小塚君をみなおして、つくづく佐藤先生のところのスケーティングが自分は好きなんだろう、とあらためて自覚したわけです。全日本でも、ジャンプでミスがあっても滑りは好きかも、なんて思ってみると佐藤先生のところだったりします。特徴をいえ、といわれるとこまるのですが。(たぶん重心を低めにして)氷を押すのがうまい、というのが一番いいのでしょうか?佐藤組のイーグルとかのエッジのすごさも氷を押すで、説明できるような。

真央ちゃんが佐藤先生に師事したのも、もともとバンクーバーイヤーにくるってしまったジャンプを修正するのが主目的だったはず。だけどとくにLzのエッジの矯正はむずかしかったようです。公式練習の3Lzのエッジをおいかけた動画をみたことあって、たしかにアウトサイドエッジでとんでいました。矯正にとりくんでいたことはまちがいありません。だけど真性ルッツ、と思った試合は引退をきめた最後の全日本だけでした。ほかはとられないときがあっても、う~ん、というかんじで...また、コーチ変更後にやりはじめた3Aの直線的な助走も、どうも引退の原因となった膝を痛めるもとになったように思います。ジャンプ、という点では大きな成果があがったとはいえないような...

もしアルトゥニアンのところに残っていたら?という仮定はつきません。3Aは絶対にとぶ、という意志のあった人なので、URのおそれはあっても飛び続けたでしょう。でもセカンド3Tあたりを練習していたのじゃないかと。もしそれができてたらセカンド3Loのように回転不足をとられずにすんだような。あそこは極上のジャンプをとぶとは思いませんが、基本的に減点の少ないジャンプで成功率をあげるのは得意かな。

一方、あのスケーティングとスピンは、佐藤先生のところにうつらなかったらきっとなかったのでしょう。もともと魅力的なスケーティング、スピン、スパイラルの持ち主でしたが、佐藤先生のところにうつって2年目以降は絶品ではないでしょうか。真央ちゃんといえばみたいのはスケーティングなどなどで、ジャンプはエッジあやしいなとか、URっぽいなとかいうのが多かったでしょうか。いつもジャンプ前ははらはらしていたのを覚えています。たとえ着氷して、アナウンサーが「降りた~」と絶叫しようが、です。

小塚君のスケーティングも佐藤先生のところの技術の結晶みたいなところありますが、真央ちゃんの滑りのほうがもしかして、より理想的かもしれません。

このSPは3A、3F、3Lo2Loでまとめていますので、ルッツははいっていません。ルッツのエッジではらはらしないのはよかったのかな。3Aもこのときは採点が甘かったのではなく、実際にUR大丈夫だと思います。セカンドは3Loでなく2Loですから、まず心配することもありません。3Fのエッジは絶対大丈夫。かなりのディープエッジでいつもとんでます。回転不足も単独の3Fではつきものではなかったでしょうか。コンボではよくありましたが...

復帰後はあるキャラクターを演じる、という方向性も強めていっていましたが、基本、なりきるというより、自分の中にもともとあるものが音楽に共鳴して魅力をふりまくところがありませんでしたか。真央ちゃんのお母様の言葉で、

「フィギュアスケートは勝った、負けたではないと思うんです。生き様をどう氷の上でみせるか。それがフィギュアではないですか」
https://dot.asahi.com/wa/2014022600034.html?page=1

というのがありました。この言葉を意識していたわけではないでしょうけど、上のサイトでいう

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「浅田真央」以外の何者でもない。芯が強く、可憐で品がある「浅田真央」をみせてくれる

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というのが正しい認識なのかもしれません。芯の強さがタラソワ振り付けの「鐘」やラフマニノフ2番でみせた演技につながったのでしょうし。それは一つのみせかたです。別に誰もが他のキャラクターになりきる必要はない。第一、どうやろうが、何をやろうが、結局、大なり小なりその人がでます。技術、音の取り方もそうですが、だいたい、体重はダイエットでなんとかなるかもしれませんが、顔立ちやら背の高さ/脚の長さやらは基本、かえられますまい。この選手だから、というので演技がみたくなるものですし。もっとも、復帰後の2年間は演じるという要素も加わってはいましたが...

しかし、ショパンこそ、とくにこのノクターン2番こそ真央ちゃんという気がします。

あどけない16歳のときのノクターンと23歳のノクターンはピアニストもちがいます。1回目のときはアシュケナージ(ブーニン説もありましたがこちらが正しいよう)、少しはじけるところがある音源。キラキラ感はこちらかな。2回目はマリア・ジョアン・ピリス。よりやわらかく、甘やかな音。一度目は特にテーマを設けなかった、でも、二度目のノクターンは初恋というテーマだったといいます。少しさざなみはあっても、きっとうまくいったのかな。深い悲しみというものはかんじないので。山とか雪とか言う言葉が真央ちゃんからでていました。ローリーが表現の助けにともちだしたイメージなんでしょう。

ちなみに2007 WCのときのノクターンはこちら。イーグル、スパイラルを駆使してリンクをかけめぐる様子をお楽しみください。


このSP、ソチではまったくうまくいかなくて、この演技、ある意味リベンジではあったのです。そう、これがソチでできていたら、という気がしないでもありません。でも、そうなっていたらあのFSはなかったかもしれないし、きっとこれでいいのでしょう。

ショパンはフィギュアでよく使われる作曲家です。真央ちゃんの前にも荒川さんのトリノのSPは幻想即興曲でしたし、なんといっても羽生君のバラ1あります。それからパトリックの革命などを使ったプロは忘れがたいし、平昌ではノクターン20番対決(メドベと未来ちゃん)はなぜかバイオリンでした。でもあの二人はピアノよりバイオリンが似合う。ツルスカヤがミックスでノクターン15番つかっていましたし。ぱっとでてこないだけで、他もいるはずです。でも、真央ちゃんの後、ノクターン2番が使われているプロの覚えがないです。単なる思い込みかもしれませんが、ほっとしてます。真央ちゃんの演技を思い出してむくれたままみて、おそらく9割以上の確率で演技後に真央ちゃんを鬼リピして、新たにみたものを記憶から消すでしょうから。ピアニストがかわったら、だいぶん違った雰囲気になるんでしょうけど、それでもこの曲と真央ちゃんのスピードがでながらもやわらかさを失わない滑りこそが理想のプログラムの一つになっていますので。これと同じように愛好する演技ってちょっと想像ができないのです。このやり方、この滑りならいいかな、というのがあるかもしれないけど。もしこの曲をつかうプロがあらわれるなら、そういうものであってほしいです。滑りににごりがないのは絶対条件だと思います。

このときの得点、78.86はメドベージェワが2016年に更新するまで、2年半以上、WRでした。

https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201402030001-spnavi
https://victorysportsnews.com/articles/2872/original
に掲載されている真央ちゃんの新ノクターンがらみの記事が好きなので、リンクはっておきます。同じ人がかいているので内容は似ています。