GPSではよくなくても、全日本ですごくよい選手っています。今年は百音ちゃんがまさにそうでした。

GPSで今季はあきらめたほうがいいのか、なんて思っていたのが、全日本で一気に四大陸とWCへの期待にかわっています。

GPSから振り返ってみましょうか。今季、GPSにはスケアメとフランス大会に参加してそれぞれ6位と9位。スケアメのほうは動画つきでご覧下さい。

SP 64.24 (33.60 30.64)

 

 



曲;黒い瞳    振り付け:ミーシャ・ジー
3Fq+3T  2A    FCSp3    3Lz<    CCoSp4    StSq4    LSp4    

これだけハイテンポの曲ははじめてです。さすがエンタテイナーのミーシャで、すべりこなせれば華やかになりそうな仕上がりになっていました。特に素早く動く必要のあるステップシーケンスでもテンポはきっちりとってますし、ジャンプをのぞくとまずまずか、というところ。A real joy to watch!(見て本当に楽しい演技でした!)という解説の言葉は 気になったのがジャンプ。2Aをのぞいて回転があやしいかも、と思っていたら、果たして、速報時点ではグリーンランプだったジャンプにqと回転不足がつきました。

FS 6位 113.55 (55.84 59.71 -2.00)
曲:海の上のピアニスト  振付:鈴木明子

 

 



3F+3Tq 2A 3S<<F CCoSp4 3Lo 3F+2T+2Lo 3Lz<F 9 FCCoSp2V 3Lz!<+2A+SEQ StSq4 LSp4

振り付けは去年、おととしのSPに引き続き鈴木明子ちゃんです。明子ちゃんが百音ちゃんに選ぶ曲って、いかにも、ってかんじがします。演技そのものはジャンプがホントに苦しかった、というところでしょう。

でもまだGPSデビュー一戦目だから、次までに調整してくれたらいいなと思ってました。

ところが、2戦目がさらによくなかったです...9位と順位をおとしました。なにより内容がよくありませんでした。フランス大会は数字だけ。

SP
9位 56.59 (28.14 29.45 -1.00)
2Aは跳べましたが、3F< コンボは3Tがつけられず、3Lz+2T。明らかにスケアメよりも悪い状態。それにしてもこの

FS 
10位 108.17 (52.21 55.96)
3F+3T< 2A< 3 3S<< 3Lo< 3F+2T+2Lo< 3F+2T+2Lo< 3Lz<+2A<+SEQ 3Lzq 
ジャンプがまともにとべてないです。運動誘発性喘息が悪化していて、体調が悪かった、というのが主要原因だったようですが、そのときは理由がわかりませんでした。故障ではなさそうでしたからね。体型変化があるような気がしないでもない、ジャンプが回りきれないのはそのせいか!?と憶測してひやひやしていました。今シーズンは回転不足判定がきびしくて、女子はほぼ全員、少なくともQはとられているとはいえ、昨シーズンとくらべて、ジャンプがあまりに不調です。それにひきずられるように、CCoSpとStSqでレベルをとりこぼしてレベル3.

今年の百音ちゃんは期待しないほうがいいかも、と思ってしまったGPS2戦でした。ところがうれしい驚きが全日本で待ってました。

女子SPプロトコル

SP 3位 68.02 (37.28 30.74)

 

 



3F3T, 2A, 3Lz

この大会の放送を通じて、いえ、GPSを通じて、荒川さん解説のいいジャンプ、というコメントはまったくあてになりません。一番いい例がFSの山下真瑚ちゃん。大きないいジャンプとほめた冒頭3つのジャンプで回転不足、!、後半のジャンプが3Lz<+3T<となったことでジャンプの多くにマイナスがつき、順位をSP2位からFS12位に落としています。解説だけきいてたら、この順位になる理由がわかりません。

