(1)の続きです。やたらと時間があいてしまいましたが、よかったら読んでくださるとうれしいです。
2位が274.59で駿君、3位が272.95でジュンファンという結果となりました。
SP 2 Shun SATO JPN 99.20 (57.45 41.75)
4T+3T, 4Lz, 3A
FS 3 Shun SATO JPN 22 175.39 91.94 83.45
4Lz, 3A1Eu3S, 4T(堪)2T, 4T(堪), 3A, 3Lo(SO), 3Lz2T
今年、PCSがめざましくのびました。上の演技で、CO 8.36,PR 8.25、SK8.39です。一年前の4CCではCO 8.00、PR 7.82、SK 8.29。いずれも伸びています。もともと、スケーティングはまじめにやってたんでしょう。8点台にのっていました。
COものびてます。ただし、COって要素が3つにしぼられてから?と思うことも多い要素です。もともと、空間をいかにうまく利用しているかが問われたところです。今も、空間の利用(ようするに、氷面を十分につかっていて、高さや斜めの方向などの意識もあるかどうか)というもともとのCOの要素に、前はTRにふくまれていた繋ぎの要素がくわわっていると考えるのがよさそう。これも前から悪くなかったとはいえ、やはり上向き。
だけどなんといってもPRです。7点台から8点台と大きな変化があります。そう、魅せる、という要素がくわわってきたかな。ジュニアのころは、とにかくジャンプを決める気満々で、みてるほうもジャンプがきまればよし、と思っていました。それに対して、シニアになってから表現の工夫をしようとしていたのはわかりました。が、これまで特にこう、というまで至らなかったのじゃないでしょうか。少なくとも、じっと見たくなる要素は私にはありませんでした。
が、今シーズン、よくないですか。SPは安定してました。ジャンプはもちろん、スピンでも、ステップシーケンスでも大きなミスはありませんでした。SPはきっちり要素をこなすことが大切な種目ですが、このSPではそれをやってのけて、PBをだしました。あと一歩で100点超えしたのですが、それは来シーズンの楽しみにすることにしたいです。
FSはGPSのときから書いているように、お気に入りプロです。四季を使ったスケーターは何人かぱっとうかびます。アイスダンスのウソワ/ズーリンのもの。1992年ですからなんて昔(笑) もちろんランビエール。 当時は衣装が衝撃すぎてまともに評価してなかったのですけど(笑)、今見れば、ジャンプはやや難はあるとはいえ、当時もうまいなあとおもってたステップ、スピンはあらためてみてもうまい。あと昌磨君。 この3つの印象がかなり強いのでシーズン前に駿君が四季をつかうときいたとき、印象にのこるプロになるのだろうか?などと考えてしまったのですが、よけいな心配でした。
GPSのときから完成度はともかくとして、プロじたいはかなり気に入ってました。
今シーズンの躍進は、ジャンプ以外の要素にかなり気をくばれるようになったことです。まず滑りがよくなったかな。音楽と振り付けからイメージをしっかりもって演じることができているように思います。ジュニアのころからなんとなくあかぬけないところがあるような気がしていたのですが、今季は繊細さをかんじているのはなぜなのかとじーっと考えながらみています。
なんといっても、滑りがよくなったこと。一伸びがおおきくなってきているはず。カメラだとわかりにくいのですが、氷の使い方というか、カバー面積も広くなってるのじゃないかしら。これはどう考えてもシゼロン効果です。
基礎をしっかりやることを教えられて、自分でも手応えをかんじた、というコメントをしていましたが、自分をふくめた動画をみてるだけの観客にもわかるレベルです。この伸びはたいしたものです。しかも、シーズン当初より伸びているような気がします。おそらく教えられたことは本人の言葉通り、基礎の基礎で、これまでいわれてもできてなかったもの、それほど意識しなかったものも含まれるのじゃないかなあ。シゼロンがいなくても、自分で認識をして気をくばれるようになって、練習をつみかさねることができた、ということじゃないかと。
足元が安定したから、今度は音楽表現にもむかうことができたのじゃないでしょうか。
SPとFSでは明らかにちがった曲表現になってます。
フィギュアでは踊りが大切だとはやくからわかっていて、子供のときからバレエをやっていたことが今シーズンの曲表現の基礎になっているのかもしれません。
過去の演技ではそのプラス要素があまりみえないような気がしていたのです。だけど今シーズンの演技で腕は少なくとも不満を感じるところはありません。しっかり音楽表現になっていませんか。そして妙な力がはいらないようになってきてるようにみえます。
余裕ができてきて、曲をきいて、振り付けのときに注意をうけた上で、自分で膨らませたイメージが目に見える形でだせるようになってきた、ということでしょう。
それも、なんともいえない繊細さをともなっているのが駿君の特徴に思えます。
そう、繊細。こんな言葉、昨年まではでなかったのですが、たぶん、これが駿君の演技の個性を表すキーワードになるのじゃないかなあ。
個人的には、駿君の演技の味わいは、インタビューの言葉や様子と妙に一致するものがあるんですが、みなさまはどうですか?
