全米の結果、世界選手権と四大陸の男子代表は次のように決まりました。

Worlds
Ilia Malinin
Jason Brown
Andrew Torgashev*
 
Alt 1 - Camden Pulkinen
Alt 2 - Maxim Naumov
Al 3 -  Jimmy Ma
 
4CCs
Maxim Naumov
Jimmy Ma
Liam Kapeikis

Alt 1 - Tomoki Hiwatashi
Alt 2 - Yaroslav Paniot
Alt 3 -  Samuel Mindra

今回はWC代表の3人をとりあげてみます。

SPプロトコル 
FSプロトコル 


総合1位 イリア・マリニン

SP 1    110.36    (63.73    46.63)

 

 

4Lz+3T、4T  3A


曲表現やる気満々にみえましたね。それで効果がでたかどうかはまた別の話かな。4Lz+3Tは例によってきわめてコンパクトな空中でまるであぶなげなく、4Tもきれいにとびました。スピンは姿勢とかは問題ないけどやや遅いかなあ。でもそれはCCSpだけの問題で、FSSp、CCoSpはよかったですね。3Aもきれいにとびました。ジャンプはすべてスムーズでいいものだったでしょうか。一方、これだけ上半身しっかりつかって曲表現やろうとしているのがいかにもわかるのだけど、効果はそれほどあがってないような気がするのはなぜだろうとじーっとみてたんですが、スケーティングかなあ...PCSはオール9点台にしたかったのだろうという点数でてますけど、SKは8点台なんですね。そう、まだジュニアのすべり、といっていいんじゃないかな。


FS 2 177.38    (95.23    84.15 -    2.00)

 

 

4Aq 4F 4Lz 4S CCSp4 StSq3 2Lz 2T+1T 3Lz+3A+3T+SEQ FSSp4 ChSq1 CCoSp4

正直いいますね。なにせ、ジュニアですばらしかったロシア男子が成長して大きくごつくなり、シニアデビューあたりから苦労しているのをあまりにもたくさんみてきました。マリニンはまだ、ごつい、といえるような成長ではありませんが、それでもだいぶん大きくなってきましたよね?あのジャンプはすばらしくコンパクトに身体をまとめあげることができるからこそのものです。大きくなってきたら、身体をまとめるのがむずかしくなるだろうという予想をしています。

GPSもその気配があるように思えたので、どうだろうとみたSPは非常によく、曲表現もこのまま努力すればきっとのびてくるんだろう、と思えるものでした。だから自分の勘違いだったかな、と思っていましたら...FSでもろに懸念通りのものをみてしまったような気がします。4Aはもともと、氷を180°以上下回ることでやっているいわばずるのジャンプです。たとえ着地したって本来であれば、q扱いして、GOEはマイナスにすべきだと個人的には考えています。だって、通常速度でも180°以上まわっているのがはっきりとみえますもん。90°ぐらいならまだいいでしょうけど。素人にみえて、ジャッジには見えないなんていわせません。今日のは下回りを小さくしようとしてたのか?という気がしないでもないけど...4F 4Lz、4Sはあぶなげがなかったので4Aだけの現象か?と思という気がしないでもなかったけど、4Sは若干低いのか?という気がしないでもありませんでした。CCspはレベルはとりましたが、速度はどうかな。ステップシーケンスはすべってなかったですね。このあたりはもうばてていたのじゃないかと。4Lzがうかびあがれず2Lzになり、さらにはコンボが2T1Tとなりました。冒頭で転倒したせいか、体力的に非常にきびしいものでした。そんな中、3Lz+3A+3T+SEQをきめたのはすごかったですね。このジャンプ問題は、今回のFSだけの現象なのか、今後もきびしい状況は続くのか。

総合2位  ジェイソン・ブラウン

SP 2     100.25    (50.41    49.84)    

 

 