だけど、男女通じて、回転不足は評価に大きな影響をおよぼします。転倒があったら、明らかに減点でわかりやすいです。一方、回転不足はボディブローのようにじわじわきいてきます。全日本のみならず、今シーズンは国際試合もかなり厳しくとっています。一見パーフェクト、でも評価は下、ということになれば、この回転不足が影響している可能性が高いです。今はジャンプ偏重の時代ですから。さすがにノーカンになってしまうとスピンは大きな影響をおよぼしますし、レベル落とした場合も、接戦であれば問題になってきます。だけど、4回転とか、女子でもコンボとかでジャンプをとりこぼしたほうが影響は大きいです。スピンでマイナスはあまりなくても、ジャンプでマイナスはよくある話です。また、ステップシーケンスは、転倒とか大きなミスでもなければ、ミスがあってもたいして差がでない、というのは男子FSでもみたとおりです。

このように、結果に大きな影響をおよぼす回転不足判定を演技中でできるだけみわけたいじゃないですか。Jsportsで岡崎真さんあたりが解説だと、ばんばん指摘してくれるので歓迎してしまいます。一方、地上波、特に女子解説はほんとあてにならなくって。速報値が解説席からは確認できないのかしら。

あてになるのは速報値(黄色になっていたら一見とんでいても、マイナスがつく可能性がある)、そして自分の目です。生放送ではセーフだと思ってもqやら<がついていたら、もう一回みなおしておいて、回転不足をみきわめる感覚を養うしかありますまい。傾向がわかっている選手なら割合楽です。百音ちゃんの場合だと、まずコンボ(2本目のほうが回転が不安なことが多いですが、1本目につく場合もあるから注意)、そして3Fですね。2Aはまず安心してみてよい。これはエッジエラーでも同じことです。

で、スケアメのジャンプを念頭に冒頭のジャンプをみてみました。1本目がちょっとあやしいような気がするけど、これなら、たぶん、大丈夫。速報値は黄色から緑になったり黄色になったり。<ならはやくから黄色で固定になるはず。qかどうかで迷っているのでしょう。ジャッジの目が自分と同じ判定をくだしてくれますよう。(結果、qはなしでした)

2A。迫力があるわけではありませんが、降りたときにながれ、ポーズもきれいですから、まずまずの点がつくはず。2ぐらいかなあ。(結果は2が7人、1が2人)

3Lzの前、テンポがかわったときから手拍子がはじまりました。例年のことながら、全日本のお客さんはノリがいいです。3Lzは解説の言葉通り、いいジャンプでしょう。回転不足はありますまい。速報も緑。エッジも大丈夫。

ステップシーケンスはレベル判定は厳しくとられませいたね。レベル2です。これも解説きいてたら誤解するよね。速いテンポで一見あってみえたけど、エッジの切り替えが明確でないということでしょう。うううん、厳しい。とりこぼしはあったけど、楽しめるものではあったと思います。GPSより華やかになっていました。手拍子効果もあるかもしれませんが、要所要所で一瞬締めるところがありますよね?そこが前よりも明快で、観客をのせる要素になってくるのじゃないかと。四大陸ではさらに華やかに、そしてレベルをしっかりとってくれることを期待します。

百音ちゃんのスピンは楽しみにしています。身体の使い方、というかポジショニングがきれいです。特にレイバック。島田麻央ちゃんとならんでよいレイバックだったかと。今回、スピンでレベルのとりこぼしはありません。

しかし、この変わり様はなに?と思ったら、インタビューに回答がありました。

次のインタビューで、GPSが終わるまで体調不良におそわれていて、運動誘発性喘息だということがわかって治療開始後、楽になったということ。

 

 



なるほど。では、FSも期待していいのかな、いや、用心しておいたほうがいいかも、なにせジャンプが多いから、と、思っているうちにFSに。

女子FSプロトコル


FS2位
141.25 (74.50 66.75)

 

 



3F3T, 2A, 3S, CCoSp4, 3Lo,ChSq1, 3F2T2Lo(q ), 3Lz(q)2A,  FCCoSp4 3Lz(!) StSq4

柔らかい美しい曲です。冒頭の3F3T。SPが認定されたのですからこれも大丈夫のはず。2Aは問題なし。3Sも緑のランプがついてます。GPSではそろえられなかったジャンプです。ここで第一難関をこえたことになります。