今シーズンはこの四大陸が最後でしょうか。ぜひ、来シーズンもシゼロンの振り付けをすべってほしいです。持ち越しでももちろんかまいません。いずれにせよ、今シーズン以上のものをみせてくれるにちがいありません。
正直、卍の3人のなかでは一番のりおくれてると思っていました。ケガもあったのはたしかですが、演技全体で評価を確立している鍵山君、ものすごい熱気をもたらしてくれる佳生君とくらべて、駿君はジャンプ構成は難しいのをとれるけど、内容的にはどうかなあ、と思い続けていました。
だけど今シーズンでだいぶん2人に近づいてきたのじゃないかと。コメントで書いていただいたのですが、現時点でのミラノ/コルティナ2016オリンピックの有力候補は昌磨君、卍の3人組でしょう。今シーズンは駿君はその4人の中では一番下の成績です。でも、来シーズンは追い抜くぐらいの勢いをみせてくれるかもしれないなあ、なんて考えると思わず口元がゆるんでしまいます。そうなればますます楽しみがふえるではありませんか。
ジュンファンはとりあえずisu動画をはっておきます。VPNがないとみることでできないものです。
VPNなしのものにさしかえますので、少々おまちください。
SP 3 Junhwan CHA KOR 95.30 (51.57 43.73)
4S 3Lz 3Lo 3A
2 Junhwan CHA KOR 177.65 (91.77 85.88)
4S, 4T(SO), 3Lz!3Lo(堪), 3Lz(!step), 3A2A, 3A, 3F1Eu3S
やっと、やっとジュンファンらしい演技を見ることができました。昨年のWCで銀メダルという成績がでました。底力を考えると当然といえるかも。
178とシングルスケーターとしては大柄なほうです。やはり大柄な選手が多いロシア男子がジュニアではよくても、シニアで苦労してることを考えると、大柄な選手がジャンプで苦労するのは想像がつくことです。それでもねばってきた、と考えるのがいいのでしょう。
クリケットとの契約は昨年終了し、現在、コーチはHyun Jung Chiになっているのが、今シーズンの不調の原因ではないのか、などと勘ぐっているのですが、どうなのでしょう。兵役の関係だとか、大学が厳しいため、いう記事を読んだことがありますが、どうなんでしょうか。いずれにせよ、このコーチ変更が今年の成績にも響いているのか?という疑いはもってます。
シングルはジャンプをきめられないとどうしようもないところあります。ジュンファンのジャンプ事情を整理すると、
4回転は4Sはシングルジャンプもコンボもとべます。とはいえ、シングルのほうが確立が高いのはたしか。2度試合でトライした4Fはいずれも回転不足判定がついてます。4Tはシングルはともかくコンボがつけられません。つまり、SPで4Sを確実にきめるならシングルという選択肢になり、コンボは4回転をとぶことができません。セカンドに3Loをつけられるとはいえ、3Lz3Loという3回転をSPのコンボにもってきているのはそのためです。
4回転以上にジュンファンでひやひやするのは3Aなんですよね...なんだかこわそうにとんでいるようにみえてしかたない。
アクセルは得意な選手と苦手な選手にはっきりと分かれるジャンプです。WCやらオリンピックチャンピオンですらいますよ。ライサチェック、パトリック・チャンやネイサン・チェン。いわゆるスキッドタイプのあまりよろしくない3Aをとんでました。
3Aが苦手な選手はスキッドタイプ(氷の上で下回った上で跳ぶタイプ)で跳ぶことが多いです。女子の3Aはこれです。ついでにいうと4Tもですが。でも女子3Aはまだいいです。みんなそうですから。
男子はそうであってはなりますまい。羽生君のように、スキッドをいれずに跳ぶ選手がいるんですから。ついでにいうと、昔からまともな3Aをとぶ選手は存在していました。3Aをとぶのがまれだったころ、ミスター3Aとよばれたオーサーはすばらしい3Aとんでました。
