台風の目になる選手ってけっこういます。

が、今回の大会、男子、ペア、アイスダンスと、シニアにあがったとしてシニアの壁にはじきかえされますよね。この大会、男子の優勝選手のスコアが230.75、ペアが179.32、アイスダンスが169.76でしたが、昨年のWCの基準でいくと、男子は18位と19位の間、ペアは11位と12位の間、アイスダンスは15位と16位の間でした。昨年の優勝スコアとくらべても男子は33.99点、ペアは4.15点、アイスダンスは7.6点下がっています。

ペアとアイスダンスぐらいの差であれば、たまたま調子がベストでなかっただけ、といえないこともないかもしれません。

が、男子の点数になると...4回転にいどんだのは8人(6人が4Tで4Sが2人)、うち、プラスをのこせたのは4Tをとんだ3人(ただし全員他のジャンプミスがあり、表彰台に届かず)という状況です。

男子は4回転時代の真っ最中です。安定してとべる4回転がないというのはどうしても苦しいです。今年はレベルは高くなかった、と結論づけてもしかたないのでは。もちろん、ジュニア特有の制限があるので、ジュニアの点数は低いです。だけど、それをさしひいても、今年の男子は厳しい結果といっていいでしょう。

一方、女子は1位218.36と2位212.43と200点ごえが2人います。3位もSPで大きくつまずいたからこそ194.70にとどまりましたが、200超える力はあるようにみえました。実際、要素が増えたとはいえ、全日本では200超えています。SPでの転倒がなければあるいは、なんて。

いえ、3位の上薗恋奈ちゃんが200点越したかも、なんていうのは、たら、れば、でしかないです。それでも昨年のWCでしたら7位と8位の間です。

そして2連覇となった1位の島田麻央ちゃんは2位と3位の間(4Tq以外のジャンプミスのなかった昨年は224.54で2位相当です。SPで3Aをとぶという冒険をしなくても、コレオがはいれば1位のスコアがでたでしょう)。2位のシン・ジアも2位と3位の間。シン・ジアも去年同様に2位ですが、昨年の201.90から大きく点を伸ばしました。

ロシア女子には、15歳最強説があったじゃないですか。昔から、ロシアのみならず、女子は成長するにつれて回転があやしくなるパターンが多いです。そして成績を落とす。だからジュニア勢が強いのは当たり前といえば当たり前なのです。それにくわえて、北京以来、シニア女子が低調というのもありますねえ... 

前置きが長くなりました。上位3位だけ感想を書いてみます。

1位 島田麻央  218.36

SP 2位 72.60 (40.73 31.87)

 

 


2A、3F!3T、3Lz

このケイトリン・ウィーバー振り付けのSP、衣装がかわいいし、振り付けも音楽もきらいじゃないのだけど、何度見ても、苦手なんだろう、という感想を抱いてしまいます。

一音目から不思議な情感の波があるのだけど、それが十分にだしきれていないような気がします。悪くはないですけど、満足もできないというか。ボーカルがはいってからはだいぶん曲と動きが一致してくるでしょうか。いや、コンボのところで歌がはいるのが個人的にはちょっと落ち着かないかしら。それにしてもFのエッジ、よくみましたね。スローにしてやっと!になったわけがわかったしまつでした(^_^;)着地がそれほどスムーズに流れなかったから、その減点はあるかな、とは思いましたが。LSPでは落ち着いて曲にのれていたように思います。出のところが音にもうちょっとあえば言うことないのでは。手をあげた3Lzはよかったですよね。FSSpはきっちりこなしました。ステップシーケンスは...うううん、アクセントのとりかたに工夫した振りで、悪くはないできでしたが、曲のエネルギー値につりあってないような...興奮のるつぼに誘おうとしているような曲ですからねえ。逆に最後のCCoSpはよかったです。特に最後のアップライトフォワードはすばらしい速度で、ここで曲のエネルギーとつりあったものがみられたように思いました。たぶん、曲のもつ熱さをだしきれているかどうかという問題なのじゃないかしら。十分に合格点には達しているはず。だけど、さらに盛り上がることができるエネルギーをもつプログラムなのじゃないかなあ。振り付けのもつポテンシャルの8割程度の表現にとどまってしまったような。