CCoSp バラエティはもちろん、回転数も全く問題ないです。ポジショニングもきれいです。

明子ちゃんが「肩が上がってしまうクセ」を指摘したそうです。そういわれて、みてみると、たしかに両肩ともあがりぎみになっているときの演技はミスも多い。「美しい曲にも合わないし、苦しく見えてしまうので、深い呼吸をして、ちょっと脱力感を見せるというか、そういう美しさを意識している」とインタビューでのべていますが、3Loの前の滑りはそれを実行していたのじゃないかしら。

【全日本フィギュア】18歳・千葉百音が初の2位 鈴木明子氏から指摘された〝クセ〟克服 

呼吸ってほんと、大事というのは日々実感してます。レベルは非常に低いとはいえ、それなりに踊れた、と思うときは呼吸ができているとき。逆にポーズをキープするときに四苦八苦したりするともう呼吸が浅くなってます。それでますます苦しくなってくる。

いえいえ、しゃべるなど日常生活でもそう。最近、自分の話の録音を聞くことが多いのですが、ぞっとしますよ。それでもまだまともにしゃべっているときはちゃんと呼吸しているのが録音きいていてもわかり、あせったり舌がまわらなくなってくると呼吸があさくなってます。

意識的にゆったり呼吸して、自分をあやつることができるようになりたいと思っているところなので、百音ちゃんのコメントは身に染みました。

このFSでも全体的に気をつけていたはずです。やわらかな優しい曲にゆったりした滑りはとても魅力的。

3S,3Lo。どちらもきれいです。

腕も力が入らず、柔らかく動いています。身体の側面から外れていらない動きをしていないのもご注目。腕や指先に問題がある場合は、力がはいっている、いらない動きをしている、肘に問題があるなどなどですが、こういった要素は見られません。

コレオ。柔らかい身体をいかしたスパイラルの美しいこと。規定から消えてしまい、スパイラルは必須ではなくなってしまいました。でも、スパイラルは女子の花といっていいはず。Y字スパイラルからこともなげにケリガン(フリーレッグの膝近辺をつかむものです)に変化します。どちらもとても美しい。いったん解除して一回転してからクロスグラブ(フリーレッグと反対側の手でフリーレッグを掴むスパイラル)。ほんとすてきです。膝をついての回転。このあと、ちょっとこぐところがありますね。もったいない。そこがなければ、GOE4か5をだしてほしいところ。

3F2T2Lo 最後がちょっと怪しいと思ったら、qつきましたね。3Lz2Aのジャンプシーケンス。エッジは問題なさそう。回転も大丈夫そうにみえ、緑のランプがついてましたが、黄色になったところで顔をしかめました。結局3Lzにq判定。そうか、足らないのですか。

FCCoSp フライングではいって、キャメルのスピードはどうだろうとは思いましたが、回転は問題なさげでした。あとのポジションは美しかったです。

最後のジャンプ。3LZ。かまえたところはアウトエッジでしたが、離氷の時点でエッジがたってしまいました。!となってます。とはいえ全部そろえました。

ステップシーケンス。SPよりもエッジが明確でした。

最後のレイバック。レベルはこぼしましたが、非常に美しかったです。ポジションが一つみとめられなかったのでしょう。二つ目のポジションでの回転がややたらないととられたのじゃないかと。検討ちがいならごめんなさい、ですが。だけど後は回転数もはやく、とても美しいスピンでした。

参考記録ではありますが、四大陸で記録したPB137.70をぬきました。とてもいい演技だったかと。しかもまだまだ伸びしろがあります。取りこぼしのところをなくせば145ぐらいはいくのでは。

その取りこぼしをなくしても、坂本さんには届かないのですよね...スパイラルの規定復活したとしたら差が縮まっていくでしょうけど。スピンは百音ちゃんのほうが明らかに点が上だけど、案外差がついていないかなあ。