 3F, 3A, 3Lz3T

マリニンの直後でした。あのなあ、という点数がプロトコルについてます。いや、マリニンがCO、PRで9点台というなら当然ジェイソンは9点台になるのはもうすべりだしでわかる。さらにはSKのレベルのちがいもすぐわかりますよね。でもそれにしてもジャッジ9人中COは6人、PRは7人が10点満点っていうのはなんだか笑ってしまいました。さすが全米...でもそれだけの価値はあったでしょうか。ジャンプはまったく無理をしなかったというところですが、きれいにとびましたし、いかにもジェイソンらしいオフバランスや次々といとも感嘆にくりひろげられる技の数々。スピンの姿勢もステップシーケンスなどなどでの音の表現の美しいこと。濃密でやわらかく繊細な演技を堪能させてもらえました。この微妙なニュアンスの表現はクリケにいってから磨きをかけたものです。ほんと、非常に美しかった。トレイシーがにこにこしてお出迎えしていました。競技にかえってきてくれてありがとう。


FS 3 177.06    (84.60    93.46    -1.00)

 

 

3A+2T     3A 3Lo FCCoSp4  3Lz+3T 3F+1Eu+3S CCoSp4 StSq4 2A ChSq1 3Fq(転倒) CCSp1

JSportsでみていたら、アナウンサーの赤平さんがジェイソンの演技の直前に「楽しみましょう」というコメント。ほんと、そうですよね!SPはなんとか曲表現してくれても、FSになるとジャンプ大会になる選手って多いじゃないですか。でも、ジェイソンの場合はまったく逆の現象がおこります。FSでもジャンプだけになるどころかSP以上に曲表現にお楽しみがまってます。たとえば、アメリカ女子の十八番といえるスパイラルですが、今、一番好きなスパイラルはジェイソンかもしれないなあ、なんて思うことがしばしば。だってあのポジショニングと楽々とすべる様子ときたら。美そのものです。あとね、いかにもクリケの選手に共通する動きがくわわりましたよね。ジェイソンらしい一流ショーをそのまま氷上にもってきたような動きはもちろん、さりげないところのニュアンスがもうなんとも。たとえばちょっとバックするところとかです。いかにも集団スケート練習でやってそうな動きです。足元からちょっとした小宇宙が描かれますでしょ。それから勘違いかもしれないけど、ここまでたっぷりしたイナバウアーは前にあったかなあ?3Fの転倒という惜しい要素はありましたが、それでも圧巻のみごたえある演技でした。これが少なくともあと一回、WCでみられるんです。なんて幸せ。



総合3位 アンドルー・トルガシェフ 

SP 5 78.78 (41.17 38.61 -1.00)

 

 

4T< F,     3A 3F+3T

今回、大番狂わせを演じた選手です。第1グループに登場しました。このグループは、JSportsでもいってたのですが、通常は上位を狙うスケーターというより、全米出場が目標というレベルの選手が通常くるのです。去年は怪我で欠場でしたので、このグループにくるのもむべならん、というところはありましたけが、あらま、というよさでした。そりゃ冒頭は転倒しました。ふむきりが?というもので、空中も斜めでしたから、ランディングでどうこうできるというものではありません。だけど、3Aはまるであぶなげがなく、スピンも少なくともゆるせるもの、3F+3Tもなかなか。緊張の中、丁寧にすべってるのがみるからにわかりました。ステップシーケンスはツイズルでよろけたりとかしていましたのでそうとう緊張していたのでしょう。


FS 1 177.78    (94.69    83.09)

 

 

4T 3A 3Lz 3Lo CCSp4 StSq3 3Lz+1Eu+3S 3F+3T 3F+2A+SEQ FSSp4 ChSq1 CCoSp3

びっくりしました。最終グループに残るのはともかく、FS首位ですよ。4回転は1本だけですし、ステップシーケンスやスピンのレベルのとりこぼしもあるのですが、転倒による大きな減点がないのがいかに大事なのか、ということの証明のような演技でした。で、曲表現がところどころおもしろいんです。その気たっぷりというのもいいのかもしれないけど、とにかくできることをていねいにやろうという意識がFSでもあったことが大きかったのじゃないでしょうか。FSSpのあとのコレオなんて、感情を爆発させたかのようなエネルギーをかんじました。PBです。会心のできでしょう。昨年怪我をしたこと、GPSなど国際試合に派遣されていないことがあって、ミニマムもってないです。JGPSではなかなかの成績をのこしていたのですが、JWCでは8位止まり、シニアデビューしてからは大きな国際大会にはでていないはずです。WCまでに国際試合は何試合かのこっていますので、無事にミニマムをとってWCに出場してほしいものです。