佐野さんが昔、ライサチェックの3Aと羽生君の3Aとくらべて解説をしていました。残念ながら動画がみつけられないのですが、スローにもしてあってとてもわかりやすかったです。
つまり、少なくとも男子では、スキッドタイプとそうでない正統な3Aが同じ基準で許されるべきではありますまい。3Aとして認定してもいいかもしれないけど、スキッドタイプで、跳ぶ前になにもいれられないネイサンの3AにGOEをつけるなどもってのほかとずっとおもってました。スキッドタイプならGOEは0か1にするという規定をいれたらどうかしら。そして、入りの工夫がないジャンプにGOE5は決してありえない、という規定もちゃんと明記してほしいです。他の要素がどんなによくても4どまりにすべきじゃないかしら。そうでもしないと、ジャンプ評価はまともになりますまい。それができないのなら、AI判定にしたらいいんです。少なくとも公平になるはず。
話はとんでしまいましたが、ジュンファンの3Aはなんだかみていてこわいです。まず表情がちがいません?とはいえ、スキッドタイプをゆるさないクリケの飛び方しているからであって、スキッドタイプにするなら、楽々跳ぶのじゃないかなあ。だって、シングルのみならず、3連でもとぶんですから。そして成功率はかなり高いです。
ということは、ジュンファンの場合、得点をのばすには、4T3Tあたりを安定してとべるようにするか、せめて4Tの確率をのばすことが大切になるのかなあ。うううむ。
ともあれ、やっとやっと、ジュンファンのスケーティングが楽しめる演技をみることができたのはうれしいことです。FSでは順位はともかく、ジャンプの着地にミスが続いたおかげでSKが伸びなかったのがなんとも哀しい(/_;) ステップシーケンス、コレオともによかったと思うんですけど... とくに、SPのSKに8.00をつけたジャッジっていったいなにをみてるんだ、と怒りをつのらせています。駿君に8.50つけているのに、ですよ。駿君はよくなったとはいえ、ジュンファンとくらべると明らかに力差があります。幸い、日本のジャッジではありませんでした。日本人なら自国びいきがすぎると批判されかねないところです。鍵山君とくらべても個人的にはジュンファンのスケーティングのほうがずっと好きなので、この点差には顔をしかめてはいますが、これは好みの問題もあるのかもしれない、と自分にいいきかせているところです。
まだ本調子にはほど遠いとは思いますけどね。WCで去年なみの演技をみることができたらいいのですけれど。
追伸
SP後のインタビュー
Junhwan Cha 차준환 🇰🇷 - 95.30 - is back! 🔥 The 2022 #4ContsFigure champion showed a clean SP to “Maquerade Waltz” 💪🏻:
— Golden Skate (@goldenskate) February 1, 2024
“I tried my very best and I think I did well today. My first priority was to heal from my injuries so I didn’t have much time to work on my programs.
I kept… pic.twitter.com/DkQgNTNQUp
英語のインタビューがありました。やはりケガをしていたんですね。最優先事項がケガから回復することで、プログラムに取り組む時間がなかったといっています。韓国選手権のあと、SPに四回転を日本いれようとトレーニングをつんできたが、トレーニングにもう少し時間が必要と判断した。FSでは4Tを跳ぶつもりだが、明日の練習の後、最終決定する予定。
なるほど。今シーズンの不調の原因はやはりケガでしたか。