シングルとペアスケートのレベル/GOE案が5月4日付けででました。
これも、ルールと同様に本決まりでなくて、6月の総会の後に正式になる予定のものです。
画期的になるかもしれない、という文言があります。
数年年前に、あえなくつぶされたプレロをマイナスにしよう、という案が復活しました!
SINGLE & PAIR SKATING Levels of Difficulty and Guidelines for marking Grade of Execution and Program Components, Season 2022/23
のp.11です。
Poor take-off: For example a toe-assisted jump is taken off from the full blade, Toe Loop is executed like a Toe Axel or there is excessive rotation on the ice at the take-off. The reduction in GOE is -1 to -3.
稚拙な踏切:例えばトゥ系ジャンプのフルブレードでの踏みきり、トゥループをトゥアクセルのように実行したり、踏切の時に氷上で過剰に回転した場合。GOEは-1から-3の削減となる。
このプレロ、前から批判の声はあったのですが、はっきりと減点をあたえようという議論がわきあがったのは、2019年ハビが現役最後の試合となった欧州選手権の発言です。まあ、怒りますわね。ハビは回転が足らないとURとられた一方、4LzのコンボをプレロジャンプでとんでたサマリンにGOEつけましたからね。
その年だったかな、羽生君の「氷の上を下回る」というコメントがあったのは。でも、批判をしたというわけでなくて、自分はこれはできない、といっただけでした。
つまり、このプレロっていうのは、それができる特殊な滑り方をしている人のみがやれるのです。簡単にいうと、基本的にはロシア式の滑りをしており、肩からまわす飛び方をしている人たちです。わかりやすいのは、トゥルソワ、シェルバコワ、サマリン、アリエフ。あとロシア式の滑りじゃないですが、昌磨君。とくに4Fです。このあたりです。鍵山君のジャンプもあやしくみえるけど、自分には断言はできないです。
で、これまで、このプレロテについて言及した規定がISUにはなかったのです。一番近かったのが、トゥループに関する記述です。離陸前に半回転まわりやすいジャンプ、という記述が以前、ありました。それは注意すべき、ぐらいの書き方でした。トゥループって、離陸した瞬間にすでに半回転まわってしまうんですよね...助走の回転方向とジャンプの回転方向が同じ、体を回転させながら左足を後ろにもっていってジャンプできるんです。四回転でも圧倒的にトゥループが多いのはそのせいでしょう。とびやすい。プレロが必然的にはいって回転を稼げますので。
そんなわけなので、プレロでぶつぶついいっぱなしのくせに、プレロあっても、4Tならいいや、などと思ってしまいます。180度ぐらいにみえても全然きになりません。カミラ・ワレリアがたぶんこのパターンです。いや、180度もいってないのじゃないかな。トゥルソワみたいに4Tは270度ほどのプレロにみえるのは、どうかと思いますけど。
で、とにかくジャンプに苦労し続けたので、なんとかまわりたいとプレロになったのか?なんて思える昌磨君などはともかくとして、このプレロ、圧倒的にロシアが多いです。
ロシアの飛び方はプレロになりやすいと思われます。肩からまわすからでしょう。シェルバコワの4Lz、4F、トゥルソワのすべての4回転、サマリンの4Lz,4F(4Tも怪しい気がする...)、アリエフの4Lzなどなど。コンドラチュクはよくわからない。4tはまあ、あんなものか、という気がしないでも。同じロシアでもプレロが気にならないのがミーシングループじゃないかと。やはりジャンプコーチとしては最高の人材なのでしょう。その分、助走が長いという傾向はあるとはいえ、ミーシングループはまともにとぶか、失敗するか、なのじゃないかと。リーザがまさにそのパターンじゃないですか。
このプレロを減点にしようという動きは前もあったのです。オランダだったかが案としてあげていました。だけど総会で可決されなかったんですよね...
今回、またこのプレロがGOE減点という案が復活したのは、おそらくロシア勢がいなくなったからでしょう。副会長だったラケルニクあたりが母国のために画策したのだろうか、などとかんぐっています。ホントのところはどうなのかわかりませんけど。
ともあれ、このプレロを減点にする案、実現してほしいものです。
他にも、このCommunication No.2474にかいてあるシングルとペアスケートのレベル/GOE案、ざっとみたところ、PCS案にくらべてhじゃるかにまともなものに思えます。
ちょっと面白い傾向がでてます。
PCSの削減に怒りをおぼえたのですが、GOEは変な削減がないのです。
そりゃ、これまでだってまともにGOEを評価していませんでしたよ。昌磨君のジャンプのどこが「高い」にあたるのか、ネイサンのに「高さ」「幅」の両方がそろっているなんて無茶もいいところです。つまずいて本人が苦笑いしているコレオにGOE4や5とかわけのわからないのもついてましたし。最後の30秒程度しか音楽表現などしていないのになぜINが高い評価なのだとか。ほんと、平昌後はめちゃくちゃでした。4年もかけてオリンピック金メダリストを無理矢理つくったようなものです。
いやいや、いいかげんな採点は平昌後だけのことでもなかったかな。SPの単独ジャンプの前のステップ要件は女子ではまじめにまもられていたのに、4回転をいれる男子ではいれている人もまったくいれずにクロスしかしてない人も同じ評価になってました。要件をかなえてないということで、無効扱いにしてステップをいれない人たちには0点にすべきと思ってましたが。0がいやなら、単独4回転はあきらめて、3回転にすればいいと判断するスケーターもいれば、ステップをいれて4回転をとぶために練習するスケーターもでたでしょうに。
ただですねえ、運用はひどくても、GOEルールそのものは、少なくとも最悪ではなかったですよね。プレロとか、ひどい見落としもありましたけど。
そしてプレロの件をのぞいても、今回のGOE案、レベル案もそれほど変なものでないように思います。
「高さ」と「幅」を一つの項目にまとめたとかマイナーチェンジはしていますが、変な改悪のような気はしないのです。なんとジャンプ前のステップ、ジャンプというエレメントが音がにあっているなどはそのままにしてあります。PCSにあわせるならなくなるでしょ、というところですけど。結局、PCSの件で悪さをしているのがPCS案を作ったグループなのか、という疑いをもってしまいました。
ともあれ、このプレロ案、ぜひ可決されて正式に決まってほしいものです。4回転をとぶために、わざと成長をおくらせたり、栄養失調というか、疲労骨折のリスクが高い選手をだすことをこれまでフィギュアスケートはやってきたようなものです。だけどもしプレロ案が通ったら、少しはいい方向にいくかもしれないなあなんて期待したりしています。