FS 1位 145.76 (82.16 63.60)

 

 


3A 4T 3Lz3T   3F2ASEQ 3S3T2T  3Lo  3Lz
 

SPにくらべて曲調も振り付けもしっくりくるローリー・ニコル振り付けのFSです。SPの曲調が冒険なのに対してオーソドックスな雰囲気につくってあります。

この曲は、以前、真央ちゃん、カロリーナ・コストナー、ロシェットという豪華メンバーで共演したことがある曲です。

 

 



この時の振り付けもローリー・ニコルでした。非常に美しい心のやすらぐプロ。3人3様のすべりっぷりをみるだけでも幸せじゃないですか。現地で見た人はもううらやましいとしかいいようがありません。それにしても、ローリー、この数年は昔使った曲を掘り起こして別のスケーターに振り付ける事例が多いのかしら???

とはいえ、コンセプトは明らかにちがいます。滑り巧者の美しい滑りがなんといっても吸盤の魅力です。真央ちゃんとカロリーナだけでもすごいじゃないですか。それに女子に珍しくカナダの滑りをきっちりやるロシェットがはいるっていったい、というメンバーです。ジャンプもしますけど、この3人の滑りが奏でるハーモニーがなんといっても魅力です。

対して、麻央ちゃんバージョンでは、競技プロとしてつくってありますから、ジャンプ、スピンなどの技がメインになるでしょう。なにげにすべるだけでいろいろな物思いをいだかせることをジュニアの選手に求めるのはまちがいというものですし。

冒頭の3Aこそ、着氷がうまくいかず、一回転してしまいましたが、空中での回転は足りているようにみえますし、なにより、転倒しなかったのは大きかったですね。GOEが-1.14ですんでいます。4Tはうまくいかないだろうと思ってたので、成功させたときには正直、びっくりしました。なんとまあ。

FCCoSpは軸がきちんととりきれなかったというか、軸足がかなり移動してしまい、速度も遅かったでしょうか。あとのスピン(CCoS、LSp)はとてもよかったです。最初のがうまくいかなくてよけいきをくばったのかもしれませんけど。女子は男子にくらべてスピンのうまい子が多くて、上位でいーっとなって見ることはあまりないのですが、麻央ちゃんのスピンはまれにレベルを落とすことがあっても、安定していて楽しめるものですね。とくにアップライトフォワードは待ってました、というノリでみてしまいます。ジャンプは冒頭の3Aが問題だっただけで、あとはきっちりとんでいました。連覇は納得でしかないできでした。シニアにあがるまであと2回JWCにでるのでしたっけ?いっそのこと

課題があるとしたらコレオでしょうか。悪くないけど、もう一段の説得力を持たせられたらなあ...とはいっても、こんなこというのも、旧バージョンの滑りに幸せしかかんじなかったからであって、比べる対象が悪すぎるだけでしょう。


2位 シン・ジア

SP 1位 73.48 (41.31 32.17)

 


3F3T, 2A 3Lz

美しい衣装、美しい曲と振り付け。でもなにより、本人こそが、なんてたおやかで魅力的なことか。ジュニアならではの優美さともいえるし、いや、20歳をすぎてもおそらくこの清潔感とたおやかさは保つのでしょう。さらに優美になる可能性は高いかしら。テッドさんがLovelyといってますが、そのとおりですね。スタイルがしっかりあります。3F3Tはまずまずかしら。高さもそこそこある一方、コンパクトにすばやく回転した乱れのないものです。2Aもとても安定しています。でも一番いいのは3Lzかな。変に力がはいらず、するっととんでしまう。本人はジャンプが長所といってますが、スピン、ステップのどれをとっても穴がなく、曲の雰囲気を伝えるものになってます。私が好きなのはジャンプの合間にするするっと片足でのびていくとこ。さりげにSKが高い。ぶっとばしているようには見えないのだけど。SKのみならず、CO、PRもSP,FSともに女子で一番高いのも納得してしまいます。




