実はタイトルだけで爆笑したものです。
相貌、というちょっと固い言葉を選ぶのもなんだか町田君らしいし、それに輝きをつけてるところがなんとも。だって意図としては「表現の輝き賞」という名称でもいいじゃないですか。それをあえて顔かたちをまず連想させる「相貌」。とはいえ、この言葉、物事のようす。様相。という意味もあるので、町田君がいおうとしているものを表す言葉でもあります。そういえば草原の輝きというタイトルの映画や歌があったっけ、なんておもってしまったり。
とはいえ、説明きいている言いたいことはすごくわかる賞でありました。うん、笑ってしまった自分が変なのにちがいない。
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「(相貌というと顔形のことを想像する、という言葉に続いて)もちろんそれも重要だし、実際、友の選手は顔の表情も豊かにつくれる選手ですが、それだけじゃなくて体の内面からあふれでるムードであったりオーラも含めての相貌です。このロクサーヌのタンゴに非常にあったものを友野選手はかもしだしていたと思います。プログラムのはじめから終わりまで、終始一部の隙なく、油断することなく、表現者であったその心意気に、私はこの相貌の輝き賞を友野選手に贈りました。すばらしかった。会場も盛り上がりましたよね」
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正直言うと、2019-20プロでお気に入りだったのは極めてユニークな試みをしていたSPのほうで、FSは曲は毎シーズンのようにきくものですし、振付もすごく印象的というのでないように思ってました。
だけど友野君がワンステップあがるためには、こういう曲を使う必要があったのでしょう。あらためてみると、町田君の言葉にすごく納得。
これまでやらなかった要素を最初から最後まで見せた、ということで町田君の琴線にふれたのでしょうねえ。オーラ、うん。わからないでもない。
友野君はすばらしいエンタテイナーで、エキシでは欠かせないといっていい人材じゃないですか?もうちょっとプッシュできれば、バックフリップこそはないけど、日本のバルデみたいな存在になれるにちがいないなんて思ってます。バルデって、入賞とはほど遠いのに、エキシで欠かせない存在でしたよね。今ではアイスショーでしっかり立ち位置を確保しています。エキシの振付もやってました。
浪速のエンタテイナーとよばれるとおり、明るいキャラで、エキシでは犬のおまわりさんとかロボットダンスとかいろいろ実験的というか印象に残るプロをやってくれていました。犬のお回りさんなんてあれよりインパクトがあるプロってなかなかなくないのでは。あれとはれるのは、日本では洸彬君のボレロぐらいかな。海外だともちろんプルのSex Bombがあります。まあ、あれはリーザの2018エキシとならんでお茶の間にこんなの流して子供にみせていいのか、というアダルト系プロ、ミーシン組のエースの証のようなインパクトものですので(爆)健全系なのに一回みたらもう忘れられない、という点で犬のおまわりさんはじつに優秀かと(笑)
この手の評価は日本だけかと思っていたら、海外でも一定の評価があるらしく、アメリカスケ連が選ぶエキシのオンライントーナメントGala Madnessの16名の中にもしっかり選ばれていました。選ばれたのはこちら。
衣装もさることながら、滑りがよくなったなあという印象もちませんか?さらには持ち前のサービス精神満点です。
競技プロにしても、ウエストサイドみたいなダンサブルなプロは好きですねえ。クローマはなにせ、実験要素満載で、しかもいろいろつめつめのきわめてむずかしいもので、動きだけでもよくこなすな、というかんじでした。さらにはジャンプがいかにもとびにくそうでした。2年ぐらいしないと完成しないのか、なんて思ってたら、なんのなんの。四大陸でまとまりました。
全日本であらすじをばらしてくれたせいか、家出少年の葛藤にみえる(笑)でもそういうのをぬきにしても、ただ、このプロは持ち越ししてくれても大歓迎したいです。もっとニュアンスがつけられる、もっと皆が注目して、しぶしぶの点を付け続けたジャッジだって点数ださずにいられない状況になるかもしれません。あれ、すごくむずかしいし、きわめて斬新です。四大陸の張っちゃいます。
四大陸のプロトコルはこちら
http://www.isuresults.com/results/season1920/fc2020/FSKMSINGLES-----------QUAL000100--_JudgesDetailsperSkater.pdf
友野君は7位です。GOEはこんなかんじかな、という点がついてますが、PCSの評価はいったい...こんな点つく演技でしょうか?
