おそくなりましたが、前にテレビ放送をみて感想をかいたときに、さんざんカメラでぶつぶついったせいか、コメント欄で3人の方から、日テレが公式動画としてyoutubeにノーカット、ノーナレーション版をアップしてくれたと教えていただきました。ありがとうございました。

この動画からは、テレビ版でいらいらさせられた演技中断、ワイプ、ナレーション(スピンがはじまったとたんにレベル4なんていうのっていったいなにごとでしょう)がすべてないだけでなく、後半の3:10からはカメラスイッチングなく、全身を堪能できるといううれしい動画までつけてくれています。そう、角度はどうやってみても限定されてしまうとしても、フィギュアでは全身、とくに足元がうつるのがほんと基本ですよね。日テレの放送がそのままアップされたと思われるFOIではフィギュアファンが望むようにほぼ全身を映す撮影をしていましたので、日テレも担当者(おそらくプロデューサー)によっては当たり前のこととして対応してくれるのです。だけど24時間テレビって毎年思うのですけど、アーティスティックスポーツを放送しているっていう考えはたぶんないんでしょうねえ。せっかくのコンテンツの魅力をひきださないで、せいぜい6割にとどめてゴールデンタイムに流すってもったいなさすぎます。

それでも今年はこのノーカット版をアップしてくれたことでもう文句いいますまい。これを来年もやってくれるなら、放送時間にみて怒るかわりにこういう公式動画をまとうかという気持ちもむくむくわいています(笑)

とにかく幸せな気分で無限ループのように見られる動画です。おそらくもうとっくの昔に楽しまれたと思うのですが、よろしければまたどうぞ。

これまで、北京の演技を見直すことができませんでした。が、北京の不可避のミスからくる恐れを羽生君が克服する演技をしてくれたのですから、思い切ってみてみよう、という気をようやくおこしました。

少し、今回のと比較してみますね。

まず全日本

北京

あらためてみてみると、3つともだいぶんちがいます。

まずはジャンプミスのあるなし、というのはあります。全日本ではコンボがややよくなく、北京は例の4sの問題がありましたし、3Aも完璧とはいえますまい。他の選手だったらGOE 5がつきそうな気もするけど羽生比なら3か4になってしまうといういつものやつです。この傾向は平昌前からはっきりとしていました。ほんとなら、選手間で同じようにあつかうべきで、羽生君が完璧にとんだ3Aは5にするとしても、誰であれ、それより劣るジャンプであればせいぜい3ぐらいにすべきなのです。これが実現するのはもうAIジャッジが出現したときだけなんでしょう。

だけどそれ以外もかなりかわっています。

わかりやすいのは、ステップです。振りがかわってます。全日本だと2:41、北京だと2:42ぐらいにバロネのようなジャンプがあります。24時間だと5:15はぐらいにはいるはずなんですが、脚をあげて、回転するふりになっています。これ、振りを追い損ねたというより、はじめからその振りをねらっていたのだろうか?というふうにみえるのです。どう思われます?もしかしてライトの関係なんだろうかと思わないでもないんです。このロンカプじたいが、これまで以上に限界突破なんじゃないかとおもえるほど、難しいことだらけです。それをショー用ライトでやることじたいが、大きなチャレンジです。そしてジャンプよりステップやつなぎにこそ、影響がでるのじゃないか、と推測したりしています。真相はわかりませんけど。

はじめてみたときに気付かないといけなかったのですが、とくに北京のをみればみるほどこの振付のほとんどはバトルにちがいないと確信してしまいました。特にステップ。バレエのテクニック満載ではありませんか。そしてバレエとスケートの融合がものすごい。シェイ=リーンとのコラボ、ということだったので、シェイ=リーンが振りをかえたところもあるのか?なんて思ってたのですけど、シェイ=リーンの振りでこれほどクラシックバレエのテクニック満載のものをみたおぼえはありません。バトル本人がかなりバレエ踊れますからねえ。クラシックばかりじゃない人ですけど発想の何割かはあっさりとバレエから得ることができるんでしょう。それにスケート技術をうまくのせていく、というのがすごいところだけど。うん、バトル案のまま、シェイ=リーンがストーリーをのせて意味づけしていったにちがいないと、いまさらの確信をいだいたのでした。遅いって。


いかにバレエテクニックが満載かは、コントゥルタンってなに?っていうようなレベルの人間がここで下手な解説するより、バレリーナであるアレッサンドラ・モントルッキオさんの分析を読んでくださるのがいいのじゃないかと。私にわかるのはきわめてエレガントでその理由が、バレエテクニックをうまく氷上で再現しているから、という程度です。バレエは数か月しか習ってないはずなのに...いったいこれって...優れたバレエダンサーを正確に観察して、なおかつ自分の動きにも反映させているっていうことですが...柔軟性が高いスケーターが、スケーティングを介してバレエテクニックをやっているからできることかもしれませんけど、わけがわかりません。


そしてもう一つ気が付いたのは、腕の使い方がちがっていて、受ける感触がちがうことです。いろいろありますけど、出だしの振り返ったところの腕が、全日本や北京よりやや高いのじゃないかしら。全日本、北京では、最初のでだしは、ひそやかで、たゆたうようだと思ってました。この段階では、流れに逆らうというのはあまりかんじられませんでした。一音目で腕を横にはった瞬間は別ですよ。手のひらが上にむいてますでしょ?でもそのあと、頭がさがり、手のひらは下向きになり、力をぬいています。腕に内省的ともとれるし、やや受け身ともとれるし。4Sから強い音がでてきはじめるので、そこからだいぶんかわってくるのですけど。全日本より北京のほうが少し腕の表情は強いですかね。

一方、今回はさらに強い意思を感じます。手のひらの上下は同じですが、ちょっと高めの位置で腕をキープしたのじゃないかと。0:21でアクセントをとるときも、前の二回よりも強くとっているのじゃないかと。この部分のせいか、4Sの前には柔らかく腕をつかっているのですが、前のようなたゆたうという印象はなくて。あ、気合入ってるな、とテレビ見ながら思ったのを覚えてます。

音楽はなくても流しているかのような音はめばっちりの演技に先日おどろいたばかりですが、ならべてみるとやはりすべてのパフォーマンスにちがいがあるなあとあらためて面白く、みたのでした。

試合用のプロとはいえ、これだけ高難度の技を極上の美しさで音楽表現しながらみせてくれるスケーターって見られることってたぶんないでしょう。それだけに欲がまたふくれあがってくるのってなに(笑)

ロンカプをやるときはショー用ライトじゃなくて、試合みたいなライトで演じてくれないかな、なんて思ってしまいました。ライトの影響はあるような気がします。バロネみたいなジャンプが復活してほしい(笑)あれ、すばらしい振りです。なくても至高のステップでしたけど、あればますます、ですので。そして4Loで演じてくれないかなあ。だけどこのとんでもない高難度をずっとみたいっていったい、というかんじです。滑るのはほんとたいへんなはず。ハードルをどんどんあげていって、そしてジャッジがついていけなかった、というのが真相に近いのかなあ。