FS 2位 138.95 (73.93 65.02)

 

 

2A 3Lo 3S 3F2T2LKo  3Lz3T  3F2ASEQ  3Lz

最初に左手を差し伸べるところから見入ってしまいます。空気を力で押さないんですよね。空気ととけこみながら手足がのびていくというか。SP、FSともにデイビッド・ウィルソンの振り付けですが、デイビッドの美意識にいちいちあうにちがいない、というやわらかい優しい動き。腕でのリズムのとりかたがちょっと面白いです。腕の使い方の基本はバレエの理屈と同じなのだけど、そこにバレエの基礎通りでない動きがはいります。モダンというほどのとがったところもなくて印象はあくまで優しいのだけど。足もちょっとひねった動きしてるのですが、実にさりげにやってしまい、この氷の上でこそだせるなめらかさ、スムーズさの印象のほうがはるかに強い。いいわあ。飛ぶ前に若干、構えるというか、ジャンプ前の動きがまだまだ改善の余地があるようには思えますが、特に大きな問題点ではありますまい。おしかったのは最後のスピン。レベル4に達するには、最初のシットフォワードの回転数が足らないでしょう。あとはよく立て直してエンディングとしたでしょうか。


3位 上薗恋奈

SP 8位 61.96(34.56 28.40)

 

 


2A、3F3T(F) 3Lz

雰囲気のある選手です。でてくるだけで、何をみせてくれるのか期待してしまう。これってすごい強みです。2Aはきれいに決めて、幸先よいスタートに見えました。3Fはきめて、3Tをつけたあとが転倒になって...ここで大きなハンデをおってしまいました。3Lzはきれいにきめたのでほんとうにコンボがもったいなかったです。しかし、なんでしょうね。この雰囲気は。特に何をしているってことはないのに見てしまいます。感受性が強いということかもしれません。コーチは樋口美穂子先生で、振り付けも担当しています。その美穂子先生いわく、「人間的にすごく素直で努力家、それが演技にも出ている感じがします。総合的にすべてを持っていると思います」 ふうむ...いずれにせよ、楽しみな選手がでてきたのかもしれない、と思ってみています。そういえば、美穂子先生の教え子の一人が昌磨君で、彼も独特の雰囲気の持ち主です。

FS 3位 132.74 (71.73 61.01)

 

 


3Lz3T  3Lo  3F2T 3S 3Lz  3F  2A2A2T

 

うううむ、FSでもやっぱり雰囲気満載にリンクにでてるようにみえます。そして、期待にたがわない演技をしてくれました。美穂子先生の振りって、独特の雰囲気があるってこともあるのかなあ。よく知っている生徒につけるせいで、その選手のもつポテンシャルを引き出せるのかもしれません。うん、まじめに練習しているんでしょうねえ。ミスはでることはあっても、がたがたと崩れそうな気はSPでもしませんでしたが、FSではさらに集中したのか、ノーミスで滑りきりました。技術的にも特にきびしいところはないような。山田/樋口組というとFがつくものとじろじろみてしまうルッツもあるときからエッジエラーが気にならなくなる率が高くなりましたが、彼女も大丈夫にみえます。コレオかなり面白くないですか?特に、ジャンプしてすくめるみたいな腕使いするところ、好きだあ。滑りがよくなったらPRも絶対に跳ね上がるタイプです。ぜひ、丁寧に滑りの基礎を積み重ねて、個性豊かで表現力に満ちた選手になってください。期待したいです。その前に体型変化の荒波にのまれませんように。数年後、回転に苦労するかもしれないという気がしないでもないです。