一番物をいっているのがPCSです。スピードを重視するなら坂本さんのSKに点がつくのはわかりますし、COも高いでしょうね。ただしPRは、SPはともかく、坂本さんのFSは個人的には?がつく点です。衣装はともかくとして、演技はミステリアスかなあ。単純素朴にみえるのは気のせい?昨年ほどではないですが、あいかわらず力押しでせまってこられるようにみえるのですけどね。複雑味とかかけひきとかの要素はかんじない。これ、駆け引きを楽しんで相手を意のままに操ろうとしている女性を描いているのじゃないの?ダイナミックかもしれないけど、曲調とらえてるといわれると、ううううん... この手の演目はルナとかカミラ・ワリエワとかもやってます。彼女たちははるかに複雑で色気のある存在感を氷上にふりまいていますけど。カミラはやはりミステリアスな女性を演じているSPで9.75をとってます。坂本さんが0,04しかちがわないとはとうてい思えません。ルナは点台しかとってません。ジャンプミスのせいだというのなら、2つのスピンに問題あっても評価が高くていいわけですか?ゆえに自分には9.71って暴挙に思えます。男子全員とくらべても高いなんてありえません。ここがジャッジと自分の大いなる意見の差です。今季の坂本さんなら、PRはSPよりFSのほうが低くあるべきじゃないかしら。SPはつけたいのなら9点台でもいいだろうけどFSにその価値はないというのが自分の見解です。具体的にはルナよりも低い点か、ジャンプミスできめるなら少し高い程度。8点台後半の価値があるんだろうか、と常におもってしまいます。

男子は鍵山君(昌磨君も、かもしれません)、女子は坂本さんに妙にもちあげた点数がついているような気がしてならない全日本です。

となると、百音ちゃんが坂本さんを抜こうとすれば、3Aをいれるのが一番近道、ということになる。


百音ちゃんも坂本さんも3Aをいれるのを視野にいれているはずです。百音ちゃんが木下にうつった大きな目的は3Aでしょうから。坂本さんは2Aを冒頭にいれてますでしょ?これは3Aを視野にいれているせいじゃないかと。

だけどどうなんでしょう...二人とも成功するのかなあ...百音ちゃんはGPSで散々苦労したように、回転がやや苦しくなりがちです。本人がやる気なら、ノウハウのある木下で練習できるという優位な点はありますが、回りきれるかどうかは疑問に感じます。もちろん、こんな疑い、くつがえしてくれて、ばかなこといってたなと笑う日がくるとうれしいです。

坂本さんについていうと、2020年に3A、4Tを挑戦していたような記憶があります。だけど、以下をみると4Tの記録しかありませんから気のせいですか?.

https://skatingscores.com/jpn/women/kaori_sakamoto/

そのころより回転が苦しいようにみえるのです。根拠は3Loです。前は坂本さんの3Loは好きでしたが、今は回転不足を疑うことが多くて。身体がごつくなりだしたのがそのころです。それにともなって3Loの回転が?と思うことがふえてきて。今では好きなジャンプではありません。というか、3回転はqがつきそうなものありますよね?

そして坂本さんが一番いいジャンプは紛れもなく2A。これは5でもまったく疑問をかんじません。その一番いいジャンプをすてて、成功がおぼつかない3Aをいれるなんてことありえますかね。少なくともSPはやめたほうが得策なのは明らかです。FSなら考えられないことはないです。が、3回転の回転をみるかぎり、成功するよう可能性があるかなあ???。4Tは2020年4大陸で<<がついてます。さらにきびしいはず。

それに今、挑戦する必要などあるのでしょうか。3Aや4回転に挑戦=(安定するまで)首位を誰かに譲るということです。

ロシア女子と紀平ちゃんが万全の状態で帰ってくるなら、坂本さんは挑戦してくるかもしれません。技術点で明らかに劣りますから。技術点で劣ってくれば、PCSも下がってくるのじゃないかと予想をしています。

もちろん、他に3Aあるいは4回転を安定してとんでくる選手がでてくる可能性もあります。今のところ一番近いのは島田麻央ちゃんですが、彼女はシニアにまだまだあがれません。ついで吉田陽菜ちゃんでしょうか。ただ陽菜ちゃんはムラが大きくありますし、3Aも安定していません。

百音ちゃんが3Aをいれる日がくるのか?それは今後の観察材料にしておいて、4CC、WCでは今回のとりこぼしをきっちりまとめてくれたらいいなと思ってます。4CCでは昨年につぐ表彰台だけでなく、金、銀をねらってほしいものです。WC一位は難しいと思ってますが、表彰台の可能性は大いにあるのじゃないかと。

百音ちゃんの記事を書かないのかとのリクエストをいただいたので書いてみました。