友野君が点がのびきらなかった理由に
1. 4回転ジャンプがこの数年不安定
といっても今季は4Sのみならず4Tに挑戦していて構成をあげた、という事情がありました。難しいことに挑戦している中、なかなか成功せず、プロをまとめられないのは当然でした。
2. よくもわるくもスケーティングが軽い
友野君の場合、小柄で細身のせいか、よくも悪くもスケーティングが軽くないですか?エッジとかつかえていても、なんだか上滑りみたいにみえたり、体がぴょこんぴょこんしてみえるというか、上半身を動かすと足下まで浮いてしまうというか。
スケーターはものすごくおおざっぱにわけるなら、地上系と空気の住人系に大別できませんか。もちろんハイブリッド型も多い。典型的なのは前者がパトリック・チャン。昌磨君もこちら。新葉ちゃんもそうでしょう。後者はなんといっても羽生君。ただし後者のタイプはすごく少ないんじゃないかな。ジュニアは空気系が多いですけど、たいがいは体型変化とともにそれが無理になくなってきて、ハイブリッド型になると思うんですけど。滑りは空気系なのにジャンプは空気系になりきれなくて苦戦するというタイプもいますよね。真央ちゃんなんかそう見えたけど。
で、友野君はたぶん、空気系です。でも軽やかに宙を舞うというより、足下が浮いてしまうようなかんじに見えるタイプじゃないかと、2017年に現地でみたときに思ったことがあります。振りつけの影響もあったのかもしれません。高さが定まらないというか、体が必要以上に上下するというか。ただ、本人も意識していたんじゃないでしょうか。徐々にこの癖はおさまってきていましたので。ただし、軽い、という印象は消えませんでした。おそらくスケーティングで7の評価が突き続けた理由の一つはこれじゃないかと。エッジつかおいうとしているのだろうけど、実質使えてないように見えたりすることもありますので。そう考えると、スケートは最上の軽やかさでないかぎりはある程度の重みが必要、と思っているジャッジがSPには低めのPCSを付けるという流れになるのかもしれません。
あと、点数とは直接関係ないかもしれませんが、
3.いつも後半にピークがきて、全日本で成績を残せてない
という損な面があるかと。
友野君といえば補欠でチャンピオンシップに出場して、好成績を残す、という印象ありませんか?典型的なのは2018年のWCでなんと5位でした。全日本で2位になった刑事君が19位でした。なのに全日本4位の友野君が5位でびっくりしたのですが、考えてみれば、底力はあるのでしょう。ジュニアのころから精度の問題はあったとはいえ、3A、4Sととんでましたので。一つのプロを完成させるのに時間がかかるタイプなのかもしれません。補欠ポジションでなくて、代表ポジションを勝ち取れるだけのピークを全日本にもってくることができたら、もしかして北京があるのかも、と思わないでもないです。
2019-20シーズンのFSは2の課題に正面から取り組んだプロじゃないでしょうか。ムーラン・ルージュは毎年のように誰かが使う曲です。スケーター/振付師にひかれるものがあるのでしょう。でも正直言うと私は食傷気味でして、とくにテサモエがオリンピックイヤーに使って、手直しをくわえて、技術的にも表現の上でもすばらしいプロを作ったのをみた後はとくに冷たい反応してしまうのです(^_^;) また、きわめて斬新で胸が躍るプロだったSPとくらべると、ミーシャの振付はなんだかいかにも典型的なムーラン・ルージュを作っていて面白みがないようにみえましたし、、、
だけどジャンプはとびやすかったのか、4T、4Sの二種類の4回転3本に挑戦するというのには適したものでした。
なんといっても友野君にこれまでなかった「重み」の表現をやることができた、という意味で画期的なプロなんでしょう。
全日本ではじめて8点台がついています。SS 8.07 TR 7.93 PE 8.36 CO 8.32 IN 8.36 四大陸も8点台がつきました。SS 8.14,TR 7.96、PE 8.25、CO 8.36、IN 8.39。
冷遇されているPCSがついているように思えていた友野君ですが、めげずにコツコツとりくんだ成果がやっとでてきているということかもしれません。まだ4回転3本には成功していませんけど、礎はつくったというところでしょう。今後の展開が楽しみです。おそらく4Loにも挑戦為てくるでしょうし。その前に4回転3本はいるかどうか、それも全日本でピークをむかえて表彰台にかけあがれるかに注目したいところです。
2019年世界選手権では鍵山君が3位になりましたが、北京の代表争い、これからが本番です。2021年全日本が無事開催されたとして、2013年のソチ代表争いのときと同じくらいの熱戦が繰り広げられるのではないでしょうか。2013、すごかったですよね。羽生君は選ばれるんだろうとは思っていましたが、町田君がすばらしくて。ソチではうまくいきませんでしたが、WCのメダルを予感させるものだったかも。第3の代表の行方はまったくわかりませんでした。結局、高橋大輔君になりましたが、全日本だけみたら小塚君でもよかったわけだし。ラストになった織田君も忘れがたいし。で、その後、羽生君、昌磨君の二強時代になってこの二人でWCやオリンピックでメダルをとる夢のような時代出会った反面、第三の候補者をきめる熱気はソチ争いのときのようにはなりませんでした。
2021にしても、2019日本選手権をみたかぎり、実質、3人目争いのような気もしますが、あっと驚く顔ぶれになるのかもしれません。友野君はおそらくその代表争いの主役の一人になるのではないかと。